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【第30話:情報】
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いつの間に現れたのか、メリアの指には小さな鳥がとまっていた。
大きさは手の平よりも小さな小鳥で、首を傾げながら妹のメリアの目を覗き込んでいる。
「わぁ♪ 魔物使いじゃなくて、それって召喚魔法だよね!」
オレはロロアが言った言葉を理解するのに、数秒の時間が必要だった。
なぜなら召喚魔法と言うのは、それほど珍しいものだったからだ。
「召喚魔法? 召喚魔法って、あの、国に数人しかいないとかいうレアな魔法の?」
オレの問いかけに、メリアは何だかちょっと嬉しそうに、そして自慢げに頷いてみせた。
「へぇ! 凄いじゃないか!? 父さんや母さんは知っているのか? 凄く喜んだんじゃないか?」
オレの補助魔法使いとは違い、召喚魔法使いともなれば、身分に関係なく国に徴用して貰える。
もしそれが嫌だったとしても、大きな商会などからも契約のお誘いなどもあるはずだ。
通常商会では召喚魔法使いではなく魔物使いを雇うのだが、商会が連絡手段として魔物使いを雇う事を考えると、召喚魔法使いはその上位互換と言えるのだから引く手あまただろう。
「えへへ~♪ 驚かそうと思ってまだ言ってないの! だからフォーお兄ちゃんもまだ秘密にしててよ?」
「ったく……メリアはそういう事好きだよなぁ。まぁでも、今回は悪い事を黙っているわけじゃないし、それも良いか。わかったよ。黙っておくよ」
「やった♪」
メリアは昔からこういう人を驚かせるのが大好きだからな。
でも変わらない妹の一面を見て、今回の依頼を何が何でも成功させなければと強く思った。
今回の依頼はオレの命だけじゃない。
フィアやロロアの命はもちろん、このデルナークの村に暮らす皆の命がかかっているんだ。
「ふふふ。お兄ちゃん、そんな深刻な顔して~」
メリアの明るい態度を見ていると、本当にわかっているのかと不安になる。
だからって不安を煽る必要もないのだが、それでもちゃんと受け止めておいて欲しいと思い、ストレートに伝える事にした。
「そこまで状況を把握しているのならわかるだろ? サラマンダーと戦うんだぞ? オレももちろん負けるつもりはないが、相手が相手なんだ。勝てる保証もないんだぞ?」
だけど、メリアはまったくこたえた様子もみせず、言葉をかえしてきた。
「わかってるよ~」
ただ、意外な情報を添えて。
「でも……サラマンダーなんて、この村の周りにはいないはずだよ?」
「えっ⁉ どういうこと!? 私たち冒険者ギルドから正式な依頼を受けてきたのよ? その情報が間違っていたってこと?」
フィアが驚くのも当然だ。
冒険者ギルドは依頼を発行する際に、必ず依頼の情報が正しいかの確認をしてから冒険者に依頼を開示する。
「メリア? いったいどういう事なんだ? ちゃんと説明してくれ」
今回の依頼はちょっと流れが違うかもしれないが……いや、待てよ。
国からの依頼とかだとそもそも調査しない可能性もあるのか?
冒険者ギルドは一応は国の所属ではなく独立した組織だが、国に準じる組織ともいえる。
その国から正式に来た依頼なら調べたりしないのかもしれい。
「私ね。召喚魔法が使えるようになったのってまだ一月前ぐらいなの」
半年前まではメリアとは一緒に暮らしていたし、こいつはオレの後をいつもついて来ていたから、使えるようになったのはこの半年の間だろうとは思っていた。
「それでね。そこから毎日このピッチュちゃん、あ、この小鳥ね。この子を使ってずっと召喚魔法の練習をしていたの」
俺も魔法が使えるようになった時は嬉しくて毎日練習していた。
だからその気持ちは凄くわかる。
ましてレアな召喚魔法ともなれば、妹の性格からしても絶対に毎日ふらふらになるまで練習していたのは確実だろう。
「だからね。この村やこの村の周辺は、それはもう隙間なく全部チェックして回ってたの。でも、サラマンダーなんて見かけてないよ? サラマンダーって常に火を纏っているから凄く目立つはずでしょ? ギルドの情報を知ってからは、夜なら見落とさないと思って念入りに調べてみたけど、影も形も無かったよ? 冒険者ギルドの情報が間違っているんじゃないのかなぁ?」
そうか。色々事情を知っているにしては全然深刻じゃないから、何かおかしいとは思っていたんだが、サラマンダーが少なくとも近くにいない事を確信していたからだったのか。
でも、一体どういうことだ?
騎士団が一つ全滅しているんじゃないのか?
そんな大規模な戦闘があったのなら見落としようもないと思うのだが……。
「ねぇねぇ! いつまでもこんな所で話していないで村に入ろうよ! フィアさんとロロアちゃんも疲れているでしょ?」
「え? えぇ、まぁ今ここで色々考えても仕方ないし、とりあえず冒険者ギルド、出張所なんだっけ? そこに行きましょうか?」
「あぁ、確かにそうだな。メリアの言う事だから本当なんだろうけど、一度ギルドで事情を確認した方が良いな」
こうしてオレたちは、妹のメリアも連れて、まずは冒険者ギルドの出張所がある村の中央広場へと向かったのだった。
大きさは手の平よりも小さな小鳥で、首を傾げながら妹のメリアの目を覗き込んでいる。
「わぁ♪ 魔物使いじゃなくて、それって召喚魔法だよね!」
オレはロロアが言った言葉を理解するのに、数秒の時間が必要だった。
なぜなら召喚魔法と言うのは、それほど珍しいものだったからだ。
「召喚魔法? 召喚魔法って、あの、国に数人しかいないとかいうレアな魔法の?」
オレの問いかけに、メリアは何だかちょっと嬉しそうに、そして自慢げに頷いてみせた。
「へぇ! 凄いじゃないか!? 父さんや母さんは知っているのか? 凄く喜んだんじゃないか?」
オレの補助魔法使いとは違い、召喚魔法使いともなれば、身分に関係なく国に徴用して貰える。
もしそれが嫌だったとしても、大きな商会などからも契約のお誘いなどもあるはずだ。
通常商会では召喚魔法使いではなく魔物使いを雇うのだが、商会が連絡手段として魔物使いを雇う事を考えると、召喚魔法使いはその上位互換と言えるのだから引く手あまただろう。
「えへへ~♪ 驚かそうと思ってまだ言ってないの! だからフォーお兄ちゃんもまだ秘密にしててよ?」
「ったく……メリアはそういう事好きだよなぁ。まぁでも、今回は悪い事を黙っているわけじゃないし、それも良いか。わかったよ。黙っておくよ」
「やった♪」
メリアは昔からこういう人を驚かせるのが大好きだからな。
でも変わらない妹の一面を見て、今回の依頼を何が何でも成功させなければと強く思った。
今回の依頼はオレの命だけじゃない。
フィアやロロアの命はもちろん、このデルナークの村に暮らす皆の命がかかっているんだ。
「ふふふ。お兄ちゃん、そんな深刻な顔して~」
メリアの明るい態度を見ていると、本当にわかっているのかと不安になる。
だからって不安を煽る必要もないのだが、それでもちゃんと受け止めておいて欲しいと思い、ストレートに伝える事にした。
「そこまで状況を把握しているのならわかるだろ? サラマンダーと戦うんだぞ? オレももちろん負けるつもりはないが、相手が相手なんだ。勝てる保証もないんだぞ?」
だけど、メリアはまったくこたえた様子もみせず、言葉をかえしてきた。
「わかってるよ~」
ただ、意外な情報を添えて。
「でも……サラマンダーなんて、この村の周りにはいないはずだよ?」
「えっ⁉ どういうこと!? 私たち冒険者ギルドから正式な依頼を受けてきたのよ? その情報が間違っていたってこと?」
フィアが驚くのも当然だ。
冒険者ギルドは依頼を発行する際に、必ず依頼の情報が正しいかの確認をしてから冒険者に依頼を開示する。
「メリア? いったいどういう事なんだ? ちゃんと説明してくれ」
今回の依頼はちょっと流れが違うかもしれないが……いや、待てよ。
国からの依頼とかだとそもそも調査しない可能性もあるのか?
冒険者ギルドは一応は国の所属ではなく独立した組織だが、国に準じる組織ともいえる。
その国から正式に来た依頼なら調べたりしないのかもしれい。
「私ね。召喚魔法が使えるようになったのってまだ一月前ぐらいなの」
半年前まではメリアとは一緒に暮らしていたし、こいつはオレの後をいつもついて来ていたから、使えるようになったのはこの半年の間だろうとは思っていた。
「それでね。そこから毎日このピッチュちゃん、あ、この小鳥ね。この子を使ってずっと召喚魔法の練習をしていたの」
俺も魔法が使えるようになった時は嬉しくて毎日練習していた。
だからその気持ちは凄くわかる。
ましてレアな召喚魔法ともなれば、妹の性格からしても絶対に毎日ふらふらになるまで練習していたのは確実だろう。
「だからね。この村やこの村の周辺は、それはもう隙間なく全部チェックして回ってたの。でも、サラマンダーなんて見かけてないよ? サラマンダーって常に火を纏っているから凄く目立つはずでしょ? ギルドの情報を知ってからは、夜なら見落とさないと思って念入りに調べてみたけど、影も形も無かったよ? 冒険者ギルドの情報が間違っているんじゃないのかなぁ?」
そうか。色々事情を知っているにしては全然深刻じゃないから、何かおかしいとは思っていたんだが、サラマンダーが少なくとも近くにいない事を確信していたからだったのか。
でも、一体どういうことだ?
騎士団が一つ全滅しているんじゃないのか?
そんな大規模な戦闘があったのなら見落としようもないと思うのだが……。
「ねぇねぇ! いつまでもこんな所で話していないで村に入ろうよ! フィアさんとロロアちゃんも疲れているでしょ?」
「え? えぇ、まぁ今ここで色々考えても仕方ないし、とりあえず冒険者ギルド、出張所なんだっけ? そこに行きましょうか?」
「あぁ、確かにそうだな。メリアの言う事だから本当なんだろうけど、一度ギルドで事情を確認した方が良いな」
こうしてオレたちは、妹のメリアも連れて、まずは冒険者ギルドの出張所がある村の中央広場へと向かったのだった。
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