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香水
香水-3-
しおりを挟む「この香水の効果、言ってなかったな」
「……え……」
「ストレスの緩和、高揚感、前向きになれる、美容にいい」
抱き締めながら指を折っていき、そして、と彼女の耳に口を付けながら囁いた。
「官能的になれる」
「あ」
縛られるような低い声。耳たぶをそのまま噛まれて声が漏れた。
薔薇の香りが鼻に口に粘り着く。剛史の体にも付着していく。まるで二人で薔薇の子房の中に入っているよう。
胡桃は何も分からない。思考の低下が著しい。自分が普段何をしていて、何を考えて、どう行動していたか分からない。唯一理解できるのは、自分を両腕で抱きながらベッドに倒す男の顔が前と変わっていること。
耳から首筋までなぞるように口を付けている。ちょうど香りを付けた場所で、彼の口が止まって声を漏らす。
「胡桃……欲情してるだろ……」
「んっ……ぁ」
口に出さなかった言葉をさらりと言う。
その通りだった。
彼と繋がっている時に感じた欲張りな心。
まだ浅瀬で触れているだけなのに、急激に体が熱くて欲しがっている。心地良い匂いが途端に嫌らしくなる。
たったこれだけで反応してしまうなんて、恥ずかしくて目を瞑る。
「いいよ……もっと……もっと大胆になればいい」
自分に跨ったまま、彼は薄桃色の液体が入った瓶を奪い取って手に持つ。
どうして彼が持つと淫乱に見えてしまうのだろう。ぼうっと目で追う。息はどんどん上がっている。
彼はそのまま胡桃の体全体に香水を霧散させていった。発作的に目を閉じて顔を横にする。
強烈に嗅がされる香りは最早、花に押し潰されてしまいそうだった。
「あぁっ……やっ」
悶える。体が震えて捩れる。熱い。機能しない。熱い。足りない。沸騰している。熱くて堪らない。
こんなに体が燃えているのは生まれて初めてだ。自分は今どうなっているのか分からない。
砂漠で暑さに耐えながら飢えているけれど、何かが足りない。それを与えてくれるのは、目の前の男だけ。
縋るように彼を見た。
不敵な笑みを浮かべて、男は着ていたジャケットを脱いだ。中のシャツのボタンを外している。露わになった首元に自分の香水を吹きかけた。何をしているのだろう。
いや、そんな事よりも満たされたい。
「た……けし……さん……」
「っあ、確かにちょっとくらっとしたな」
「わたし……わたし」
「わかってる」
覆い被さって唇を塞がれた。
これだ。これが欲しかった。甘くて美味しいもの。飢えていた口の中が潤っていく。
舌を出して彼の口腔を舐めようとすると、彼の唇が舌の根元から包み込んだ。息ができなくなりそうで、それでも無我夢中だった。唾液の音が耳に響いて胡桃の顔が火照る。でも、美味しくてまだ味わっていたい。
キスを続けて、本当に息が必要になって仕方なく互いの口を離した。
慌てて呼吸を整える。肩が激しく上下してしまう。
「……はあ、はあ、はあ」
剛史が舌を出して突っ込んでくる。そのまま手が胡桃の膨らんだ胸に辿り着いて荒々しくまさぐる。
溢れ出る快楽に眩暈がした。そのまま二人の足が絡みついて隙間がないように体を密着させた。
まだ少ししか触れていないのに、胡桃はもう昇ってしまいそうだった。どくどくと、垂れる感覚がある。
「やっぱりどろどろしてる」
「ど、どうしよう……わたし」
「っあー俺も無理、なんか余裕ない」
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