24 / 44
【第24話:真魔王軍とは】
しおりを挟む
冒険者ギルドの一室。
勇者レックスたちとギルドマスターのメルゲンを始めとした何人かの職員、それに貴族と思われる少し小太りの男とその従者がそこには控えていた。
「ようやく戻ってきたか……」
ステルヴィオは宿をとると、ネネネとトトト、それにケルをゼロに任せて、アルテミシアと二人で冒険者ギルドに戻ってきていた。
「別に依頼の最中ってわけでも無いし、特にギルドに縛られる理由とかないぞ?」
ステルヴィオのその物言いに「ぐぬぬ」と言いながらも、ギルドマスターのメルゲンがそれ以上何も言わないのは、確かにさっきの自分は冷静さをかいていたと、少し反省していたからだった。
「ま、まぁそうだな。それに、さっきは悪かった。俺はお前たちに感謝しなければいけない立場なのに、八つ当たりをしちまった」
そして、その表情を真剣なものに変えてから、ステルヴィオに頭を下げた。
「ははは。気にしてないからやめてくれ。そんな柄じゃないだろ? それじゃぁ、さっそく建設的な話をしようじゃないか」
ステルヴィオのその言葉に、メルゲンは不機嫌そうに顔をしかめるが、それほど悪い気はしていなかった。
「あぁ。それならそうさせて貰おうか。だがその前に……こちらの方はイグニス・フォン・アラド様だ。たまたまこの街に滞在されていたのだが、話を聞きたいという事なので、同席して頂いている」
「イグニスだ。領地を持たない宮廷貴族でな。状況を知りたいので無理を言って参加させて貰った。軍事には疎いので私の事は気にしないでくれて結構だ」
紹介されたイグニスという貴族は、立ち上がってそれだけ言うと、また席に着いた。
「それでは始める……おい! まずはギルドで掴んだ情報を報告だ!」
メルゲンは側で控えていたギルド職員に大声でそう命じると、自分は椅子にどっかと腰を下した。
「既に勇者様には先ほど一度報告している内容ですが、もう一度頭から報告させて頂きます。よ、よろしいですか?」
ギルド職員のその問いかけに、先に報告を一度受けていた勇者レックスが「問題ないよ」と軽く手をあげて答える。
「まず、非常に残念ではありますが、王都が炎に包まれているのは間違いないとの事です。これは王都から一番近い街の冒険者ギルドからの報告で確認が取れました」
「……その街は大丈夫なのか?」
ステルヴィオのその問いにギルド職員の男は一瞬悲しそうな表情を浮かべ、
「その後、魔導サインで二度ほど情報提供を受けたのですが……連絡が途絶えました。同様に街を襲われたと見るのが妥当かと考えています」
と、少し言葉を詰まらせつつもこたえた。
「……そうか……」
ステルヴィオは表情こそ平静に装いつつも、わずかに苛立ちを言葉に乗せてそうこたえ、ギルド職員の男に話の続きを促した。
「それでその……連絡が途絶えるまでに、二度の情報提供があったのですが、相手はやはりあの『真魔王軍』で間違いないようでして、王都は突然現れた魔王軍の兵、魔族どもによって陥落したようだとのことです」
そして、ギルド職員が「あの」と言ったのには訳がある。
十年ほど前に現れた『真魔王軍』は、そのわずか10年の間に、既に7つの国を滅ぼしているからだ。
そのうちの4つはこの世界に無数にある小国だが、残りの3つの国はしっかりした軍備を持つ大国だった。
そしてその『真魔王軍』には、他の魔王や魔王軍にはない特徴があった。
それは、他の魔王が何かの魔物が強くなって魔王に成りあがったのに対し、『真魔王軍』を率いるのは、魔族と呼ばれる人に近しい姿の者たちの中から生まれた魔王だという事だ。
つまり、生まれながらにして魔王として生を受けた存在だった。
「まぁあの『真魔王軍』相手だと、そりゃぁ普通の騎士団じゃ太刀打ちできないしな」
「ん……ステルヴィオ、その言い方だと、まるで戦ったことがあるみたいな物言いだけど……?」
勇者レックスのその問いに、
「戦ったことならあるぜ」
即答するステルヴィオ。
「!? ……ますます君たちが何者かわからなくなってきたよ……」
「まぁ、それも含めて後で話すさ」
オレのその言葉に「じゃぁ楽しみは後にとっておくよ」と軽く言ってのけるレックスもかなり良い性格をしている。
その二人のやり取りに色々物申したい雰囲気のメルゲンだったが、ぐっと我慢して顎で先に報告を済ませてしまえと職員に指示を出す。
「え、えっと……後は少し不確定な情報となりますが、奴らは王都を破壊した後はその場に居座っているらしく、街を逃げ出す者に対しては今のところ危害を加えていないようです。ただ、これは先に言いましたように隣町のギルドとの連絡が途絶えたので、どこまで信憑性があるのかわかりません」
その職員はそのまま話を続けようとするが、そこでメルゲンが少し話に割って入る。
「ちょっといいか? この国に来たばかりらしいお前たちに補足しておく。その街ってぇのは、王都から徒歩でも3時間ほどしか離れていねぇんだ。他の街のギルドからは今のところ無事だと連絡が入っているから、とりあえずの奴らの狙いは王都だけなのかもしれねぇ」
メルゲンのその話は、半分そうであって欲しいという希望でもあったのだが、今のところ『真魔王軍』が興味を示しているのが王都近辺のみと言うのは事実だった。
「あと、王たちは隣町から更に離れた公爵が治める街に向かっているようですが、こちらも今のところ正確な情報は掴めていません。尚、他の街のギルドとも連絡を取ってはいますが、魔導サインの使用回数が限られていますので、一旦緊急連絡を除き、現在は連絡を控えている状況です」
そして「報告は以上になります」と、一歩後ろに下がった。
「ん~、だいたいの状況はわかったが、何かこちらから動いたりはしていないのか?」
「いいえ。我が町の冒険者の中に『遠見』のギフトを持つ者がいたので、その者に護衛を付けて確認に向かわせています。明日には戻ってくるので詳しい情報はそこで手に入るかと」
ギルド職員のいう『遠見』のギフトとは、比較的有名なギフトで、遠く離れた場所を上空から覗き見る事ができるというものだった。
そして、その事をもちろん知っているステルヴィオは、
「それは悪手だな。すぐに早馬を出して中止したほうがいい」
と言って、鋭い視線を向けた。
しかし、遠見のギフトは数キロ先から安全に状況確認ができる有能なギフトだ。
ギルド職員はもちろん、メルゲンや勇者レックスたちも、なぜステルヴィオがそんな事をいうのか、その理由がわからなかった。
「ステルヴィオ。すまないが、その理由を教えてくれないかい?」
そしてその皆の疑問に、勇者レックスが代表するように尋ねると、ステルヴィオは少し声を張って話始めた。
「理由は簡単だ。今回、この国の王都を襲った奴ら全員が……飛行能力を持ってるからだ」
「なっ!? 全員だと!?」
声をあげたのはメルゲンだけだったが、皆、驚きを隠せなかった。
ステルヴィオの口から述べられた「全員が飛行能力を有する」と言う話が本当なら、普通の国家では太刀打ちできないからだ。
どこの国でもある程度は対空防御についても考えられている。
そして長い歴史を持つ『古都リ・ラドロア』にも、多くの弩などが設置されていた。
魔物の中にも空を飛ぶものが存在するので当然の事だ。
だが、これが人型の知能を持った魔族数百人が、全員空を飛んで攻めてくるとなると、話が変わってくる。
国の主戦力である騎士がほとんど役に立たなくなる上に、弩のような大型の魔物向けの兵器では当てるのが難しい。
残るは弓矢で射るか、魔法を当てるかしかないが、魔族は魔法の扱いに長けており、魔法で障壁を張られてしまうと、並の腕の者ではかすり傷一つ負わせる事が出来なくなってしまう。
「真魔王軍は4人の魔王によって統率されている。それぞれの魔王が冠するのは『天』『地』『水』、そして『無』だ。そして、突然王都を襲われてしまった理由はお察しの通りだ。今回、この国に攻め込んできたのは『天』。奴ら数は少ないが、全員が空を飛んでやって来る上に、『地』の奴らよりも更に魔法に長けている」
メルゲンやレックスたちは知らない事だが、今まで確認されていたのは全て『地』の真魔王軍だ。
今回襲って来た『天』の真魔王軍は、接近戦よりも魔法に長けた軍なのだが、『地』の魔族の扱う魔法ですら梃子摺っていた人族連合にとっては、あまり知りたくない事実だろう。
「悪いことは言わないからすぐに呼び戻してやれよ。たとえ先に見つけられたとしても、向こうも空から簡単にそいつらを見つけるだろう。そして見つかれば、あっという間に追い付かれて……。だから、無駄死にさせるな」
そのステルヴィオの話にメルゲンは、
「くそっ! 本当なんだろうな!? おい! すぐに早馬を出せ!」
悔しそうにしながらも即断即決で、職員に指示を出していった。
「ところで……ちょっといいかな?」
慌ただしくギルド職員が部屋を飛び出していく中、そう声をあげたのは、今まで一言も発さなかった貴族の男イグニスだった。
メルゲンは、自分がステルヴィオの出どころのわからない話をあっさり信じて、偵察を中止した事を疑問に思ったのかと思い口を開く。
「あぁ、イグニス様。信じられないかも知れねぇが、こいつは……」
しかし、その話は貴族の男に止められた。
「すまない。イグニスと言う名は偽名なんだ」
「は? いや、確かにあの貴族証は本人の物だったはずだが……」
メルゲンは、貴族証をこの目で確認していたので、その言葉が信じられなかった。
貴族証は王が特殊な魔道具を使って発行しており、偽造などそう簡単にできる者ではないからだ。
だが、貴族の男が次に発した言葉が本当なら、それは不可能ではなかった。
「予言通りに光と闇を併せ持つ者と出会えたのでな。私も身分を明かそう。私の本当の名は『アグニスト・フォン・ラドロア』。この国の王太子だ」
そう言って、変身の魔道具の効果を解いたのだった。
勇者レックスたちとギルドマスターのメルゲンを始めとした何人かの職員、それに貴族と思われる少し小太りの男とその従者がそこには控えていた。
「ようやく戻ってきたか……」
ステルヴィオは宿をとると、ネネネとトトト、それにケルをゼロに任せて、アルテミシアと二人で冒険者ギルドに戻ってきていた。
「別に依頼の最中ってわけでも無いし、特にギルドに縛られる理由とかないぞ?」
ステルヴィオのその物言いに「ぐぬぬ」と言いながらも、ギルドマスターのメルゲンがそれ以上何も言わないのは、確かにさっきの自分は冷静さをかいていたと、少し反省していたからだった。
「ま、まぁそうだな。それに、さっきは悪かった。俺はお前たちに感謝しなければいけない立場なのに、八つ当たりをしちまった」
そして、その表情を真剣なものに変えてから、ステルヴィオに頭を下げた。
「ははは。気にしてないからやめてくれ。そんな柄じゃないだろ? それじゃぁ、さっそく建設的な話をしようじゃないか」
ステルヴィオのその言葉に、メルゲンは不機嫌そうに顔をしかめるが、それほど悪い気はしていなかった。
「あぁ。それならそうさせて貰おうか。だがその前に……こちらの方はイグニス・フォン・アラド様だ。たまたまこの街に滞在されていたのだが、話を聞きたいという事なので、同席して頂いている」
「イグニスだ。領地を持たない宮廷貴族でな。状況を知りたいので無理を言って参加させて貰った。軍事には疎いので私の事は気にしないでくれて結構だ」
紹介されたイグニスという貴族は、立ち上がってそれだけ言うと、また席に着いた。
「それでは始める……おい! まずはギルドで掴んだ情報を報告だ!」
メルゲンは側で控えていたギルド職員に大声でそう命じると、自分は椅子にどっかと腰を下した。
「既に勇者様には先ほど一度報告している内容ですが、もう一度頭から報告させて頂きます。よ、よろしいですか?」
ギルド職員のその問いかけに、先に報告を一度受けていた勇者レックスが「問題ないよ」と軽く手をあげて答える。
「まず、非常に残念ではありますが、王都が炎に包まれているのは間違いないとの事です。これは王都から一番近い街の冒険者ギルドからの報告で確認が取れました」
「……その街は大丈夫なのか?」
ステルヴィオのその問いにギルド職員の男は一瞬悲しそうな表情を浮かべ、
「その後、魔導サインで二度ほど情報提供を受けたのですが……連絡が途絶えました。同様に街を襲われたと見るのが妥当かと考えています」
と、少し言葉を詰まらせつつもこたえた。
「……そうか……」
ステルヴィオは表情こそ平静に装いつつも、わずかに苛立ちを言葉に乗せてそうこたえ、ギルド職員の男に話の続きを促した。
「それでその……連絡が途絶えるまでに、二度の情報提供があったのですが、相手はやはりあの『真魔王軍』で間違いないようでして、王都は突然現れた魔王軍の兵、魔族どもによって陥落したようだとのことです」
そして、ギルド職員が「あの」と言ったのには訳がある。
十年ほど前に現れた『真魔王軍』は、そのわずか10年の間に、既に7つの国を滅ぼしているからだ。
そのうちの4つはこの世界に無数にある小国だが、残りの3つの国はしっかりした軍備を持つ大国だった。
そしてその『真魔王軍』には、他の魔王や魔王軍にはない特徴があった。
それは、他の魔王が何かの魔物が強くなって魔王に成りあがったのに対し、『真魔王軍』を率いるのは、魔族と呼ばれる人に近しい姿の者たちの中から生まれた魔王だという事だ。
つまり、生まれながらにして魔王として生を受けた存在だった。
「まぁあの『真魔王軍』相手だと、そりゃぁ普通の騎士団じゃ太刀打ちできないしな」
「ん……ステルヴィオ、その言い方だと、まるで戦ったことがあるみたいな物言いだけど……?」
勇者レックスのその問いに、
「戦ったことならあるぜ」
即答するステルヴィオ。
「!? ……ますます君たちが何者かわからなくなってきたよ……」
「まぁ、それも含めて後で話すさ」
オレのその言葉に「じゃぁ楽しみは後にとっておくよ」と軽く言ってのけるレックスもかなり良い性格をしている。
その二人のやり取りに色々物申したい雰囲気のメルゲンだったが、ぐっと我慢して顎で先に報告を済ませてしまえと職員に指示を出す。
「え、えっと……後は少し不確定な情報となりますが、奴らは王都を破壊した後はその場に居座っているらしく、街を逃げ出す者に対しては今のところ危害を加えていないようです。ただ、これは先に言いましたように隣町のギルドとの連絡が途絶えたので、どこまで信憑性があるのかわかりません」
その職員はそのまま話を続けようとするが、そこでメルゲンが少し話に割って入る。
「ちょっといいか? この国に来たばかりらしいお前たちに補足しておく。その街ってぇのは、王都から徒歩でも3時間ほどしか離れていねぇんだ。他の街のギルドからは今のところ無事だと連絡が入っているから、とりあえずの奴らの狙いは王都だけなのかもしれねぇ」
メルゲンのその話は、半分そうであって欲しいという希望でもあったのだが、今のところ『真魔王軍』が興味を示しているのが王都近辺のみと言うのは事実だった。
「あと、王たちは隣町から更に離れた公爵が治める街に向かっているようですが、こちらも今のところ正確な情報は掴めていません。尚、他の街のギルドとも連絡を取ってはいますが、魔導サインの使用回数が限られていますので、一旦緊急連絡を除き、現在は連絡を控えている状況です」
そして「報告は以上になります」と、一歩後ろに下がった。
「ん~、だいたいの状況はわかったが、何かこちらから動いたりはしていないのか?」
「いいえ。我が町の冒険者の中に『遠見』のギフトを持つ者がいたので、その者に護衛を付けて確認に向かわせています。明日には戻ってくるので詳しい情報はそこで手に入るかと」
ギルド職員のいう『遠見』のギフトとは、比較的有名なギフトで、遠く離れた場所を上空から覗き見る事ができるというものだった。
そして、その事をもちろん知っているステルヴィオは、
「それは悪手だな。すぐに早馬を出して中止したほうがいい」
と言って、鋭い視線を向けた。
しかし、遠見のギフトは数キロ先から安全に状況確認ができる有能なギフトだ。
ギルド職員はもちろん、メルゲンや勇者レックスたちも、なぜステルヴィオがそんな事をいうのか、その理由がわからなかった。
「ステルヴィオ。すまないが、その理由を教えてくれないかい?」
そしてその皆の疑問に、勇者レックスが代表するように尋ねると、ステルヴィオは少し声を張って話始めた。
「理由は簡単だ。今回、この国の王都を襲った奴ら全員が……飛行能力を持ってるからだ」
「なっ!? 全員だと!?」
声をあげたのはメルゲンだけだったが、皆、驚きを隠せなかった。
ステルヴィオの口から述べられた「全員が飛行能力を有する」と言う話が本当なら、普通の国家では太刀打ちできないからだ。
どこの国でもある程度は対空防御についても考えられている。
そして長い歴史を持つ『古都リ・ラドロア』にも、多くの弩などが設置されていた。
魔物の中にも空を飛ぶものが存在するので当然の事だ。
だが、これが人型の知能を持った魔族数百人が、全員空を飛んで攻めてくるとなると、話が変わってくる。
国の主戦力である騎士がほとんど役に立たなくなる上に、弩のような大型の魔物向けの兵器では当てるのが難しい。
残るは弓矢で射るか、魔法を当てるかしかないが、魔族は魔法の扱いに長けており、魔法で障壁を張られてしまうと、並の腕の者ではかすり傷一つ負わせる事が出来なくなってしまう。
「真魔王軍は4人の魔王によって統率されている。それぞれの魔王が冠するのは『天』『地』『水』、そして『無』だ。そして、突然王都を襲われてしまった理由はお察しの通りだ。今回、この国に攻め込んできたのは『天』。奴ら数は少ないが、全員が空を飛んでやって来る上に、『地』の奴らよりも更に魔法に長けている」
メルゲンやレックスたちは知らない事だが、今まで確認されていたのは全て『地』の真魔王軍だ。
今回襲って来た『天』の真魔王軍は、接近戦よりも魔法に長けた軍なのだが、『地』の魔族の扱う魔法ですら梃子摺っていた人族連合にとっては、あまり知りたくない事実だろう。
「悪いことは言わないからすぐに呼び戻してやれよ。たとえ先に見つけられたとしても、向こうも空から簡単にそいつらを見つけるだろう。そして見つかれば、あっという間に追い付かれて……。だから、無駄死にさせるな」
そのステルヴィオの話にメルゲンは、
「くそっ! 本当なんだろうな!? おい! すぐに早馬を出せ!」
悔しそうにしながらも即断即決で、職員に指示を出していった。
「ところで……ちょっといいかな?」
慌ただしくギルド職員が部屋を飛び出していく中、そう声をあげたのは、今まで一言も発さなかった貴族の男イグニスだった。
メルゲンは、自分がステルヴィオの出どころのわからない話をあっさり信じて、偵察を中止した事を疑問に思ったのかと思い口を開く。
「あぁ、イグニス様。信じられないかも知れねぇが、こいつは……」
しかし、その話は貴族の男に止められた。
「すまない。イグニスと言う名は偽名なんだ」
「は? いや、確かにあの貴族証は本人の物だったはずだが……」
メルゲンは、貴族証をこの目で確認していたので、その言葉が信じられなかった。
貴族証は王が特殊な魔道具を使って発行しており、偽造などそう簡単にできる者ではないからだ。
だが、貴族の男が次に発した言葉が本当なら、それは不可能ではなかった。
「予言通りに光と闇を併せ持つ者と出会えたのでな。私も身分を明かそう。私の本当の名は『アグニスト・フォン・ラドロア』。この国の王太子だ」
そう言って、変身の魔道具の効果を解いたのだった。
0
お気に入りに追加
177
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
闇の錬金術師と三毛猫 ~全種類のポーションが製造可能になったので猫と共にお店でスローライフします~
桜井正宗
ファンタジー
Cランクの平凡な錬金術師・カイリは、宮廷錬金術師に憧れていた。
技術を磨くために大手ギルドに所属。
半年経つとギルドマスターから追放を言い渡された。
理由は、ポーションがまずくて回復力がないからだった。
孤独になったカイリは絶望の中で三毛猫・ヴァルハラと出会う。人語を話す不思議な猫だった。力を与えられ闇の錬金術師に生まれ変わった。
全種類のポーションが製造可能になってしまったのだ。
その力を活かしてお店を開くと、最高のポーションだと国中に広まった。ポーションは飛ぶように売れ、いつの間にかお金持ちに……!
その噂を聞きつけた元ギルドも、もう一度やり直さないかとやって来るが――もう遅かった。
カイリは様々なポーションを製造して成り上がっていくのだった。
三毛猫と共に人生の勝ち組へ...!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる