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第一章
第20話 ギルドカード
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つい今しがた、ガンズと激しい戦いを演じてみせたアダマンタイトナイト。
一体だけでも倒せなかったそのアダマンタイトナイトが六体も立ち並ぶ光景に、さすがのガンズも開いた口が塞がらない様子だった。
ちょっとやり過ぎたか?
そう思わないでもないが、今までいろいろ話を聞いたことから予想すると、だいたいレベル30ぐらいまでの者は、この世界にも存在するはずだ。
おそらくガンズもそれぐらいのレベルに達している気がする。
だからユニットを一〇体までなら許容範囲だろう。
いや、数だけなら問題ないはずなんだ……数だけなら……。
「え~……六体ですか……」
キューレは六体でも不満みたいだが、これで妥協してくれ……。
「(キューレ、実力の片鱗がみせられればそれでいいから)」
とキューレに小声で伝えると、「わかりました」と言ってしぶしぶだがやっとその気になってくれた。
愛用の漆黒の槍を取り出し、自然体の構えをとる。
「それじゃぁ、キューレも準備はいいか?」
アダマンタイトナイトにはコマンドとジェスチャーで指示し、既に臨戦態勢をとらせてある。
剣を抜き、大盾を構えて並ぶ姿はなかなか圧巻だ。
今回はアダマンタイトナイトからの攻撃はありにしたが、戦技はさっき同様に禁止のままだ。
本当はアダマンタイトナイトには戦技も含めて全力で戦うように指示したいところだが、それをするとせっかくたったガンズの面目がつぶれかねない。
まぁキューレに六体相手にさせる時点でどうかとは思うが、さっきの戦いでアダマンタイトナイトにまったく本気をださせていなかったとバレるのはさけたい。
「はい。主さま。私はいつでも大丈夫です。なんなら突然襲って貰っても全然平気ですよ?」
う、うん。まだちょっと不満なようだが、もうこのまま開始しよう……。
「準備がいいなら始めるぞ。それでは……戦闘開始だ!!」
その掛け声とともに一陣の風が吹き抜けた。
それは漆黒の風。
これは比喩ではなく、本当にキューレが放つオーラのようなものだ。
キューレがこの漆黒のオーラを纏っていると、攻撃時に闇属性の魔法の追撃効果が発動する。
わずか数秒。
たったそれだけの時間で……。
「なっ!? ば、ばかな……」
ほとんどの者には何が起こったのかわからなかっただろう。
ガンズと他数名の者はなんとか目で追えていたか。
光の粒子となって消えていく六体のアダマンタイトナイトに絶句していた。
うん、キューレ……やりすぎだ……。
◆
今、オレとキューレは冒険者ギルド三階にあるギルド長室にいる。
それはあの後、とんでもない騒ぎになってしまったからだ。
今も一階ではオレやキューレの話で持ちきりらしい。
まぁオレの方のアダマンタイトナイトは、まだギリギリ許容範囲だったんじゃないかと思う。
……まぁ異論は認める。
とにかく、異邦人についてはギルドマスターだけあってガンズがその能力をある程度知っており、最高位の異邦人ならやはり一〇体ほどの魔物を従えていると言っていたので、オレの読みは当たっていたようだ。
あんな強力なリビングアーマーは見たことも聞いたこともないぞと、楽しそうに笑っていたが……。
そ、それよりも問題はキューレだ。
キューレに関しては大半のものが何が起きたのかわからず、最初はいかさまじゃないのかと騒ぎ立てるやつらが大勢でたみたいだ。
だが、ぎりぎりその姿を追えたものたちが何が起こったのかを説明し、それが全員ギルドで一目を置かれている実力者たちだったために、一気に真実味が出てキューレの実力を疑う者はいなくなったそうだ。
あの実力は少なくともAランク以上だと……。
「がははは! まったく! 異邦人ってやつがここまで非常識な存在だとはおもわなかったぞ! しかもその護衛がSランクと言われてもおかしくねぇ実力者ときたんだから、もう笑うしかねぇな!」
なにがそんなに楽しいのか、ガンズはご機嫌に笑っている。
オレはとてもではないが、そんな気分ではないが。
「はぁ……もう少し目立たず普通に冒険者登録できればそれで良かったんだがな……」
いまさらだが、欲を出さずにキューレのランクはゆっくり上げていけば良かった。
そうすればオレだけなら異邦人として普通にCランクからスタート出来たわけだし、何も問題はなかったんだ……。
ほんと、あの時の欲を出した自分を殴りたい。
「嘘つけ! とても目立ちたくない奴がとるような行動じゃなかったぞ!」
「わかっている……ちょっと今反省しているからそれ以上言うな……」
「がははは! レスカは本当に面白れぇな! まぁレスカもBランク、キューレはAランクにしてやったんだ! もっと喜べよ!」
そう……オレはCランクで全然問題なかったんだが、いきなりBランクになってしまった。
あの強化されたアダマンタイトナイトの強さを考えるとAランクにしたかったそうだが、他の異邦人に配慮してBランク止まりにしたそうだ。
それは別にいい。というか、ありがたい。
でもそれならキューレも同じにして欲しかった……。
キューレの方は配慮の必要はないということで、いきなり最高位のAランクになってしまった。
別にオレの方が下のランクなのを嫌がっているのではない。
Aランクは全冒険者ギルドで、その名が発表されるらしいのだ。
実力で言えば、きっとオレもキューレも伝説と化しているSランク相当の強さは持っていると思うのだが、できれば一目置かれる程度が良かったな……。
「……そうだな。活動の範囲をせばめなくて済みそうなので、それについては感謝している」
「おぅ! 感謝しろしろ!」
そんな話をしていると、ギルド長室の扉をノックする音が響いた。
「リナシーか? 入っていいぞ!」
「失礼します。ギルドマスター。カードをお持ちしました」
「おう。そのままレスカとキューレの嬢ちゃんに渡してやってくれ」
その手に持っていたのは、魔法的な効果で薄っすらと輝く金と銀のギルドカード。
銀のものがBランク用のギルドカードでオレのもの。
金のものがAランク用のギルドカードでキューレのものだ。
「こちらです。どうぞお受け取りください」
「急ぎで用意してもらったみたいで悪いな。ありがたく頂いておく。キューレもほら」
キューレは興味がないのか受け取ろうとしないので、オレが代表してキューレの分も受け取り、オレの手から渡してやった。
「主さま、ありがとうございます!」
嬉しそうに喜ぶなら最初から受け取ってくれ。
手間がかかる……。
「レスカさま、キューレさん、あらためておめでとうございます」
少し苦笑しながらリナシーがそう口にした瞬間だった。
「あぁ、ありが……」
ありがとう。そう続けようとしたオレの言葉は止められてしまった。
【おめでとうございます。キャンペーン『異界からの訪問者』のステージが進行しました】
突然オレの耳に届いたシステムアナウンスによって……。
一体だけでも倒せなかったそのアダマンタイトナイトが六体も立ち並ぶ光景に、さすがのガンズも開いた口が塞がらない様子だった。
ちょっとやり過ぎたか?
そう思わないでもないが、今までいろいろ話を聞いたことから予想すると、だいたいレベル30ぐらいまでの者は、この世界にも存在するはずだ。
おそらくガンズもそれぐらいのレベルに達している気がする。
だからユニットを一〇体までなら許容範囲だろう。
いや、数だけなら問題ないはずなんだ……数だけなら……。
「え~……六体ですか……」
キューレは六体でも不満みたいだが、これで妥協してくれ……。
「(キューレ、実力の片鱗がみせられればそれでいいから)」
とキューレに小声で伝えると、「わかりました」と言ってしぶしぶだがやっとその気になってくれた。
愛用の漆黒の槍を取り出し、自然体の構えをとる。
「それじゃぁ、キューレも準備はいいか?」
アダマンタイトナイトにはコマンドとジェスチャーで指示し、既に臨戦態勢をとらせてある。
剣を抜き、大盾を構えて並ぶ姿はなかなか圧巻だ。
今回はアダマンタイトナイトからの攻撃はありにしたが、戦技はさっき同様に禁止のままだ。
本当はアダマンタイトナイトには戦技も含めて全力で戦うように指示したいところだが、それをするとせっかくたったガンズの面目がつぶれかねない。
まぁキューレに六体相手にさせる時点でどうかとは思うが、さっきの戦いでアダマンタイトナイトにまったく本気をださせていなかったとバレるのはさけたい。
「はい。主さま。私はいつでも大丈夫です。なんなら突然襲って貰っても全然平気ですよ?」
う、うん。まだちょっと不満なようだが、もうこのまま開始しよう……。
「準備がいいなら始めるぞ。それでは……戦闘開始だ!!」
その掛け声とともに一陣の風が吹き抜けた。
それは漆黒の風。
これは比喩ではなく、本当にキューレが放つオーラのようなものだ。
キューレがこの漆黒のオーラを纏っていると、攻撃時に闇属性の魔法の追撃効果が発動する。
わずか数秒。
たったそれだけの時間で……。
「なっ!? ば、ばかな……」
ほとんどの者には何が起こったのかわからなかっただろう。
ガンズと他数名の者はなんとか目で追えていたか。
光の粒子となって消えていく六体のアダマンタイトナイトに絶句していた。
うん、キューレ……やりすぎだ……。
◆
今、オレとキューレは冒険者ギルド三階にあるギルド長室にいる。
それはあの後、とんでもない騒ぎになってしまったからだ。
今も一階ではオレやキューレの話で持ちきりらしい。
まぁオレの方のアダマンタイトナイトは、まだギリギリ許容範囲だったんじゃないかと思う。
……まぁ異論は認める。
とにかく、異邦人についてはギルドマスターだけあってガンズがその能力をある程度知っており、最高位の異邦人ならやはり一〇体ほどの魔物を従えていると言っていたので、オレの読みは当たっていたようだ。
あんな強力なリビングアーマーは見たことも聞いたこともないぞと、楽しそうに笑っていたが……。
そ、それよりも問題はキューレだ。
キューレに関しては大半のものが何が起きたのかわからず、最初はいかさまじゃないのかと騒ぎ立てるやつらが大勢でたみたいだ。
だが、ぎりぎりその姿を追えたものたちが何が起こったのかを説明し、それが全員ギルドで一目を置かれている実力者たちだったために、一気に真実味が出てキューレの実力を疑う者はいなくなったそうだ。
あの実力は少なくともAランク以上だと……。
「がははは! まったく! 異邦人ってやつがここまで非常識な存在だとはおもわなかったぞ! しかもその護衛がSランクと言われてもおかしくねぇ実力者ときたんだから、もう笑うしかねぇな!」
なにがそんなに楽しいのか、ガンズはご機嫌に笑っている。
オレはとてもではないが、そんな気分ではないが。
「はぁ……もう少し目立たず普通に冒険者登録できればそれで良かったんだがな……」
いまさらだが、欲を出さずにキューレのランクはゆっくり上げていけば良かった。
そうすればオレだけなら異邦人として普通にCランクからスタート出来たわけだし、何も問題はなかったんだ……。
ほんと、あの時の欲を出した自分を殴りたい。
「嘘つけ! とても目立ちたくない奴がとるような行動じゃなかったぞ!」
「わかっている……ちょっと今反省しているからそれ以上言うな……」
「がははは! レスカは本当に面白れぇな! まぁレスカもBランク、キューレはAランクにしてやったんだ! もっと喜べよ!」
そう……オレはCランクで全然問題なかったんだが、いきなりBランクになってしまった。
あの強化されたアダマンタイトナイトの強さを考えるとAランクにしたかったそうだが、他の異邦人に配慮してBランク止まりにしたそうだ。
それは別にいい。というか、ありがたい。
でもそれならキューレも同じにして欲しかった……。
キューレの方は配慮の必要はないということで、いきなり最高位のAランクになってしまった。
別にオレの方が下のランクなのを嫌がっているのではない。
Aランクは全冒険者ギルドで、その名が発表されるらしいのだ。
実力で言えば、きっとオレもキューレも伝説と化しているSランク相当の強さは持っていると思うのだが、できれば一目置かれる程度が良かったな……。
「……そうだな。活動の範囲をせばめなくて済みそうなので、それについては感謝している」
「おぅ! 感謝しろしろ!」
そんな話をしていると、ギルド長室の扉をノックする音が響いた。
「リナシーか? 入っていいぞ!」
「失礼します。ギルドマスター。カードをお持ちしました」
「おう。そのままレスカとキューレの嬢ちゃんに渡してやってくれ」
その手に持っていたのは、魔法的な効果で薄っすらと輝く金と銀のギルドカード。
銀のものがBランク用のギルドカードでオレのもの。
金のものがAランク用のギルドカードでキューレのものだ。
「こちらです。どうぞお受け取りください」
「急ぎで用意してもらったみたいで悪いな。ありがたく頂いておく。キューレもほら」
キューレは興味がないのか受け取ろうとしないので、オレが代表してキューレの分も受け取り、オレの手から渡してやった。
「主さま、ありがとうございます!」
嬉しそうに喜ぶなら最初から受け取ってくれ。
手間がかかる……。
「レスカさま、キューレさん、あらためておめでとうございます」
少し苦笑しながらリナシーがそう口にした瞬間だった。
「あぁ、ありが……」
ありがとう。そう続けようとしたオレの言葉は止められてしまった。
【おめでとうございます。キャンペーン『異界からの訪問者』のステージが進行しました】
突然オレの耳に届いたシステムアナウンスによって……。
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