106 / 137
第三章 追憶と悔恨
【第104話:昇格試験 その3】
しおりを挟む
ゴールドランク冒険者のスキットとワドルを同時に相手にする事になったオレは、名も無きスティックを腰から抜いて構えをとる。
すると、ワーグナーさんが
「あぁ。すみませぬ。ユウトさん少しお待ちください」
と言って、文様の入ったロープを持った十数人のギルド職員と冒険者に指示を出していく。
ギルド職員や冒険者たちは指示に従いロープに魔力を込めだすと、ロープの先に繋げられている各辺が1mほどの立方体の魔道具に魔力が集められ、光を放ちだす。
オレは念のために『見極めし者』を起動してその力を見極める。
(あぁ。この立方体の魔道具は魔法陣みたいなものか。これは様々強化魔法を組み合わせて効果を飛躍的にアップさせる専用の魔道具っぽいな)
オレがギルド魔法と呼ばれているけど魔道具じゃん!とか心の中で少し突っ込みを入れながら効果を確認していると
「さぁ、準備は整いましたぞ。ユウトさんもよろしいですかな?」
そう確認されたので、大丈夫だと返事をかえす。
ゴールドランク冒険者の二人も
「す、凄いぞ!これならプラチナランク相手でも勝てる!いつでもOKだ!」
「魔力が凄まじく強化されているな……。私もいつでも良いですよ」
と、返事をかえす。
そしてワーグナーさんはオレ達から離れると、残りのギルド職員と結界のような防護魔法で修練場を包み込むといよいよ開始の合図をあげる。
「それでは……模擬戦はじめ!!」
こうして模擬戦の幕はあがったのだった。
~
オレはまずは魔力による能力強化を行い、相手の出方を待つことにする。
すると、オレの態度が恐れて警戒していると勘違いした二人が一気に攻勢に出る。
まずはスキットが自身の得意武器である槍を構えると、すぐさま魔力を纏って突っ込んでくる。
ゴールドランク冒険者がギルド魔法の強化によって数段向上している身体能力は伊達ではなかった。
かき消えるようにオレの前に現れたかと思うと5段突きを放ってくる。
「侮った事を後悔させてやる!」
そう言って放たれた目にもとまらぬ速さの5段突きだったが、オレの権能の力の前には止まって見えるようだった。
全ての突きを紙一重の最小限の動作でかわすと、軽めの魔力撃でスキットの胴に一撃を叩き込む。
ドゴッ!
吹っ飛んだスキットが少し心配だったが、オレの動きが止まるのを待っていたのか今度はワドルがストーンキャノンと呼ばれているこぶし大の石を放つ魔法をマシンガンのように撃ってくる。
ドガガガガガガッ!
しかし、これも紙一重で避けつつワドルの場所を見定めて角度を計算すると、次々打ち返してやる。
「ぐはっ!ぐぼっ!うごっ!べしっ!」
連続で打ち返されたので4発ほどくらって吹っ飛ぶワドル。
それを見ていたグレスが
「あぁ~ぁ。まるで勝負になってないっちな……」
俺っちは模擬戦かなり苦労したのにと愚痴っていたが、まだこれで終わりではなかった。
スキットもワドルも普通なら重傷を負っているような威力の攻撃を受けたのだが、案外ピンピンしており、
「くそっ!まぐれだっ!」
「もう油断せん!次は打ち返せない風属性だ!」
と言って痛みを我慢して立ち上がったのだ。
オレは
「おぉ。ギルド魔法の強化って本当にすごいな。それじゃぁオレも少し本気をだすよ」
と言って魔力炉を起動して、纏う魔力を数段引き上げる。
そして今度はこっちからだと動き出そうとした時、ワーグナーさんが
「な!?魔力炉ですと!?お、お待ちください!」
と驚き声をあげ、スキットとワドルの二人も顔を見合わせると、
「「ま、参りました!!」」
とあっさり降参してしまうのだった。
オレは肩透かしをくらった気分で、
「へ?どういう事ですか?」
と尋ねるのだが、ワーグナーさんが
「ユウトさん。魔力炉を持っているなら最初からそう言ってください。無限に魔力が使える魔力炉持ちの方の強化に、ギルド魔法の強化では対抗できるものではありません。魔力炉持ちの方は第一、第二試験は免除されるのですよ」
そう言って模擬戦は強制終了させられるのだった。
しかし、今回はお試しで『軽く』やって実力を測るという事になっていたはずだと思い出す。
「あの?まぁ終了なのはわかりましたが、それでどうしたら良いですか?オレが『軽く』戦ってみた感じだと、良くてキントキとトントンぐらいだと思いますが?」
オレの言葉に一瞬反論しようとしたワドルだったが、オレの実力は認めてくれたようでその言葉を飲み込んで、
「あぁ。まぁ君が言うなら本当にそうなんだろう。それなら君がパーティーメンバーと模擬戦してみてくれないか?実力がはかれれば良いんだから」
と提案してくる。
オレは嫌な予感がしてすぐに断ろうとするのだが、
「おぉ!僕もキントキもユウト殿に稽古をつけてもらえるなら嬉しいでござる!」
「えっと……、私もユウトさんなら大丈夫だろうし安心して戦えます!」
「ぶっふっふぅ」
うちのパーティーメンバー達が凄く乗り気になってしまう。
「いや!ちょっと待って!?色々身の危険を感じるんだけど!?特に最後の奴が!!」
オレは最後まで抵抗するのだが、結局メンバーとの総当たり戦が行われることに決まってしまうのだった……。
すると、ワーグナーさんが
「あぁ。すみませぬ。ユウトさん少しお待ちください」
と言って、文様の入ったロープを持った十数人のギルド職員と冒険者に指示を出していく。
ギルド職員や冒険者たちは指示に従いロープに魔力を込めだすと、ロープの先に繋げられている各辺が1mほどの立方体の魔道具に魔力が集められ、光を放ちだす。
オレは念のために『見極めし者』を起動してその力を見極める。
(あぁ。この立方体の魔道具は魔法陣みたいなものか。これは様々強化魔法を組み合わせて効果を飛躍的にアップさせる専用の魔道具っぽいな)
オレがギルド魔法と呼ばれているけど魔道具じゃん!とか心の中で少し突っ込みを入れながら効果を確認していると
「さぁ、準備は整いましたぞ。ユウトさんもよろしいですかな?」
そう確認されたので、大丈夫だと返事をかえす。
ゴールドランク冒険者の二人も
「す、凄いぞ!これならプラチナランク相手でも勝てる!いつでもOKだ!」
「魔力が凄まじく強化されているな……。私もいつでも良いですよ」
と、返事をかえす。
そしてワーグナーさんはオレ達から離れると、残りのギルド職員と結界のような防護魔法で修練場を包み込むといよいよ開始の合図をあげる。
「それでは……模擬戦はじめ!!」
こうして模擬戦の幕はあがったのだった。
~
オレはまずは魔力による能力強化を行い、相手の出方を待つことにする。
すると、オレの態度が恐れて警戒していると勘違いした二人が一気に攻勢に出る。
まずはスキットが自身の得意武器である槍を構えると、すぐさま魔力を纏って突っ込んでくる。
ゴールドランク冒険者がギルド魔法の強化によって数段向上している身体能力は伊達ではなかった。
かき消えるようにオレの前に現れたかと思うと5段突きを放ってくる。
「侮った事を後悔させてやる!」
そう言って放たれた目にもとまらぬ速さの5段突きだったが、オレの権能の力の前には止まって見えるようだった。
全ての突きを紙一重の最小限の動作でかわすと、軽めの魔力撃でスキットの胴に一撃を叩き込む。
ドゴッ!
吹っ飛んだスキットが少し心配だったが、オレの動きが止まるのを待っていたのか今度はワドルがストーンキャノンと呼ばれているこぶし大の石を放つ魔法をマシンガンのように撃ってくる。
ドガガガガガガッ!
しかし、これも紙一重で避けつつワドルの場所を見定めて角度を計算すると、次々打ち返してやる。
「ぐはっ!ぐぼっ!うごっ!べしっ!」
連続で打ち返されたので4発ほどくらって吹っ飛ぶワドル。
それを見ていたグレスが
「あぁ~ぁ。まるで勝負になってないっちな……」
俺っちは模擬戦かなり苦労したのにと愚痴っていたが、まだこれで終わりではなかった。
スキットもワドルも普通なら重傷を負っているような威力の攻撃を受けたのだが、案外ピンピンしており、
「くそっ!まぐれだっ!」
「もう油断せん!次は打ち返せない風属性だ!」
と言って痛みを我慢して立ち上がったのだ。
オレは
「おぉ。ギルド魔法の強化って本当にすごいな。それじゃぁオレも少し本気をだすよ」
と言って魔力炉を起動して、纏う魔力を数段引き上げる。
そして今度はこっちからだと動き出そうとした時、ワーグナーさんが
「な!?魔力炉ですと!?お、お待ちください!」
と驚き声をあげ、スキットとワドルの二人も顔を見合わせると、
「「ま、参りました!!」」
とあっさり降参してしまうのだった。
オレは肩透かしをくらった気分で、
「へ?どういう事ですか?」
と尋ねるのだが、ワーグナーさんが
「ユウトさん。魔力炉を持っているなら最初からそう言ってください。無限に魔力が使える魔力炉持ちの方の強化に、ギルド魔法の強化では対抗できるものではありません。魔力炉持ちの方は第一、第二試験は免除されるのですよ」
そう言って模擬戦は強制終了させられるのだった。
しかし、今回はお試しで『軽く』やって実力を測るという事になっていたはずだと思い出す。
「あの?まぁ終了なのはわかりましたが、それでどうしたら良いですか?オレが『軽く』戦ってみた感じだと、良くてキントキとトントンぐらいだと思いますが?」
オレの言葉に一瞬反論しようとしたワドルだったが、オレの実力は認めてくれたようでその言葉を飲み込んで、
「あぁ。まぁ君が言うなら本当にそうなんだろう。それなら君がパーティーメンバーと模擬戦してみてくれないか?実力がはかれれば良いんだから」
と提案してくる。
オレは嫌な予感がしてすぐに断ろうとするのだが、
「おぉ!僕もキントキもユウト殿に稽古をつけてもらえるなら嬉しいでござる!」
「えっと……、私もユウトさんなら大丈夫だろうし安心して戦えます!」
「ぶっふっふぅ」
うちのパーティーメンバー達が凄く乗り気になってしまう。
「いや!ちょっと待って!?色々身の危険を感じるんだけど!?特に最後の奴が!!」
オレは最後まで抵抗するのだが、結局メンバーとの総当たり戦が行われることに決まってしまうのだった……。
0
お気に入りに追加
1,120
あなたにおすすめの小説
奪われる人生とはお別れします ~婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました~
水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。
それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。
しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。
王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。
でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。
※他サイト様でも連載中です。
◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。
◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。
本当にありがとうございます!
【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜
七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。
ある日突然、兄がそう言った。
魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。
しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。
そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。
ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。
前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。
これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。
※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる