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重なる
重なる-3-
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ベッドに寝転んだまま窓から見える海を目で追う。
どこまでも続いていて、境界線が分からない。真っ青な世界。自分の境界線もいつから分からなくなったのだろう。
互いに下半身は何も着けずに足だけを絡ませている。久しぶりに交わったので体がまだ重かった。
静かな時間。決められていない制限のおかげで胡桃の心は穏やかだった。
まだ、こうして彼といられる。このまま……
――果てて死んでしまってもいい
あの夢がちらつく。頭を振って剛史に体を寄せた。
「剛史さん」
「ん?」
「初めて会った時のこと、覚えてる?」
「……もちろん」
顔を彼女に寄せて頬にキスした。
初対面なんて忘れるわけがない。あれで全てが変わったのだから。
「さっきアイスコーヒーを飲もうとしてたの。そしたら貴方にコーヒー飲めなくて笑われた事思い出して……」
「ああ、可愛かったな、あの時のお前」
さらっと言われて顔を隠す。
どうしてそう普通に人を口説くような台詞が出てくるのか。
ふっと笑って、内緒話をするように言葉を紡ぐ。
「胡桃、リンゴジュース頼んでただろ。あの時の俺……発情してた。
ストロー咥えていじらしく飲んでいる姿を見たら、気づいたら起ってた」
「えっ」
「一目惚れって怖いよな。体が反応して、もう我慢出来なかったんだ」
あの日、御用達のカフェで食事をした帰り、分かれようとした瞬間に一直線に胡桃の唇に向かっていた。
彼女は恐らくファーストキスだったと思う。
何が起こったのか理解できていない彼女をゆっくり抱き寄せた。
――全部教える。だから来て
そう誘われて近くのホテルに駆け込み、舌の愛撫の仕方、そのまま体の重ね方まで細かく伝えて、彼女の初めてを奪う事ができた。剛史は初めてではなかったけど、これまでになかった快楽を知った。こんなに気持ち良かったのは彼女が最初だった。ずっと重ねていたいと思った。
「起きてすぐ、舐めてって言ったよね」
「……ああ、なんか元気だったんだよなあ」
――朝イチだけどして
そう言ってシーツにくるまったまま何度目かのセックスをした。あれで胡桃の殻が破られたと思う。
彼のものが欲しくなった。
剛史から離れられなくなったのだ。
このまま一緒になると二人とも思っていた。
付き合って毎日体を絡め合うだろうと。
でも、世界はそんなに優しくなかった。残酷だった。
どうして彼を連れて行ってしまうのだろうと、胡桃は周りの全てを憎んでいた。顔には決して出さずに。
「海、キレイだね」
「……胡桃、何考えてるの」
「……」
どこまでも続いていて、境界線が分からない。真っ青な世界。自分の境界線もいつから分からなくなったのだろう。
互いに下半身は何も着けずに足だけを絡ませている。久しぶりに交わったので体がまだ重かった。
静かな時間。決められていない制限のおかげで胡桃の心は穏やかだった。
まだ、こうして彼といられる。このまま……
――果てて死んでしまってもいい
あの夢がちらつく。頭を振って剛史に体を寄せた。
「剛史さん」
「ん?」
「初めて会った時のこと、覚えてる?」
「……もちろん」
顔を彼女に寄せて頬にキスした。
初対面なんて忘れるわけがない。あれで全てが変わったのだから。
「さっきアイスコーヒーを飲もうとしてたの。そしたら貴方にコーヒー飲めなくて笑われた事思い出して……」
「ああ、可愛かったな、あの時のお前」
さらっと言われて顔を隠す。
どうしてそう普通に人を口説くような台詞が出てくるのか。
ふっと笑って、内緒話をするように言葉を紡ぐ。
「胡桃、リンゴジュース頼んでただろ。あの時の俺……発情してた。
ストロー咥えていじらしく飲んでいる姿を見たら、気づいたら起ってた」
「えっ」
「一目惚れって怖いよな。体が反応して、もう我慢出来なかったんだ」
あの日、御用達のカフェで食事をした帰り、分かれようとした瞬間に一直線に胡桃の唇に向かっていた。
彼女は恐らくファーストキスだったと思う。
何が起こったのか理解できていない彼女をゆっくり抱き寄せた。
――全部教える。だから来て
そう誘われて近くのホテルに駆け込み、舌の愛撫の仕方、そのまま体の重ね方まで細かく伝えて、彼女の初めてを奪う事ができた。剛史は初めてではなかったけど、これまでになかった快楽を知った。こんなに気持ち良かったのは彼女が最初だった。ずっと重ねていたいと思った。
「起きてすぐ、舐めてって言ったよね」
「……ああ、なんか元気だったんだよなあ」
――朝イチだけどして
そう言ってシーツにくるまったまま何度目かのセックスをした。あれで胡桃の殻が破られたと思う。
彼のものが欲しくなった。
剛史から離れられなくなったのだ。
このまま一緒になると二人とも思っていた。
付き合って毎日体を絡め合うだろうと。
でも、世界はそんなに優しくなかった。残酷だった。
どうして彼を連れて行ってしまうのだろうと、胡桃は周りの全てを憎んでいた。顔には決して出さずに。
「海、キレイだね」
「……胡桃、何考えてるの」
「……」
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