24 / 45
【第24話:変顔】
しおりを挟む
ん? 今度はいったい誰だ?
そう思い、振り返ったオレの目に飛び込んできたのは、そっくりな見た目の二人の美少女だった。
「パズ! もう逃がさないわよ!!」
そう叫んだのは、ピンクの髪にポニーテール。
透き通るアメジストのような紫の瞳に切れ長の目。
この世界の住人は色んな髪色のものがいるので、ここまではそれほど珍しくない。
だが、その服装が普通では無かった。
その少女が着る七分袖のTシャツの首元からは、キャミソールのようなものが覗き、太ももにスリットの入った白のカーゴパンツに白のショートブーツという、どう考えてもこの世界のファッションじゃない服装をしていた。
そして、もう一人も……。
「ふふふ~♪ もうこの宿の周りには結界張ったから逃げられないよ~?」
背中まで届く青のメッシュが入った金髪に、一人目と同じく透き通るアメジストのような紫の瞳。
こちらは普通の袖の長さのTシャツに、黒のホットパンツと白のスニーカー。
……この世界でスニーカーって……しかも、どの装備からも魔力を感じる。
恐らく、全て何らかの効果がかかった魔法の装備だろう。
「これは間違いないな……」
パズの事を知り、この世界には無いような服装をした双子の女の子。
本来のパズの飼い主で、この世界に一緒に呼ばれたという勇者の双子だ。
転生時に肉体が創りかえられていると聞いていたが、どうやら見た目は変わってないようだな。
「ばば、ばぅぅ?」
いや、パズ……顔を顰めて変顔をつくっても、とっくにバレてると思うぞ……。
「よいしょっと」
とりあえずパズが逃げだしそうなので、脇を抱えて持ち上げて確保しておくか。
「ばぅ!?」
「裏切者じゃねぇ……ちゃんと話さないとダメだろ?」
「ばぅ~……」
パズから二人の話はある程度は聞いていたが、まさかこんなに早く会う事になるとは思わなかった。
オレとパズのやりとりを不思議そうに見ている双子に、とりあえずこれからの事を話さなければいけない。
パズの気持ちとしては、何故かオレと二人でまったりと冒険しながら、この世界を満喫したいようだが、異世界に来たとは言え、元々二人の飼い犬だ。
オレとしても、もうパズと別れる気はないが、二人にはしっかり話をして許しを貰わなければと思っていた。
「えっと? パズの飼い主のミヒメちゃんとヒナミちゃんだよね?」
「え? あ、はい……あれ? どうして美姫のことを?」
「わぁ~イケメンさんだぁ。でも、ほんとだね? どうして桧七美の名前を?」
イケメン? 確かに元の世界の基準で言えば、そこそこイケメンなのかな?
こっちの世界では生きるのに必死で、あまり意識した事はなかったけど……。
それにこの世界だと、ちょっと厳つい彫りの深い男前がモテるようだし、前世の基準でイケメンでも、あんまり意味はないんだよな。
「ははは。イケメンなんて初めて言われたな。一応礼を言っておこうか? でもこっちの世界じゃ、あまり人気の無い顔かもしれないけどな。それで……たぶん込み入った話になると思うんで、ちょっと場所を移して話せないか?」
「こっちの世界って……」
「……ん~、なんか事情ある感じ? ここに泊ってるなら、その部屋に行く?」
「ちょちょ!? へへへへ、部屋って!?」
「だいじょぶだよ~。このイケメンさん、優しそうだし?」
「いやいやいや! そういう人こそ注意をしないといけないんだよ!?」
オレは一言もオレの部屋で話そうなどと誘っていないのだが、きゃっきゃきゃっきゃと盛り上がり始めてしまった……。
「あぁ……ダリアナさん、ちょっと裏庭お借りしても良いですか?」
昨日、この食堂の奥に裏庭があるから、汗とか流したいなら自由に使って良いと言われていた。
今はこの宿に泊まっているのはオレだけだから、話をするのはそこで良いだろう。
「はい。かまいませんよ。ベンチもありますから、自由に使ってください」
「お兄さん、リズが案内するよー!」
「あぁ、悪いな、リズ。助かる」
オレがお願いすると、リズは奥へと歩いていき、
「お姉さんたちもこっちー!」
と言って、とりあえず盛り上がる二人を止めてくれた。
「え? あ、うん。ありがと」
「わぁ♪ 可愛い子♪ ありがとね~」
リズの方がずっと幼いが、しっかりしているな……。
◆
裏庭に出たあと、オレはパズからある程度の事情を聞いた事、パズに助けられたこと、オレが転生者であり、前世ではペジーの飼い主だったことを打ち明けた。
そしてオレの方は……ペジーの最期を教えて貰った。
「そうか。ペジーはそんなに長生きしたんだな。最期を教えてくれてありがとう」
パズは何故かペジーの話をするのを嫌がっていたのだが、そう言う事だったのかと納得する。
そして改めて、ペジーの最期を教えてくれた事に頭を下げてお礼を言った。
「ぐすっ……い、いいわよ。そんな頭を下げなくて……」
「でもね。すっごく穏やかな感じだったよ」
「ばぅぅ……」
前世のオレが命をかけて助けた命が、こうして縁を繋いでくれているのだから、オレもペジーと神様に感謝しないとな。
「なんかしんみりさせてしまったな……とりあえず話を戻そうか」
「そそ、そうね! それで、ユウトは獣使いなんだっけ?」
「あぁ。パズ曰くそうらしい」
「で、パズに命を助けられて、主従契約しちゃったんだよね?」
この二人も異世界に来て寂しいだろうと思うと、中々強くは言えなかったが、それでもしっかり伝えなければ。
「そうだ。これはオレの我儘ではあるが、出来ればパズとはこのまま共に行動したいと思っている」
オレが二人を見つめ、真剣な面持ちでそう伝えると、やはり二人も即答できずに黙り込んでしまった。
「……ユウトの気持ちはわかるけど……」
そして、ミヒメはポツリとそう零すと、そのまま俯いてしまう。
パズとはオレも縁があるとはいえ、オレも無茶なお願いをしている……そう思うとオレもそこから言葉が出ず、口を開いては閉じてを繰り返す。
「ん~……んん~……んんん~……」
「ばぅ?」
オレとミヒメが悩んでいると、ヒナミが突然唸りだし、それにパズがどうしたのかと問いかける。
「じゃぁさ! 私たちもユウトのパーティーに入れば問題解決だね!!」
そして、突然そんな事を言い出したのだった。
……え? 勇者の使命とかは……?
そう思い、振り返ったオレの目に飛び込んできたのは、そっくりな見た目の二人の美少女だった。
「パズ! もう逃がさないわよ!!」
そう叫んだのは、ピンクの髪にポニーテール。
透き通るアメジストのような紫の瞳に切れ長の目。
この世界の住人は色んな髪色のものがいるので、ここまではそれほど珍しくない。
だが、その服装が普通では無かった。
その少女が着る七分袖のTシャツの首元からは、キャミソールのようなものが覗き、太ももにスリットの入った白のカーゴパンツに白のショートブーツという、どう考えてもこの世界のファッションじゃない服装をしていた。
そして、もう一人も……。
「ふふふ~♪ もうこの宿の周りには結界張ったから逃げられないよ~?」
背中まで届く青のメッシュが入った金髪に、一人目と同じく透き通るアメジストのような紫の瞳。
こちらは普通の袖の長さのTシャツに、黒のホットパンツと白のスニーカー。
……この世界でスニーカーって……しかも、どの装備からも魔力を感じる。
恐らく、全て何らかの効果がかかった魔法の装備だろう。
「これは間違いないな……」
パズの事を知り、この世界には無いような服装をした双子の女の子。
本来のパズの飼い主で、この世界に一緒に呼ばれたという勇者の双子だ。
転生時に肉体が創りかえられていると聞いていたが、どうやら見た目は変わってないようだな。
「ばば、ばぅぅ?」
いや、パズ……顔を顰めて変顔をつくっても、とっくにバレてると思うぞ……。
「よいしょっと」
とりあえずパズが逃げだしそうなので、脇を抱えて持ち上げて確保しておくか。
「ばぅ!?」
「裏切者じゃねぇ……ちゃんと話さないとダメだろ?」
「ばぅ~……」
パズから二人の話はある程度は聞いていたが、まさかこんなに早く会う事になるとは思わなかった。
オレとパズのやりとりを不思議そうに見ている双子に、とりあえずこれからの事を話さなければいけない。
パズの気持ちとしては、何故かオレと二人でまったりと冒険しながら、この世界を満喫したいようだが、異世界に来たとは言え、元々二人の飼い犬だ。
オレとしても、もうパズと別れる気はないが、二人にはしっかり話をして許しを貰わなければと思っていた。
「えっと? パズの飼い主のミヒメちゃんとヒナミちゃんだよね?」
「え? あ、はい……あれ? どうして美姫のことを?」
「わぁ~イケメンさんだぁ。でも、ほんとだね? どうして桧七美の名前を?」
イケメン? 確かに元の世界の基準で言えば、そこそこイケメンなのかな?
こっちの世界では生きるのに必死で、あまり意識した事はなかったけど……。
それにこの世界だと、ちょっと厳つい彫りの深い男前がモテるようだし、前世の基準でイケメンでも、あんまり意味はないんだよな。
「ははは。イケメンなんて初めて言われたな。一応礼を言っておこうか? でもこっちの世界じゃ、あまり人気の無い顔かもしれないけどな。それで……たぶん込み入った話になると思うんで、ちょっと場所を移して話せないか?」
「こっちの世界って……」
「……ん~、なんか事情ある感じ? ここに泊ってるなら、その部屋に行く?」
「ちょちょ!? へへへへ、部屋って!?」
「だいじょぶだよ~。このイケメンさん、優しそうだし?」
「いやいやいや! そういう人こそ注意をしないといけないんだよ!?」
オレは一言もオレの部屋で話そうなどと誘っていないのだが、きゃっきゃきゃっきゃと盛り上がり始めてしまった……。
「あぁ……ダリアナさん、ちょっと裏庭お借りしても良いですか?」
昨日、この食堂の奥に裏庭があるから、汗とか流したいなら自由に使って良いと言われていた。
今はこの宿に泊まっているのはオレだけだから、話をするのはそこで良いだろう。
「はい。かまいませんよ。ベンチもありますから、自由に使ってください」
「お兄さん、リズが案内するよー!」
「あぁ、悪いな、リズ。助かる」
オレがお願いすると、リズは奥へと歩いていき、
「お姉さんたちもこっちー!」
と言って、とりあえず盛り上がる二人を止めてくれた。
「え? あ、うん。ありがと」
「わぁ♪ 可愛い子♪ ありがとね~」
リズの方がずっと幼いが、しっかりしているな……。
◆
裏庭に出たあと、オレはパズからある程度の事情を聞いた事、パズに助けられたこと、オレが転生者であり、前世ではペジーの飼い主だったことを打ち明けた。
そしてオレの方は……ペジーの最期を教えて貰った。
「そうか。ペジーはそんなに長生きしたんだな。最期を教えてくれてありがとう」
パズは何故かペジーの話をするのを嫌がっていたのだが、そう言う事だったのかと納得する。
そして改めて、ペジーの最期を教えてくれた事に頭を下げてお礼を言った。
「ぐすっ……い、いいわよ。そんな頭を下げなくて……」
「でもね。すっごく穏やかな感じだったよ」
「ばぅぅ……」
前世のオレが命をかけて助けた命が、こうして縁を繋いでくれているのだから、オレもペジーと神様に感謝しないとな。
「なんかしんみりさせてしまったな……とりあえず話を戻そうか」
「そそ、そうね! それで、ユウトは獣使いなんだっけ?」
「あぁ。パズ曰くそうらしい」
「で、パズに命を助けられて、主従契約しちゃったんだよね?」
この二人も異世界に来て寂しいだろうと思うと、中々強くは言えなかったが、それでもしっかり伝えなければ。
「そうだ。これはオレの我儘ではあるが、出来ればパズとはこのまま共に行動したいと思っている」
オレが二人を見つめ、真剣な面持ちでそう伝えると、やはり二人も即答できずに黙り込んでしまった。
「……ユウトの気持ちはわかるけど……」
そして、ミヒメはポツリとそう零すと、そのまま俯いてしまう。
パズとはオレも縁があるとはいえ、オレも無茶なお願いをしている……そう思うとオレもそこから言葉が出ず、口を開いては閉じてを繰り返す。
「ん~……んん~……んんん~……」
「ばぅ?」
オレとミヒメが悩んでいると、ヒナミが突然唸りだし、それにパズがどうしたのかと問いかける。
「じゃぁさ! 私たちもユウトのパーティーに入れば問題解決だね!!」
そして、突然そんな事を言い出したのだった。
……え? 勇者の使命とかは……?
0
お気に入りに追加
270
あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
聖女を追放した国の物語 ~聖女追放小説の『嫌われ役王子』に転生してしまった。~
猫野 にくきゅう
ファンタジー
国を追放された聖女が、隣国で幸せになる。
――おそらくは、そんな内容の小説に出てくる
『嫌われ役』の王子に、転生してしまったようだ。
俺と俺の暮らすこの国の未来には、
惨めな破滅が待ち構えているだろう。
これは、そんな運命を変えるために、
足掻き続ける俺たちの物語。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる