27 / 54
二章
27.疑惑
しおりを挟む
広間のテラスに出ると、ガラス窓から中の様子だけはうかがえる。レオナードはちらちらとこちらを盗み見ていた。その様子にマリアは苦笑する。
「レオナード様こわいわぁ。アレじゃあ皆んな、誤解してしまうわよね?」
「え…?」
「私も誤解していたの。いえ、レオナード様はフローラのことが好きで、フェリシテ様を冷遇しているのかとさえ思っていたの。でも違った…。レオナード様はフェリシテ様のために居心地のよい別邸をつくり、仕事もさせずに遊ばせていたのよ…。怖い顔をしてフェリシテ様を見ているは、フェリシテ様の側に誰かいる時だけ。嫉妬だったのね…」
確かに俺も冷遇されていると思っていたけど、マリアの言う通り違った。あれはレオナードなりの愛情だと今は何となくわかっている。そうだけど…。
「ルネ兄上の話は信じられなかったけど、今のレオナード様の執着を見ると、本当なのかと思ってしまうわ…」
「ルネ兄上の話…?」
「レオナード様が、黒魔術を使い、フェリシテ様を手に入れた。私は見ていないけど、魔法学校の競技大会で優勝確実と言われていた兄のアリエスを殺しかけたそうじゃない。ひょっとして、その時に黒魔術を使ったのかも…。その見返りとして結界のためと偽り、フェリシテ様の魔力を魔物に与えているのではなくて?そのせいで魔物は急増、瘴気も増えて…」
「まさかそんな…!」
「フェリシテ様、レオナード様の部屋に忍び込んだのでしょう?ありましたか?例の、『黒曜石のブローチ』は」
「……あれは一体…」
「あったのですね?レオナード様の部屋に」
あれはレオナードの部屋だったのか。そういえばあの部屋はレオナードの匂いがした。じゃ、あの大切にしまっていた黒いビリビリの布、フェリシテの例のえっちな下着…?あんな所に厳重に隠していたなんて。跡取りのあいつがあんな部屋に住んでたとは思わず、アリエスの荷物置き場かと思ったんだ。アレも俺の黒歴史…すぐに燃やすんだった…!って、あー、今はそれどころじゃない…!
「あれ、呪具ですわ…。黒魔術の。それが、レオナード様の部屋にあったということは…」
「それが本当に呪具かどうかなんて…!」
「ではフェリシテ様、その呪具の黒曜石をよく見てください。きっと、中に魔法陣が」
俺はポケットの中のブローチを取り出した。手のひらにおくと、微かに石の中に星のような印が浮かんでいる。これ、六芒星だ…。
「そう、これです…。そしてその写し…『契約紋』が術者の身体のどこかにあるはずです。思い出してください。レオナード様の、裸体を」
「…そんな…裸なんてそんな…ちょ、ちょっとしか見てないし…」
俺はレオナードの裸を想像したが、何せ一回しか見ていないし、その時は行為に夢中で…。赤くなって答える俺を見て、マリアは目を丸くした後、吹き出した。
「裸をちょっとしか見ていない、なんて!呪術の証拠を隠す目的…?まさか、ヴェルデ国教会の教理を守って裸でしていないとかじゃないわよね?!」
マリアはげらげら笑っている。いや笑い事じゃないんだけど…!
「じゃ、いろんな体位を試して調べてみて♡」
「そ、そんなこと…」
「そんなことじゃないわよ!レオナード様が潔白ならそれでよし。潔白でないならこの大陸の民を救えるわ」
アリアは真剣な顔をして、そして親指を突き出した。どうやら本気のようだ。
最後に、マリアは杖を俺に手渡した。杖だけしかないのか、下着はどこいった…?「だましてごめんね…」
アリアは笑った後、少し真剣な顔をする。
「私ね、あの子達が暮らすこの世界を平和なものにしたいの。このままならこのルーベルを継ぐ事になるでしょうし」
そうだ。子供たちにルーベルを継がせる…。元々、マリアはそれが目的でレオナードに言い寄っていた。今の状況ならレオナードは子をもうけないだろうから、次期公爵はマリアの思惑通りになる。だから瘴気問題を解決して、ルーベルを平和にしようと色々、行動していたんだな?それで行き着いたのが、レオナードの黒魔術疑惑…。
そこまで考えて、俺の胸はドクン、と音を立てた。あ、これって…。
『人に親切にしないとギリ、死んじゃう』やつだ。これって、不味くないか。だってつまり、えっちな体位でレオナードの痣を探さなきゃならないってこと…!
「じゃ、この後どんな体位が一番いいか連絡するわ。ちゃんとどんな体位でみつかったか報告してね?フェリシテ様の下着に付加価値をつけたいの…」
ちょっと待て、付加価値ってなに…?下着に付加価値を付けてどうする気?!
「絶対嫌っ!」
「フェリシテ様に世界の平和がかかってるんだから、しっかり勤め上げなさい!その間に術者に解術する方法も調べておくから!」
――世界平和…。大変なことになって来た。とりあえず、例の下着が入ってる机に結界を張った事…それだけは自分で自分を褒めてあげたい。
「レオナード様こわいわぁ。アレじゃあ皆んな、誤解してしまうわよね?」
「え…?」
「私も誤解していたの。いえ、レオナード様はフローラのことが好きで、フェリシテ様を冷遇しているのかとさえ思っていたの。でも違った…。レオナード様はフェリシテ様のために居心地のよい別邸をつくり、仕事もさせずに遊ばせていたのよ…。怖い顔をしてフェリシテ様を見ているは、フェリシテ様の側に誰かいる時だけ。嫉妬だったのね…」
確かに俺も冷遇されていると思っていたけど、マリアの言う通り違った。あれはレオナードなりの愛情だと今は何となくわかっている。そうだけど…。
「ルネ兄上の話は信じられなかったけど、今のレオナード様の執着を見ると、本当なのかと思ってしまうわ…」
「ルネ兄上の話…?」
「レオナード様が、黒魔術を使い、フェリシテ様を手に入れた。私は見ていないけど、魔法学校の競技大会で優勝確実と言われていた兄のアリエスを殺しかけたそうじゃない。ひょっとして、その時に黒魔術を使ったのかも…。その見返りとして結界のためと偽り、フェリシテ様の魔力を魔物に与えているのではなくて?そのせいで魔物は急増、瘴気も増えて…」
「まさかそんな…!」
「フェリシテ様、レオナード様の部屋に忍び込んだのでしょう?ありましたか?例の、『黒曜石のブローチ』は」
「……あれは一体…」
「あったのですね?レオナード様の部屋に」
あれはレオナードの部屋だったのか。そういえばあの部屋はレオナードの匂いがした。じゃ、あの大切にしまっていた黒いビリビリの布、フェリシテの例のえっちな下着…?あんな所に厳重に隠していたなんて。跡取りのあいつがあんな部屋に住んでたとは思わず、アリエスの荷物置き場かと思ったんだ。アレも俺の黒歴史…すぐに燃やすんだった…!って、あー、今はそれどころじゃない…!
「あれ、呪具ですわ…。黒魔術の。それが、レオナード様の部屋にあったということは…」
「それが本当に呪具かどうかなんて…!」
「ではフェリシテ様、その呪具の黒曜石をよく見てください。きっと、中に魔法陣が」
俺はポケットの中のブローチを取り出した。手のひらにおくと、微かに石の中に星のような印が浮かんでいる。これ、六芒星だ…。
「そう、これです…。そしてその写し…『契約紋』が術者の身体のどこかにあるはずです。思い出してください。レオナード様の、裸体を」
「…そんな…裸なんてそんな…ちょ、ちょっとしか見てないし…」
俺はレオナードの裸を想像したが、何せ一回しか見ていないし、その時は行為に夢中で…。赤くなって答える俺を見て、マリアは目を丸くした後、吹き出した。
「裸をちょっとしか見ていない、なんて!呪術の証拠を隠す目的…?まさか、ヴェルデ国教会の教理を守って裸でしていないとかじゃないわよね?!」
マリアはげらげら笑っている。いや笑い事じゃないんだけど…!
「じゃ、いろんな体位を試して調べてみて♡」
「そ、そんなこと…」
「そんなことじゃないわよ!レオナード様が潔白ならそれでよし。潔白でないならこの大陸の民を救えるわ」
アリアは真剣な顔をして、そして親指を突き出した。どうやら本気のようだ。
最後に、マリアは杖を俺に手渡した。杖だけしかないのか、下着はどこいった…?「だましてごめんね…」
アリアは笑った後、少し真剣な顔をする。
「私ね、あの子達が暮らすこの世界を平和なものにしたいの。このままならこのルーベルを継ぐ事になるでしょうし」
そうだ。子供たちにルーベルを継がせる…。元々、マリアはそれが目的でレオナードに言い寄っていた。今の状況ならレオナードは子をもうけないだろうから、次期公爵はマリアの思惑通りになる。だから瘴気問題を解決して、ルーベルを平和にしようと色々、行動していたんだな?それで行き着いたのが、レオナードの黒魔術疑惑…。
そこまで考えて、俺の胸はドクン、と音を立てた。あ、これって…。
『人に親切にしないとギリ、死んじゃう』やつだ。これって、不味くないか。だってつまり、えっちな体位でレオナードの痣を探さなきゃならないってこと…!
「じゃ、この後どんな体位が一番いいか連絡するわ。ちゃんとどんな体位でみつかったか報告してね?フェリシテ様の下着に付加価値をつけたいの…」
ちょっと待て、付加価値ってなに…?下着に付加価値を付けてどうする気?!
「絶対嫌っ!」
「フェリシテ様に世界の平和がかかってるんだから、しっかり勤め上げなさい!その間に術者に解術する方法も調べておくから!」
――世界平和…。大変なことになって来た。とりあえず、例の下着が入ってる机に結界を張った事…それだけは自分で自分を褒めてあげたい。
142
お気に入りに追加
361
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?
いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、
たまたま付き人と、
「婚約者のことが好きなわけじゃないー
王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」
と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。
私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、
「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」
なんで執着するんてすか??
策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー
基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる