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誕生日
誕生日-3-
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誕生日前日はバイトだった。
品だしをしていた時、朋香に声を掛けられる。
「胡桃ちゃん、今日終わった後少しいい?」
「うん。何かあったかな」
何も言わず、にこやかに笑って去って行った彼女に首を傾げた。
変な客に絡まれる事なく、今日もバイトを終える。
今日は夜番だったので閉店まで朋香と一緒にいた。
服を着替えている時に、彼女から終わったら休憩室に来てほしいと言われたので、更衣室から移動する。
片付けも終わったので人はほとんどいなかったが、休憩室は何故か明るかった。
扉を開けた瞬間、甲高い音が鳴った。
クラッカーだと気づくのに数秒かかる。
「一日早いけど、お誕生日おめでとう胡桃ちゃん!」
朋香と尚人の他に、残っていた従業員が笑顔で迎えてくれた。
「わあっ、ありがとうございます」
テーブルの真ん中には、スーパー一押しだったショートケーキのホールが堂々と置かれてあった。
40代の男性店長も普段は眉間に皺を寄せている事が多いのに今日は笑顔だった。自分の娘に年齢が近いとかで胡桃を結構気にかけてくれていた。他にも普段挨拶を交わしているチーフやパートのおばさん達が集まって、主役は真ん中に座るようにと誘導している。
「えっと、あまり時間は取れませんが、今日もお疲れ様でしたを含めて、ケーキをみんなで食べましょうー」
「店長すみません。ケーキまでありがとうございます」
胡桃がぺこりと頭を下げると、店長は首を横に振る。
「これ、買ったの尚人だから」
「え、そうなんですか?」
隣に座ってジュースを飲んでいた尚人に視線を向ける。
彼は頬を赤らめながら頷いた。
「だって、胡桃ちゃん言ってたでしょ。ケーキのラインナップの中でこれが一番美味しそうだって」
確かに新しい誕生日ケーキのカタログを見た時に、王道のショートケーキに目が惹かれて尚人に写真を見せていた気がする。でも三ヶ月以上前の話だ。
覚えてくれていた事に胡桃は感動した。
「ありがとう尚人くん。ずごく、嬉しい」
「喜んでもらえたなら……僕も嬉しいな」
胡桃の向かい側に座っていた朋香はそんな二人を見て、ああもうと声を出す。
「尚人さん、早く渡せばいいのにっ」
「そうよ、ちゃんと渡しなさいよ」とおばさん達にまで急かされている。
またさらに顔を赤くして尚人は胡桃を見た。彼女は良く分からないと首を傾げている。
体をもぞもぞさせて迷っていたが……思い切って彼は下から箱を取り出す。
「胡桃ちゃん、誕生日おめでとう。……これ、良かったらどうぞ」
「えっ」
ピンク色のリボンが結ばれた正方形の箱。
ハードカバーの本が入るほどの大きさで、見ただけでは何が入っているのか分からなかった。
品だしをしていた時、朋香に声を掛けられる。
「胡桃ちゃん、今日終わった後少しいい?」
「うん。何かあったかな」
何も言わず、にこやかに笑って去って行った彼女に首を傾げた。
変な客に絡まれる事なく、今日もバイトを終える。
今日は夜番だったので閉店まで朋香と一緒にいた。
服を着替えている時に、彼女から終わったら休憩室に来てほしいと言われたので、更衣室から移動する。
片付けも終わったので人はほとんどいなかったが、休憩室は何故か明るかった。
扉を開けた瞬間、甲高い音が鳴った。
クラッカーだと気づくのに数秒かかる。
「一日早いけど、お誕生日おめでとう胡桃ちゃん!」
朋香と尚人の他に、残っていた従業員が笑顔で迎えてくれた。
「わあっ、ありがとうございます」
テーブルの真ん中には、スーパー一押しだったショートケーキのホールが堂々と置かれてあった。
40代の男性店長も普段は眉間に皺を寄せている事が多いのに今日は笑顔だった。自分の娘に年齢が近いとかで胡桃を結構気にかけてくれていた。他にも普段挨拶を交わしているチーフやパートのおばさん達が集まって、主役は真ん中に座るようにと誘導している。
「えっと、あまり時間は取れませんが、今日もお疲れ様でしたを含めて、ケーキをみんなで食べましょうー」
「店長すみません。ケーキまでありがとうございます」
胡桃がぺこりと頭を下げると、店長は首を横に振る。
「これ、買ったの尚人だから」
「え、そうなんですか?」
隣に座ってジュースを飲んでいた尚人に視線を向ける。
彼は頬を赤らめながら頷いた。
「だって、胡桃ちゃん言ってたでしょ。ケーキのラインナップの中でこれが一番美味しそうだって」
確かに新しい誕生日ケーキのカタログを見た時に、王道のショートケーキに目が惹かれて尚人に写真を見せていた気がする。でも三ヶ月以上前の話だ。
覚えてくれていた事に胡桃は感動した。
「ありがとう尚人くん。ずごく、嬉しい」
「喜んでもらえたなら……僕も嬉しいな」
胡桃の向かい側に座っていた朋香はそんな二人を見て、ああもうと声を出す。
「尚人さん、早く渡せばいいのにっ」
「そうよ、ちゃんと渡しなさいよ」とおばさん達にまで急かされている。
またさらに顔を赤くして尚人は胡桃を見た。彼女は良く分からないと首を傾げている。
体をもぞもぞさせて迷っていたが……思い切って彼は下から箱を取り出す。
「胡桃ちゃん、誕生日おめでとう。……これ、良かったらどうぞ」
「えっ」
ピンク色のリボンが結ばれた正方形の箱。
ハードカバーの本が入るほどの大きさで、見ただけでは何が入っているのか分からなかった。
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