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【第5話:きらりん】
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オレは一人絶叫ツッコミをしつつ、今まで以上に混乱していた。
「ばぅぅ~」
うるさいなぁ~って言われた気がした。
いや、もうこの回想いいからっ!?
「ど、どうして魔物の言葉がわかるんだ……?」
「ばぅっ!!」
「え? 魔物じゃない?」
「ばぅ~! ばうわう!」
「え? 普通に犬なのか?」
「ばぅ!」
「そうか、犬だったのか……って、そんなわけがあるかっ!?」
ただの犬が高ランクの魔物、しかもネームドの魔物を圧倒できるわけがない!!
それに、こんな念話みたいなことできてたまるか!
そもそも会話が成立できる知能があるのもおかしすぎる!
「ばぅぅ~」
「え? とりあえず契約しろ? 契約ってなんだ?」
その後も、自称ただの犬と不思議な会話を続けた。
◆
要約すると、この犬は、犬は犬でも異世界の犬らしい。
いや、もうね。この時点で話についていけていないのだが、とりあえず最後まで話そう。
まず、この犬の種類は『チワワ』と言い、名は『パズ』と言うらしい。
そしてこの犬は異世界からの勇者召喚に巻き込まれたらしいのだが、どうやらそれは、この世界の神様がわざとそうなるように仕組んだそうだ。
その理由までは知らないそうだが、その神様が異世界からの召喚時に、いろいろと化け物じみた能力を授かけてくれたのだという。
それが、さっきオレに見せた戦闘能力であり、回復魔法であり、氷に特化した魔法なのだそうだ。
あと、こうやって会話できる知能と知恵と念話的な能力も授かったのだとか。
ちなみに神様の名前は聞き忘れたようだ……。
この世界にはたくさんの神様がいるから、そうなるとどの神様かはさっぱりわからない。
「なにかこう、にわかには信じられない話ばかりだが、ここまで突き抜けていると、逆になんかあっさり信じてしまえそうだな」
そんな事を呟いていると、ちいさな犬の魔物あらため、チワワのパズが、オレのズボンの裾をそっと噛んで、ぐいぐいと引っ張ってきた。
「ん? どうしたんだ?」
「ばぅわぅ!」
「え? 止めを刺せって?」
「ばうっ!」
「えぇっ!? まだ、鵺は死んで無かったのか!?」
どうやら致命傷は与えているようだが、氷漬けにしたことで、まだギリギリ生きているようだ。
「あぁ……そういう事か。オレが止めを刺して、身体能力の強化をしろと?」
「ばぅ♪」
本当なら自分の力で強くなりたいし、この森からも脱出したいところだが、今のオレが一人でこの森型ダンジョンから脱出する事は厳しい。
せっかく助けて貰った命だ。
ここは無意味なプライドなど捨てて、ありがたくその好意を受け取る事にしておこう。
しかし、オレはパズに促されるままに氷漬けにされた鵺の前まで歩いてきたものの、どうやって止めをさせば良いかのかと頭を悩ます事になった。
とりあえず腰の剣を引き抜いて斬りかかってみたものの、こんな安い鉄剣では、鵺の頑丈な体にはまともな傷一つつける事が出来なかったのだ。
「な、情けないな……瀕死の魔物の止めすら刺せないのかよ……」
「ばぅ!」
さすがに情けなくなって落ち込んでいると、パズが一声吠えて、これを使えと突然空中に槍を出現させた。
「さっき言ってたマジックバックみたいな能力か。もう、なんでもありだな……」
その槍は、柄だけでなく、穂先に至るまでが黒だった。
まるで呑み込まれそうに感じる、純粋な黒。漆黒。
しかし、その姿を見て、オレは純粋に綺麗だと思った。
無駄を省き、実用性を突き詰めたような様式美とでも言おうか。
オレが手に取ると、僅かに施された紋様が薄っすらと光を放つ。
それを見て、この槍は、人の手に渡って今初めて完成したのだと、そう感じた。
「これは……この槍に、名はあるのか?」
その槍は、どう見ても業物であった。
しかも間違いなく魔法の武器だ。
それならば当然名があるはずだと思い、パズに尋ねた。
「ばぅ? ばぅわぅ!」
「鑑定魔法まで使えるのか……いや、もう驚くのはよそう」
武器の名は知らなかったようだが、鑑定魔法が使えるから、ちょっと待ってと……。
そして、三白眼が一瞬「きらりん♪」と光ったかと思うと、また一声吠えた。
「ばぅ!」
「そうか。名は『カッバヌーイの霊槍』と言うのか」
オレはそう言って漆黒の槍を握り締めると、氷漬けされている鵺に向かって構え、そのまま突き出した。
「すごい……」
ゼノが使っていたミスリルを含んだ剣でも傷一つ与えられなかった硬い体を、呆気なく貫いていた。
「それになんだろう? 槍を使うのは初めてなのに、何だか凄く手に馴染む」
剣を扱う時も、突きは得意だったが、その比ではないぐらい流れるように突きを放つことができた。
その不思議な感覚を疑問に感じていると、今度は突然身体に力が流れ込んでくるような感覚に驚いた。
「これが止めを刺すと得る力って奴か」
冒険者になって約三ヶ月。
魔物を傷つけ、追い込むことは何度もあったが、止めはいつも他の三人が持って行っていたので、オレにとっては初めての感覚だった。
「Bランクのネームドの魔物だから、流れ込んでくる力もきっと凄く強いんだろうな。体中に力が漲るようだ」
「ぶふっぶふっふっ♪」
なんか変な笑い声がすると思ったら、パズが得意げに小さな胸を張って笑っていた。
良く言えば、笑い方がぶさかわいいな……。
「この槍助かった。それにしても、凄い槍だな」
オレはそう言って槍を返そうとしたのだが、パズは首を振り、小さな前足をしっしと振って、貰っておけと言ってきた。
「いや、しかし、こんな凄い槍を受け取るわけには……」
命を助けて貰っただけでも、感謝してもしきれないのに、こんな凄い槍まで貰うわけにはいかない。
そう思って返そうとしたのだが……、
「ばうぅ、ばぅわぅ!」
僕の主人になるのだから、それぐらい貰っておけと言ってきたのだった。
「ばぅぅ~」
うるさいなぁ~って言われた気がした。
いや、もうこの回想いいからっ!?
「ど、どうして魔物の言葉がわかるんだ……?」
「ばぅっ!!」
「え? 魔物じゃない?」
「ばぅ~! ばうわう!」
「え? 普通に犬なのか?」
「ばぅ!」
「そうか、犬だったのか……って、そんなわけがあるかっ!?」
ただの犬が高ランクの魔物、しかもネームドの魔物を圧倒できるわけがない!!
それに、こんな念話みたいなことできてたまるか!
そもそも会話が成立できる知能があるのもおかしすぎる!
「ばぅぅ~」
「え? とりあえず契約しろ? 契約ってなんだ?」
その後も、自称ただの犬と不思議な会話を続けた。
◆
要約すると、この犬は、犬は犬でも異世界の犬らしい。
いや、もうね。この時点で話についていけていないのだが、とりあえず最後まで話そう。
まず、この犬の種類は『チワワ』と言い、名は『パズ』と言うらしい。
そしてこの犬は異世界からの勇者召喚に巻き込まれたらしいのだが、どうやらそれは、この世界の神様がわざとそうなるように仕組んだそうだ。
その理由までは知らないそうだが、その神様が異世界からの召喚時に、いろいろと化け物じみた能力を授かけてくれたのだという。
それが、さっきオレに見せた戦闘能力であり、回復魔法であり、氷に特化した魔法なのだそうだ。
あと、こうやって会話できる知能と知恵と念話的な能力も授かったのだとか。
ちなみに神様の名前は聞き忘れたようだ……。
この世界にはたくさんの神様がいるから、そうなるとどの神様かはさっぱりわからない。
「なにかこう、にわかには信じられない話ばかりだが、ここまで突き抜けていると、逆になんかあっさり信じてしまえそうだな」
そんな事を呟いていると、ちいさな犬の魔物あらため、チワワのパズが、オレのズボンの裾をそっと噛んで、ぐいぐいと引っ張ってきた。
「ん? どうしたんだ?」
「ばぅわぅ!」
「え? 止めを刺せって?」
「ばうっ!」
「えぇっ!? まだ、鵺は死んで無かったのか!?」
どうやら致命傷は与えているようだが、氷漬けにしたことで、まだギリギリ生きているようだ。
「あぁ……そういう事か。オレが止めを刺して、身体能力の強化をしろと?」
「ばぅ♪」
本当なら自分の力で強くなりたいし、この森からも脱出したいところだが、今のオレが一人でこの森型ダンジョンから脱出する事は厳しい。
せっかく助けて貰った命だ。
ここは無意味なプライドなど捨てて、ありがたくその好意を受け取る事にしておこう。
しかし、オレはパズに促されるままに氷漬けにされた鵺の前まで歩いてきたものの、どうやって止めをさせば良いかのかと頭を悩ます事になった。
とりあえず腰の剣を引き抜いて斬りかかってみたものの、こんな安い鉄剣では、鵺の頑丈な体にはまともな傷一つつける事が出来なかったのだ。
「な、情けないな……瀕死の魔物の止めすら刺せないのかよ……」
「ばぅ!」
さすがに情けなくなって落ち込んでいると、パズが一声吠えて、これを使えと突然空中に槍を出現させた。
「さっき言ってたマジックバックみたいな能力か。もう、なんでもありだな……」
その槍は、柄だけでなく、穂先に至るまでが黒だった。
まるで呑み込まれそうに感じる、純粋な黒。漆黒。
しかし、その姿を見て、オレは純粋に綺麗だと思った。
無駄を省き、実用性を突き詰めたような様式美とでも言おうか。
オレが手に取ると、僅かに施された紋様が薄っすらと光を放つ。
それを見て、この槍は、人の手に渡って今初めて完成したのだと、そう感じた。
「これは……この槍に、名はあるのか?」
その槍は、どう見ても業物であった。
しかも間違いなく魔法の武器だ。
それならば当然名があるはずだと思い、パズに尋ねた。
「ばぅ? ばぅわぅ!」
「鑑定魔法まで使えるのか……いや、もう驚くのはよそう」
武器の名は知らなかったようだが、鑑定魔法が使えるから、ちょっと待ってと……。
そして、三白眼が一瞬「きらりん♪」と光ったかと思うと、また一声吠えた。
「ばぅ!」
「そうか。名は『カッバヌーイの霊槍』と言うのか」
オレはそう言って漆黒の槍を握り締めると、氷漬けされている鵺に向かって構え、そのまま突き出した。
「すごい……」
ゼノが使っていたミスリルを含んだ剣でも傷一つ与えられなかった硬い体を、呆気なく貫いていた。
「それになんだろう? 槍を使うのは初めてなのに、何だか凄く手に馴染む」
剣を扱う時も、突きは得意だったが、その比ではないぐらい流れるように突きを放つことができた。
その不思議な感覚を疑問に感じていると、今度は突然身体に力が流れ込んでくるような感覚に驚いた。
「これが止めを刺すと得る力って奴か」
冒険者になって約三ヶ月。
魔物を傷つけ、追い込むことは何度もあったが、止めはいつも他の三人が持って行っていたので、オレにとっては初めての感覚だった。
「Bランクのネームドの魔物だから、流れ込んでくる力もきっと凄く強いんだろうな。体中に力が漲るようだ」
「ぶふっぶふっふっ♪」
なんか変な笑い声がすると思ったら、パズが得意げに小さな胸を張って笑っていた。
良く言えば、笑い方がぶさかわいいな……。
「この槍助かった。それにしても、凄い槍だな」
オレはそう言って槍を返そうとしたのだが、パズは首を振り、小さな前足をしっしと振って、貰っておけと言ってきた。
「いや、しかし、こんな凄い槍を受け取るわけには……」
命を助けて貰っただけでも、感謝してもしきれないのに、こんな凄い槍まで貰うわけにはいかない。
そう思って返そうとしたのだが……、
「ばうぅ、ばぅわぅ!」
僕の主人になるのだから、それぐらい貰っておけと言ってきたのだった。
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