微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸

文字の大きさ
上 下
14 / 54

【第14話:訓練場】

しおりを挟む
「決まりね! じゃぁ、これからよろしく! フォーレスト!」

「あぁ、よろしくな」

 そう言って手を差し出すと、フィアはまた少し視線を逸らし、頬を朱に染めながら握手に応じた。

 すると、今度はフィアの後ろからそっと手が差し出される。

「よ、よろしくお願いします……」

 しかし、相当な恥ずかしがりやのようだな。
 ロロアの声、初めて聞いた気がする。

 握手を終えると、ロロアはまたフィアの後ろに隠れてしまった。

「はぁ~……ロロア? いい加減、その人見知りを直さないとダメよ?」

 フィアも少し人見知りな気がするが、ロロアは更に輪をかけてといった感じだな。

 と……それより、ずっとシリアを待たせたままだ。

「すまない。シリア。対応して貰っている途中だったのに」

「いいえ。パーティーが組めそうで良かったですね! おめでとうございます!」

「あ、ありがとう」

 シリアとの最初の出会いはちょっと困った感じだったが、ギルドマスターの言うように、根は本当に良い人なのだろう。

「それで……フォーレストさん」

「ん?」

「ゴブリンの集落の殲滅依頼はどうされます?」

 仲間が見つかったとは言え、まだ一度も一緒に戦ったことのないパーティーだ。
 しかも最低人数のたった三人で、いきなりゴブリンの集落を殲滅するという依頼は、あまりにも危険すぎる。

 そう思って断ろうとしたのだが……。

「そうだな……悪いが」

 別の依頼を……と続けようとしたその言葉は、途中で止められてしまった。

「なになに? 依頼を受けるところだったの? いいじゃない! ゴブリンの殲滅なら肩慣らしにちょうどいいわ!」

 フィアが依頼に乗り気になってしまった。

「いやいや。待て。パーティーの連携も出来ていないし、たった三人なんだぞ? 危険すぎるんじゃないか?」

「大丈夫よ~。フォーレストの補助魔法によるサポートと、ロロアの回復魔法があれば私一人でも何とかなるレベルだわ!」

 え……フィアは本当にそれほどの実力の持ち主なのか?
 その疑問の視線をシリアに向けてみると、にこにこしながら頷きを返してきた。

「シリア。まだ受けるかどうか決めかねているんだが、集落と言うのはどれぐらいの規模なんだ? 依頼を受ける前に教えられる範囲でいいから教えてくれないか?」

 依頼によっては、詳細は実際に受けた後でないと教えて貰えないものも多い。
 だから、最悪断る事が出来るように話せる範囲でとお願いしてみた。

「はい。今回の依頼は、具体的な場所以外は情報規制ロックされていないので、ゴブリンの規模などは全てお教えできます。まず……」

 それから、ある程度具体的な集落の規模、王都からどれぐらいの場所の話なのか、上位種などの存在は確認されているのか、そして達成した場合の報酬などの話を聞く事ができた。

「ゴブリンの数がおよそ三〇で、上位種や亜種の存在は未確認。王都からは徒歩で半日ほどか」

 集落の大きさとしては比較的小さいもののようだが、それでも三〇匹もの数のゴブリンを相手にするのはかなり危険だ。
 しかも、上位種の存在が未確認という事は、最悪その中には通常種のゴブリンよりも強い奴が混ざっているかもしれないのだ。

 断った方が良い気がするが……フィアはやる気満々のようだ。

「三〇匹なら問題ないわ。この依頼受けましょう!」

 フィアにそう言われても、本当にその言葉を信じていいのか悩んでいると、意外にもロロアも賛成だと言い始めた。

「あの……私も受けて大丈夫だと思います。お姉ちゃん、槍の扱いは凄いから……」

 姉を盲目的に信じているとかじゃないよな?
 でも、こうも姉にべったりなら普通は心配して反対しそうなものなのに、本当に信頼しているんだろうな。

 それならオレも信じてみるか……。

 いざとなれば、オレも補助魔法の新しい使い方を駆使することで、かなり貢献できるはずだ。

「……わかった。シリア、その依頼を受けさせてくれ」

 こうしてオレ、フィア、ロロアの三人で、ゴブリンの集落を殲滅するという依頼を受けたのだった。

 ◆

 依頼を受けたオレたちは、まずはお互いの親交を深めようという話になり、ギルド併設の酒場……ではなく、なぜか冒険者ギルド裏手にある訓練場へと来ていた。

「普通、こういう時ってまずは飯でも一緒に食うって言うのが普通の流れじゃないのか……?」

「お互いの実力や能力、扱える魔法など手の内を見せてから一緒に食事をした方が、作戦も考えられて一石二鳥じゃない?」

 確かにそう言われると一理あるのか?
 どちらにしろ、もう訓練場まで来てしまっているし、やるしかないんだが。

「それで、どうしたらいいんだ? オレは一応は片手剣と盾は扱えるが、正直そこまでの腕じゃないぞ?」

「わかってるわ。そもそも魔法使いに武器の扱いを求めたりしないわよ。でも……せっかく扱えるんだから、その実力は見ておかないとね!」

 な、なんだか凄く生き生きしていて楽しそうだな。
 いわゆる戦闘狂とかいう奴じゃないよな……。

「わ、わかったが、ほどほどで頼むぞ?」

 オレは訓練場で貸し出されている練習用の木剣と盾を手に取ると、同じく訓練用の槍を構えたフィアの前へと歩みでた。

 今回の手合わせでは、補助魔法も使って良いと言われている。
 側には回復魔法の使い手のロロアもいる事だし、今回は『全能力向上フルブースト』1.5倍でいくつもりだ。

 ロロアやたまたま居合わせた冒険者が見守る中、フィアとの手合わせが始まろうとしていた。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

パーティーの役立たずとして追放された魔力タンク、世界でただ一人の自動人形『ドール』使いになる

日之影ソラ
ファンタジー
「ラスト、今日でお前はクビだ」 冒険者パーティで魔力タンク兼雑用係をしていたラストは、ある日突然リーダーから追放を宣告されてしまった。追放の理由は戦闘で役に立たないから。戦闘中に『コネクト』スキルで仲間と繋がり、仲間たちに自信の魔力を分け与えていたのだが……。それしかやっていないことを責められ、戦える人間のほうがマシだと仲間たちから言い放たれてしまう。 一人になり途方にくれるラストだったが、そこへ行方不明だった冒険者の祖父から送り物が届いた。贈り物と一緒に入れられた手紙には一言。 「ラストよ。彼女たちはお前の力になってくれる。ドール使いとなり、使い熟してみせよ」 そう記され、大きな木箱の中に入っていたのは綺麗な少女だった。 これは無能と言われた一人の冒険者が、自動人形(ドール)と共に成り上がる物語。 7/25男性向けHOTランキング1位

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

ゴミスキル【スコップ】が本当はチート級でした~無能だからと生き埋めにされたけど、どんな物でも発掘できる力でカフェを経営しながら敵を撃退する~

名無し
ファンタジー
鉱山で大きな宝石を掘り当てた主人公のセインは、仲間たちから用済みにされた挙句、生き埋めにされてしまう。なんとか脱出したところでモンスターに襲われて死にかけるが、隠居していた司祭様に助けられ、外れだと思われていたスキル【スコップ】にどんな物でも発掘できる効果があると知る。それから様々なものを発掘するうちにカフェを経営することになり、スキルで掘り出した個性的な仲間たちとともに、店を潰そうとしてくる元仲間たちを撃退していく。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

婚約破棄されて追放されたけど、守護竜に愛されてます 〜ドラゴンの花嫁〜

有賀冬馬
恋愛
マイアーレ王女は非常に優秀だが、ちょっとばかり内向的な性格をしている。そして、活発な妹がいるせいで、自己評価がとても低い。 この物語は、彼女が国を追放される所から始まる。 彼女はこの国の守護竜と呼ばれるドラゴンに見初められ、ドラゴンの花嫁として王宮に復帰を遂げる……。

処理中です...