微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸

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【第7話:日の光】

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 ローリエの範囲化した軽治癒ライトヒールにより回復して動けるようになった奴らが一斉にオレに襲い掛かってきた。

 だけど……もう遅い!

「スキル範囲化! 及び、固有スキル重ね掛け! 身体能力向上フィジカルブースト! 1.5倍!」

 オレが魔法を発動した瞬間、襲い掛かろうとしていた奴が全員倒れた。

「ぎゃぁぁぁ!? ……あ"ぁ"、ぁ"……ぁ"……」

 そして……まずは一人。

 オレは、全身血濡れとなって倒れるローリエに一瞬だけ視線を向け、

「さよなら、ローリエ……」

 別れの言葉を投げかけた。

「ぐぁぁぁ……か、身体がぁ!?」

 周りに目を向けると、全員が床に這いつくばって、痛みに悶え苦しんでいた。

 範囲化スキルだと自分にもかかるので、オレもバフの効果は避けられないのだが、オレはまだ一段階しか掛かっていない上に、ローリエが範囲化して放った軽治癒ライトヒールはオレにも届いていたので、むしろ全身に力が漲っている状態だ。

「ぐぅぁぁぁぁ!! ふぉーれずどぉぉぉ!! きざまぁ!!」

 ローリエがやられたからか、それとも単に自分が地面に這いつくばっているのが気にくわないのかわからないが、バクスがこちらを睨みつけ、怨嗟の声をあげている。

「フォーレストォォ!! 許さねぇぞぉぉ!! ごろじてうやる!!」

 バクスだけじゃなかったな。今度はチャモがオレを殺すとのたまっている。

「なんだチャモ。その喋り方の方が、お前に合ってるんじゃないのか?」

「ごれだけの人間を相手に、逃げおおせるど思うなよぉぉ!!」

 こいつらは……まったく自分たちの置かれている状況を理解していないようだな。

「なんで逃げる必要があるんだ? とりあえず、身体能力抑制フィジカルダウン……」

 まずは自分にデバフをかけて、身体能力向上フィジカルブーストの効果を打ち消す。

 運良く一回でデバフがかかって相殺できたようだ。
 まぁ、自分の強さ以下の敵になら、それなりの確率で発動するからな。

 いや、違うか……バフとデバフはレジスト判定前に相殺されるんだったかな?
 まぁどちらにしろ、オレにかかったバフを消せたのは確かだ。

「なっ……お、おい……てめぇ、何をするつもりだ……」

 目の前でローリエに起こったことを見ているのに、なぜ、自分だけは大丈夫だと思ったんだろうな。

「スキル範囲化……」

「ま、待でっ!? まっでぐれっ!!」

「固有スキル重ね掛け……」

「か、金か!? 金なら結構ため込んでるのを半分、い、いや、ぜ、全部だ! 全部ぐれでやるぞ!?」

「「「や、や”め”ろ”ぉ”ぉ”!?」」」

 地べたで痛みに呻いていた奴らが一斉に叫ぶ中、オレは魔法を発動した。

身体能力向上フィジカルブースト、1.5倍!」

 騒がしかった声は一瞬で消え去り、そこには静寂が訪れたのだった。

 ◆

 クラン『薔薇の棘』を壊滅させてから、数日が過ぎようとしていた。

 ここは、日の光一つ差し込まない独房の中。

 オレはローリエたちを皆殺しにしてしまったあと、迷ったすえに、衛兵の詰め所へと出頭し、ことの顛末を全て打ち明けた。
 最初は信じていなかったようだが、状況を確認しにいった衛兵が戻ってくると、オレはこの独房へと入れられたのだ。

 まぁ、身を守るためとは言え、一〇人以上の人を殺めたのだ。
 街道を荒らしているような盗賊を殺す事は認められているが、相手は表面上は真っ当な冒険者だ。
 このまま罪を償うことになっても仕方ないと思っている。

 いや……思っていたのだが……。

「フォーレストくん。釈放だ」

 まさか、わずか数日の独房入りだけで、解放されるとは思いもしなかった。

「ど、どうして釈放なのですか? オレは……たくさんの人を……」

「クラン『薔薇の棘』なんだがな。裏で色々と悪事に手を染めていたことがわかってね」

 話を少し聞いてみると、なんでも診療所のあったあの建物から、様々な事件に関係していたと思われる証拠が山のように出てきたらしい。

 オレとローリエが王都にやってくる以前から、奴らは冒険者の隠れ蓑を纏いながら、裏でさまざまな悪事を行っていたらしい。

「それに……奴らの被害者だと思われる亡骸が、庭からいくつも発見された」

 オレの目はいったいどれだけ節穴だったんだ。
 あんなのでも、仲間だと思っていた自分が心底情けない。

 まさか、何人もの人間を殺していたなんて……。

「それじゃぁ、オレはお咎めなしなのですか?」

「あぁ! もちろんさ! それどころか、国と冒険者ギルドから懸賞金が出るそうだぞ?」

 懸賞金って……もう完全に盗賊団とかと同じ扱いじゃないか……。
 なんだか終わってまで、オレを驚かせてくるやつらだな。

「そ、そうですか」

「おっと、そうだ。これを渡すのを忘れていたよ」

 手渡してくれたのは、オレが愛用していた剣といくらかのお金だった。

「冒険者ギルドが協力してくれてね。今まで受けた依頼の君の取り分を算出してくれたんだよ」

 診療所にはかなりのお金がため込んであったようで、その中からオレの取り分を渡してくれたようだ。

「ありがとうございます。奴らに全部奪われて無一文だったので、助かります」

 野宿しながら故郷の村に帰ろうかと思っていたので、これは本当に助かるな。

「ははは。私にお礼を言う必要はないよ。全部、ギルドからの提案で行われたものだからね。私はそれに乗っかっただけだ」

「冒険者ギルドからですか?」

「あぁ、そうだよ。とりあえず懸賞金の件もあるし、この後、特に予定がないのなら、一度顔を出しておいた方がいい」

 冒険者ギルドがどういう風の吹き回しだろうか。
 でも、懸賞金を貰えるのなら、顔ぐらい出すか……。

「わかりました。それではこの後、さっそく行ってみたいと思います」

「そうした方が良い。そうそう。私の名はオックスだ。一応、王都で衛兵隊長の立場にあるので、何かあればいつでも相談にのるからね」

 オレは衛兵隊長だというオックスさんに礼を言って別れると、数日ぶりに日の光の下に出たのだった。
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