前世を思い出したら愛したはずの旦那様を忘れてしまいました

あさ田ぱん

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二章

27.疑惑

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 広間のテラスに出ると、ガラス窓から中の様子だけはうかがえる。レオナードはちらちらとこちらを盗み見ていた。その様子にマリアは苦笑する。

「レオナード様こわいわぁ。アレじゃあ皆んな、誤解してしまうわよね?」
「え…?」
「私も誤解していたの。いえ、レオナード様はフローラのことが好きで、フェリシテ様を冷遇しているのかとさえ思っていたの。でも違った…。レオナード様はフェリシテ様のために居心地のよい別邸をつくり、仕事もさせずに遊ばせていたのよ…。怖い顔をしてフェリシテ様を見ているは、フェリシテ様の側に誰かいる時だけ。嫉妬だったのね…」
 確かに俺も冷遇されていると思っていたけど、マリアの言う通り違った。あれはレオナードなりの愛情だと今は何となくわかっている。そうだけど…。

「ルネ兄上の話は信じられなかったけど、今のレオナード様の執着を見ると、本当なのかと思ってしまうわ…」
「ルネ兄上の話…?」
「レオナード様が、黒魔術を使い、フェリシテ様を手に入れた。私は見ていないけど、魔法学校の競技大会で優勝確実と言われていた兄のアリエスを殺しかけたそうじゃない。ひょっとして、その時に黒魔術を使ったのかも…。その見返りとして結界のためと偽り、フェリシテ様の魔力を魔物に与えているのではなくて?そのせいで魔物は急増、瘴気も増えて…」
「まさかそんな…!」
「フェリシテ様、レオナード様の部屋に忍び込んだのでしょう?ありましたか?例の、『黒曜石のブローチ』は」
「……あれは一体…」
「あったのですね?レオナード様の部屋に」

 あれはレオナードの部屋だったのか。そういえばあの部屋はレオナードの匂いがした。じゃ、あの大切にしまっていた黒いビリビリの布、フェリシテの例のえっちな下着…?あんな所に厳重に隠していたなんて。跡取りのあいつがあんな部屋に住んでたとは思わず、アリエスの荷物置き場かと思ったんだ。アレも俺の黒歴史…すぐに燃やすんだった…!って、あー、今はそれどころじゃない…!

「あれ、呪具ですわ…。黒魔術の。それが、レオナード様の部屋にあったということは…」
「それが本当に呪具かどうかなんて…!」
「ではフェリシテ様、その呪具の黒曜石をよく見てください。きっと、中に魔法陣が」
 
 俺はポケットの中のブローチを取り出した。手のひらにおくと、微かに石の中に星のような印が浮かんでいる。これ、六芒星ヘキサグラムだ…。

「そう、これです…。そしてその写し…『契約紋』が術者の身体のどこかにあるはずです。思い出してください。レオナード様の、裸体を」
「…そんな…裸なんてそんな…ちょ、ちょっとしか見てないし…」
 俺はレオナードの裸を想像したが、何せ一回しか見ていないし、その時は行為に夢中で…。赤くなって答える俺を見て、マリアは目を丸くした後、吹き出した。

「裸をちょっとしか見ていない、なんて!呪術の証拠を隠す目的…?まさか、ヴェルデ国教会の教理を守って裸でしていないとかじゃないわよね?!」
 マリアはげらげら笑っている。いや笑い事じゃないんだけど…!
「じゃ、いろんな体位を試して調べてみて♡」
「そ、そんなこと…」
「そんなことじゃないわよ!レオナード様が潔白ならそれでよし。潔白でないならこの大陸の民を救えるわ」
 アリアは真剣な顔をして、そして親指を突き出した。どうやら本気のようだ。
 最後に、マリアは杖を俺に手渡した。杖だけしかないのか、下着はどこいった…?「だましてごめんね…」
アリアは笑った後、少し真剣な顔をする。

「私ね、あの子達が暮らすこの世界を平和なものにしたいの。このままならこのルーベルを継ぐ事になるでしょうし」
 そうだ。子供たちにルーベルを継がせる…。元々、マリアはそれが目的でレオナードに言い寄っていた。今の状況ならレオナードは子をもうけないだろうから、次期公爵はマリアの思惑通りになる。だから瘴気問題を解決して、ルーベルを平和にしようと色々、行動していたんだな?それで行き着いたのが、レオナードの黒魔術疑惑…。
 そこまで考えて、俺の胸はドクン、と音を立てた。あ、これって…。

『人に親切にしないとギリ、死んじゃう』やつだ。これって、不味くないか。だってつまり、えっちな体位でレオナードの痣を探さなきゃならないってこと…!

「じゃ、この後どんな体位が一番いいか連絡するわ。ちゃんとどんな体位でみつかったか報告してね?フェリシテ様の下着に付加価値をつけたいの…」
 ちょっと待て、付加価値ってなに…?下着に付加価値を付けてどうする気?!
「絶対嫌っ!」
「フェリシテ様に世界の平和がかかってるんだから、しっかり勤め上げなさい!その間に術者に解術する方法も調べておくから!」

 ――世界平和…。大変なことになって来た。とりあえず、例の下着が入ってる机に結界を張った事…それだけは自分で自分を褒めてあげたい。
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