哀歌-aika-【R-18】

愛欲の果て

愛欲の果て-3-

――どうすればいいの？……大好きなのに、愛しているのに、どうして私じゃ、だめ、なの……？

――ごめんな。お前をずっと困らせて、苦しめて、知らないフリをして。
今、ようやく分かった。
俺は、胡桃が良い。お前じゃないとダメだった。

奥まで進む。自分の液が混ざり合う音がする。吐き気が止まらずに血や汚物が口から滲み出る。体の感覚が分からなくなってくる。他の部位は失われていくのに、下半身だけは快感で覚えていられる。
「はぁ、はぁ……ウッ……」
動かない彼女の代わりに自分が激しく揺れる。力なんてほとんど残っていないのに、上下に揺らした。血を垂らしながら目の前の人形と重なる。

クリスマスに別れを告げられた、最後に欲しいと淫らに愛し合った。彼女が部屋を出て行った瞬間、全てを失った喪失感に苛まれた。仕事に没頭するフリをしてその身はしばらく抜け殻のように過ごしていた。

そして、彼女を見つめる自分を思い出す。
スーパーであの男と話している姿、一人で淋しそうに帰る姿、友達と楽しそうに笑っている姿、遠巻きに眺めているだけで彼女の知らない部分が沢山見られた。
嬉しい以上に、彼女の前に出て、抱き締めたくて、俺のものだと叫びたかった。

――たけしさっ……好き……すきなの……
きて……おねがい……いれて……

何度もそう呼ぶ夢を見た。忘れられなかった。
動物園に行く直前の夢はとてもリアルで、互いの肉体が滅茶苦茶に絡み合っていた。彼女の吐息も聞こえてきたほど、狂っていた。もう自分を止める術はなかった。
起きた後、食事を作っている彼女に何も言わずに家を出た。通い続けた彼女のアパートに行った。あの男と出て行く姿を見た瞬間、連れて行こうと決めた。心が澱んだ漆黒に染まった。

現在に戻ってくる。目を閉じたまま彼女の体が自分と一緒に動いている。
また踊り始める。激しく剛史がリードをする。
「あ、アッ、あ、ああ」
最早、ほとんど呼吸をしていなかった。
擦れる淫らな音が、静寂だった部屋に響く。
自分の血が飛び散って彼女の体に色を染めている。茫然とまた、綺麗だなと思った。
目が虚ろになる。死の瀬戸際と卑猥な快楽がまぜこぜになって、もうどうでも良くなった。

――剛史さん
「ぁッ……ク……ルミ」
――大好きな、貴方。私を愛してくれて、ありがとう
「……っ……」

瞳を閉じたまま、幻聴だろうか彼女の声が聞こえてくる。
そして幻覚か、彼女の口元が笑っているように剛史には見えた。

――来て、剛史さん。一緒に、いこう

「ああ…………アイ……シテル……ヨ」