微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸

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【第9話:希望】

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 限界を超えてバフを掛けるというオレの話を聞いて、一瞬目を見開いたギルドマスターだったが、すぐに落ち着いてから聞き返してきた。

「限界を超えてバフをかけるだと……? もう少し詳しく教えてくれねぇか?」

「はい。実は、オレの固有スキルがバフやデバフの重ね掛けが出来るようになるというものなんです。それで……」

 それからオレは、あの時実際に自分が行ったこと、その結果、どうなったかを包み隠さず打ち明けた。

「はぁ~、そんな使い方で倒したとはなぁ。そりゃぁ、どうやって倒したのか、いくら調べてもわからないわけだ。しかしそれだとバフを相手にかけるだけじゃぁ、たいしたことは出来なさそうだな。フォーレストの固有スキルとの組み合わせが凶悪過ぎるって事か」

 たしかに相手にバフをかけるだけだと、あまり凄い効果とは言い難い。
 身体能力向上フィジカルブーストの1.5倍を掛けて、相手に痛みを与える事はできるが、それなら攻撃魔法を使えるものが普通に魔法を放った方が効率が良い。

 範囲化からのバフも、あまり離れた位置にいる相手には使えない。
 今回はたまたま屋内での戦闘だったので、全員が効果範囲内だったが……。

 単発のバフならそれなりの距離は届くのだが、そもそも相手に回復魔法使いがいれば、単に相手を強化するだけになる。
 重ね掛けをする事が出来て初めて有効な手段と言えるだろう。

「そうですね。今までは、せっかく固有スキルを使えるというのに、どうしてこんな役に立たないスキルなんだと思っていたのですが、上手く使えばかなり強力そうですね」

「ん? なんだかずいぶん他人事みたいな言い方するじゃねぇか? せっかく新しい可能性を見いだしたのに嬉しくないのか?」

「人相手にはかなり強力だとは思うのですが、魔物だと恐らくバフを重ね掛けした所でびくともしないのではないかと……」

 商隊の護衛の依頼などでは、魔物ではなく、盗賊などの人を相手にすることもあるだろうが、普通、冒険者が戦う相手は魔物がメインだ。

 そうなると、冒険者のオレにとっては、そこまで強力だとは思えない。

 それに、たしかに人相手ならかなり強力だとは思うが、あえてバフを使わなくても、人相手なら普通に武器で戦ったり、攻撃魔法を放ったりした方が効率が良いと思うんだ。
 今回はオレが武器を持っていなかったし、相手も完全に油断していたから上手く行ったが、相手が身構えていたら無理にバフを攻撃に使う意味はない。

 などと、思っていたのだが……。

「なんだぁ? 補助魔法に新しい可能性を見いだした奴にしては、使い方を工夫しようとは思わねぇんだな」

「使い方の工夫、ですか?」

「あぁ、そうだ。まず、バフは世界に善性な魔法と認識されているよな?」

 確かにバフは、回復魔法などと同じように、世界に良い効果をもたらす魔法だと認識されているが、それがどうしたのだろう?

「はい。確かにそうですが、それが何か……」

「ってことはだ……この世のあらゆる生物は、お前のバフを絶対にレジスト出来ねぇってことだぜ?」

「なっ!?」

 そんな事は考えたことも無かった!

 でも、確かにそうだ……。
 回復魔法は敵味方関係なく掛けることが出来ると聞く。

 貴族の子息などは、捕まえた低位の魔物を相手に訓練させるそうで、その際、何度も魔物に回復魔法をかけて……と、ローリエが言っていた。

 くしくも、ローリエがオレにやろうとしていた事だが……。

 そして、魔法に耐性のある魔物は多いし、その魔物を素材にした防具などで、人も魔法に対する耐性を得る事ができる。
 そう考えると、レジスト出来ない魔法としての使い道があるかもしれない。

「だけど、さっき言ったように魔物に一回や二回バフを掛けたところで……はっ!?」

「お? ちょっとは頭使いだしたか? そうだ。お前の重ね掛けってぇのは、一度しか出来ないのか?」

 今まで、無意味な固有スキルだと思っていたので、重ね掛けはあまり使った事はないのだが、実は村にいたころ何度も重ね掛けを使ったことがあるのを思い出した。

 使ったのはバフではなくデバフでだったが、低位の魔物『角兎ホーンラビット』に襲われた時に、何度もデバフをかけて限界まで弱らせてから倒したことがあった。

「……たぶん、何度でも出来ると思います……」

「それって、おめぇ……どんな相手、それが例えSランクの魔物のドラゴンだったとしても、倒す事が出来るってぇことじゃねぇのか?」

 ギルドマスターのドモンの言ったことの意味を理解したと同時に、オレは息を呑んだ……。

 ドラゴンを倒す事が出来るものなど、この世界に数人いるかいないかのはずだ。
 この『アルトレア王国』で言えば、一人もいないかもしれない。

 そんなドラゴン相手を倒せる可能性がある攻撃手段を手に入れたという事実に、オレはいつの間にか手を握り締めていた。

 なんだ……乾いてたオレの心に、熱い何かが流れ込んでくるような感覚だ。

 自分でも感情をうまくコントロールできずにいると、更にギルドマスターは話を続けた。

「まぁドラゴンを倒すまでに、ドラゴンを更に強化していかなきゃならねぇから、あくまでも例えの話だけどよぉ。それでも、お前の補助魔法とその固有スキルの組み合わせはよぉ……そういう可能性を秘めてるって事だ」

 オレはギルドマスターのその言葉に、失っていた希望を取り戻したのだった。
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