哀歌-aika-【R-18】

鷹山みわ

文字の大きさ
上 下
21 / 48
重なる

重なる-3-

しおりを挟む
ベッドに寝転んだまま窓から見える海を目で追う。
どこまでも続いていて、境界線が分からない。真っ青な世界。自分の境界線もいつから分からなくなったのだろう。
互いに下半身は何も着けずに足だけを絡ませている。久しぶりに交わったので体がまだ重かった。
静かな時間。決められていない制限のおかげで胡桃の心は穏やかだった。
まだ、こうして彼といられる。このまま……

――果てて死んでしまってもいい

あの夢がちらつく。頭を振って剛史に体を寄せた。
「剛史さん」
「ん?」
「初めて会った時のこと、覚えてる?」
「……もちろん」
顔を彼女に寄せて頬にキスした。
初対面なんて忘れるわけがない。あれで全てが変わったのだから。
「さっきアイスコーヒーを飲もうとしてたの。そしたら貴方にコーヒー飲めなくて笑われた事思い出して……」
「ああ、可愛かったな、あの時のお前」
さらっと言われて顔を隠す。
どうしてそう普通に人を口説くような台詞が出てくるのか。
ふっと笑って、内緒話をするように言葉を紡ぐ。
「胡桃、リンゴジュース頼んでただろ。あの時の俺……発情してた。
ストロー咥えていじらしく飲んでいる姿を見たら、気づいたらってた」
「えっ」
「一目惚れって怖いよな。体が反応して、もう我慢出来なかったんだ」
あの日、御用達のカフェで食事をした帰り、分かれようとした瞬間に一直線に胡桃の唇に向かっていた。
彼女は恐らくファーストキスだったと思う。
何が起こったのか理解できていない彼女をゆっくり抱き寄せた。
――全部教える。だから来て
そう誘われて近くのホテルに駆け込み、舌の愛撫の仕方、そのまま体の重ね方まで細かく伝えて、彼女の初めてを奪う事ができた。剛史は初めてではなかったけど、これまでになかった快楽を知った。こんなに気持ち良かったのは彼女が最初だった。ずっと重ねていたいと思った。
「起きてすぐ、舐めてって言ったよね」
「……ああ、なんか元気だったんだよなあ」
――朝イチだけどして
そう言ってシーツにくるまったまま何度目かのセックスをした。あれで胡桃の殻が破られたと思う。
彼のものが欲しくなった。
剛史から離れられなくなったのだ。

このまま一緒になると二人とも思っていた。
付き合って毎日体を絡め合うだろうと。
でも、世界はそんなに優しくなかった。残酷だった。
どうして彼を連れて行ってしまうのだろうと、胡桃は周りの全てを憎んでいた。顔には決して出さずに。
「海、キレイだね」
「……胡桃、何考えてるの」
「……」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

処理中です...