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【第14話:訓練場】
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「決まりね! じゃぁ、これからよろしく! フォーレスト!」
「あぁ、よろしくな」
そう言って手を差し出すと、フィアはまた少し視線を逸らし、頬を朱に染めながら握手に応じた。
すると、今度はフィアの後ろからそっと手が差し出される。
「よ、よろしくお願いします……」
しかし、相当な恥ずかしがりやのようだな。
ロロアの声、初めて聞いた気がする。
握手を終えると、ロロアはまたフィアの後ろに隠れてしまった。
「はぁ~……ロロア? いい加減、その人見知りを直さないとダメよ?」
フィアも少し人見知りな気がするが、ロロアは更に輪をかけてといった感じだな。
と……それより、ずっとシリアを待たせたままだ。
「すまない。シリア。対応して貰っている途中だったのに」
「いいえ。パーティーが組めそうで良かったですね! おめでとうございます!」
「あ、ありがとう」
シリアとの最初の出会いはちょっと困った感じだったが、ギルドマスターの言うように、根は本当に良い人なのだろう。
「それで……フォーレストさん」
「ん?」
「ゴブリンの集落の殲滅依頼はどうされます?」
仲間が見つかったとは言え、まだ一度も一緒に戦ったことのないパーティーだ。
しかも最低人数のたった三人で、いきなりゴブリンの集落を殲滅するという依頼は、あまりにも危険すぎる。
そう思って断ろうとしたのだが……。
「そうだな……悪いが」
別の依頼を……と続けようとしたその言葉は、途中で止められてしまった。
「なになに? 依頼を受けるところだったの? いいじゃない! ゴブリンの殲滅なら肩慣らしにちょうどいいわ!」
フィアが依頼に乗り気になってしまった。
「いやいや。待て。パーティーの連携も出来ていないし、たった三人なんだぞ? 危険すぎるんじゃないか?」
「大丈夫よ~。フォーレストの補助魔法によるサポートと、ロロアの回復魔法があれば私一人でも何とかなるレベルだわ!」
え……フィアは本当にそれほどの実力の持ち主なのか?
その疑問の視線をシリアに向けてみると、にこにこしながら頷きを返してきた。
「シリア。まだ受けるかどうか決めかねているんだが、集落と言うのはどれぐらいの規模なんだ? 依頼を受ける前に教えられる範囲でいいから教えてくれないか?」
依頼によっては、詳細は実際に受けた後でないと教えて貰えないものも多い。
だから、最悪断る事が出来るように話せる範囲でとお願いしてみた。
「はい。今回の依頼は、具体的な場所以外は情報規制されていないので、ゴブリンの規模などは全てお教えできます。まず……」
それから、ある程度具体的な集落の規模、王都からどれぐらいの場所の話なのか、上位種などの存在は確認されているのか、そして達成した場合の報酬などの話を聞く事ができた。
「ゴブリンの数がおよそ三〇で、上位種や亜種の存在は未確認。王都からは徒歩で半日ほどか」
集落の大きさとしては比較的小さいもののようだが、それでも三〇匹もの数のゴブリンを相手にするのはかなり危険だ。
しかも、上位種の存在が未確認という事は、最悪その中には通常種のゴブリンよりも強い奴が混ざっているかもしれないのだ。
断った方が良い気がするが……フィアはやる気満々のようだ。
「三〇匹なら問題ないわ。この依頼受けましょう!」
フィアにそう言われても、本当にその言葉を信じていいのか悩んでいると、意外にもロロアも賛成だと言い始めた。
「あの……私も受けて大丈夫だと思います。お姉ちゃん、槍の扱いは凄いから……」
姉を盲目的に信じているとかじゃないよな?
でも、こうも姉にべったりなら普通は心配して反対しそうなものなのに、本当に信頼しているんだろうな。
それならオレも信じてみるか……。
いざとなれば、オレも補助魔法の新しい使い方を駆使することで、かなり貢献できるはずだ。
「……わかった。シリア、その依頼を受けさせてくれ」
こうしてオレ、フィア、ロロアの三人で、ゴブリンの集落を殲滅するという依頼を受けたのだった。
◆
依頼を受けたオレたちは、まずはお互いの親交を深めようという話になり、ギルド併設の酒場……ではなく、なぜか冒険者ギルド裏手にある訓練場へと来ていた。
「普通、こういう時ってまずは飯でも一緒に食うって言うのが普通の流れじゃないのか……?」
「お互いの実力や能力、扱える魔法など手の内を見せてから一緒に食事をした方が、作戦も考えられて一石二鳥じゃない?」
確かにそう言われると一理あるのか?
どちらにしろ、もう訓練場まで来てしまっているし、やるしかないんだが。
「それで、どうしたらいいんだ? オレは一応は片手剣と盾は扱えるが、正直そこまでの腕じゃないぞ?」
「わかってるわ。そもそも魔法使いに武器の扱いを求めたりしないわよ。でも……せっかく扱えるんだから、その実力は見ておかないとね!」
な、なんだか凄く生き生きしていて楽しそうだな。
いわゆる戦闘狂とかいう奴じゃないよな……。
「わ、わかったが、ほどほどで頼むぞ?」
オレは訓練場で貸し出されている練習用の木剣と盾を手に取ると、同じく訓練用の槍を構えたフィアの前へと歩みでた。
今回の手合わせでは、補助魔法も使って良いと言われている。
側には回復魔法の使い手のロロアもいる事だし、今回は『全能力向上』1.5倍でいくつもりだ。
ロロアやたまたま居合わせた冒険者が見守る中、フィアとの手合わせが始まろうとしていた。
「あぁ、よろしくな」
そう言って手を差し出すと、フィアはまた少し視線を逸らし、頬を朱に染めながら握手に応じた。
すると、今度はフィアの後ろからそっと手が差し出される。
「よ、よろしくお願いします……」
しかし、相当な恥ずかしがりやのようだな。
ロロアの声、初めて聞いた気がする。
握手を終えると、ロロアはまたフィアの後ろに隠れてしまった。
「はぁ~……ロロア? いい加減、その人見知りを直さないとダメよ?」
フィアも少し人見知りな気がするが、ロロアは更に輪をかけてといった感じだな。
と……それより、ずっとシリアを待たせたままだ。
「すまない。シリア。対応して貰っている途中だったのに」
「いいえ。パーティーが組めそうで良かったですね! おめでとうございます!」
「あ、ありがとう」
シリアとの最初の出会いはちょっと困った感じだったが、ギルドマスターの言うように、根は本当に良い人なのだろう。
「それで……フォーレストさん」
「ん?」
「ゴブリンの集落の殲滅依頼はどうされます?」
仲間が見つかったとは言え、まだ一度も一緒に戦ったことのないパーティーだ。
しかも最低人数のたった三人で、いきなりゴブリンの集落を殲滅するという依頼は、あまりにも危険すぎる。
そう思って断ろうとしたのだが……。
「そうだな……悪いが」
別の依頼を……と続けようとしたその言葉は、途中で止められてしまった。
「なになに? 依頼を受けるところだったの? いいじゃない! ゴブリンの殲滅なら肩慣らしにちょうどいいわ!」
フィアが依頼に乗り気になってしまった。
「いやいや。待て。パーティーの連携も出来ていないし、たった三人なんだぞ? 危険すぎるんじゃないか?」
「大丈夫よ~。フォーレストの補助魔法によるサポートと、ロロアの回復魔法があれば私一人でも何とかなるレベルだわ!」
え……フィアは本当にそれほどの実力の持ち主なのか?
その疑問の視線をシリアに向けてみると、にこにこしながら頷きを返してきた。
「シリア。まだ受けるかどうか決めかねているんだが、集落と言うのはどれぐらいの規模なんだ? 依頼を受ける前に教えられる範囲でいいから教えてくれないか?」
依頼によっては、詳細は実際に受けた後でないと教えて貰えないものも多い。
だから、最悪断る事が出来るように話せる範囲でとお願いしてみた。
「はい。今回の依頼は、具体的な場所以外は情報規制されていないので、ゴブリンの規模などは全てお教えできます。まず……」
それから、ある程度具体的な集落の規模、王都からどれぐらいの場所の話なのか、上位種などの存在は確認されているのか、そして達成した場合の報酬などの話を聞く事ができた。
「ゴブリンの数がおよそ三〇で、上位種や亜種の存在は未確認。王都からは徒歩で半日ほどか」
集落の大きさとしては比較的小さいもののようだが、それでも三〇匹もの数のゴブリンを相手にするのはかなり危険だ。
しかも、上位種の存在が未確認という事は、最悪その中には通常種のゴブリンよりも強い奴が混ざっているかもしれないのだ。
断った方が良い気がするが……フィアはやる気満々のようだ。
「三〇匹なら問題ないわ。この依頼受けましょう!」
フィアにそう言われても、本当にその言葉を信じていいのか悩んでいると、意外にもロロアも賛成だと言い始めた。
「あの……私も受けて大丈夫だと思います。お姉ちゃん、槍の扱いは凄いから……」
姉を盲目的に信じているとかじゃないよな?
でも、こうも姉にべったりなら普通は心配して反対しそうなものなのに、本当に信頼しているんだろうな。
それならオレも信じてみるか……。
いざとなれば、オレも補助魔法の新しい使い方を駆使することで、かなり貢献できるはずだ。
「……わかった。シリア、その依頼を受けさせてくれ」
こうしてオレ、フィア、ロロアの三人で、ゴブリンの集落を殲滅するという依頼を受けたのだった。
◆
依頼を受けたオレたちは、まずはお互いの親交を深めようという話になり、ギルド併設の酒場……ではなく、なぜか冒険者ギルド裏手にある訓練場へと来ていた。
「普通、こういう時ってまずは飯でも一緒に食うって言うのが普通の流れじゃないのか……?」
「お互いの実力や能力、扱える魔法など手の内を見せてから一緒に食事をした方が、作戦も考えられて一石二鳥じゃない?」
確かにそう言われると一理あるのか?
どちらにしろ、もう訓練場まで来てしまっているし、やるしかないんだが。
「それで、どうしたらいいんだ? オレは一応は片手剣と盾は扱えるが、正直そこまでの腕じゃないぞ?」
「わかってるわ。そもそも魔法使いに武器の扱いを求めたりしないわよ。でも……せっかく扱えるんだから、その実力は見ておかないとね!」
な、なんだか凄く生き生きしていて楽しそうだな。
いわゆる戦闘狂とかいう奴じゃないよな……。
「わ、わかったが、ほどほどで頼むぞ?」
オレは訓練場で貸し出されている練習用の木剣と盾を手に取ると、同じく訓練用の槍を構えたフィアの前へと歩みでた。
今回の手合わせでは、補助魔法も使って良いと言われている。
側には回復魔法の使い手のロロアもいる事だし、今回は『全能力向上』1.5倍でいくつもりだ。
ロロアやたまたま居合わせた冒険者が見守る中、フィアとの手合わせが始まろうとしていた。
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