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第三章 追憶と悔恨

【第104話:昇格試験 その3】

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 ゴールドランク冒険者のスキットとワドルを同時に相手にする事になったオレは、名も無きスティックを腰から抜いて構えをとる。
 すると、ワーグナーさんが

「あぁ。すみませぬ。ユウトさん少しお待ちください」

 と言って、文様の入ったロープを持った十数人のギルド職員と冒険者に指示を出していく。
 ギルド職員や冒険者たちは指示に従いロープに魔力を込めだすと、ロープの先に繋げられている各辺が1mほどの立方体の魔道具に魔力が集められ、光を放ちだす。
 オレは念のために『見極めし者』を起動してその力を見極める。

(あぁ。この立方体の魔道具は魔法陣みたいなものか。これは様々強化魔法を組み合わせて効果を飛躍的にアップさせる専用の魔道具っぽいな)

 オレがギルド魔法と呼ばれているけど魔道具じゃん!とか心の中で少し突っ込みを入れながら効果を確認していると

「さぁ、準備は整いましたぞ。ユウトさんもよろしいですかな?」

 そう確認されたので、大丈夫だと返事をかえす。
 ゴールドランク冒険者の二人も

「す、凄いぞ!これならプラチナランク相手でも勝てる!いつでもOKだ!」
「魔力が凄まじく強化されているな……。私もいつでも良いですよ」

 と、返事をかえす。
 そしてワーグナーさんはオレ達から離れると、残りのギルド職員と結界のような防護魔法で修練場を包み込むといよいよ開始の合図をあげる。

「それでは……模擬戦はじめ!!」

 こうして模擬戦の幕はあがったのだった。

 ~

 オレはまずは魔力による能力強化を行い、相手の出方を待つことにする。
 すると、オレの態度が恐れて警戒していると勘違いした二人が一気に攻勢に出る。

 まずはスキットが自身の得意武器である槍を構えると、すぐさま魔力を纏って突っ込んでくる。
 ゴールドランク冒険者がギルド魔法の強化によって数段向上している身体能力は伊達ではなかった。
 かき消えるようにオレの前に現れたかと思うと5段突きを放ってくる。

「侮った事を後悔させてやる!」

 そう言って放たれた目にもとまらぬ速さの5段突きだったが、オレの権能の力の前には止まって見えるようだった。
 全ての突きを紙一重の最小限の動作でかわすと、軽めの魔力撃でスキットの胴に一撃を叩き込む。

 ドゴッ!

 吹っ飛んだスキットが少し心配だったが、オレの動きが止まるのを待っていたのか今度はワドルがストーンキャノンと呼ばれているこぶし大の石を放つ魔法をマシンガンのように撃ってくる。

 ドガガガガガガッ!

 しかし、これも紙一重で避けつつワドルの場所を見定めて角度を計算すると、次々打ち返してやる。

「ぐはっ!ぐぼっ!うごっ!べしっ!」

 連続で打ち返されたので4発ほどくらって吹っ飛ぶワドル。
 それを見ていたグレスが

「あぁ~ぁ。まるで勝負になってないっちな……」

 俺っちは模擬戦かなり苦労したのにと愚痴っていたが、まだこれで終わりではなかった。
 スキットもワドルも普通なら重傷を負っているような威力の攻撃を受けたのだが、案外ピンピンしており、

「くそっ!まぐれだっ!」
「もう油断せん!次は打ち返せない風属性だ!」

 と言って痛みを我慢して立ち上がったのだ。
 オレは

「おぉ。ギルド魔法の強化って本当にすごいな。それじゃぁオレも少し本気をだすよ」

 と言って魔力炉を起動して、纏う魔力を数段引き上げる。
 そして今度はこっちからだと動き出そうとした時、ワーグナーさんが

「な!?魔力炉ですと!?お、お待ちください!」

 と驚き声をあげ、スキットとワドルの二人も顔を見合わせると、

「「ま、参りました!!」」

 とあっさり降参してしまうのだった。
 オレは肩透かしをくらった気分で、

「へ?どういう事ですか?」

 と尋ねるのだが、ワーグナーさんが

「ユウトさん。魔力炉を持っているなら最初からそう言ってください。無限に魔力が使える魔力炉持ちの方の強化に、ギルド魔法の強化では対抗できるものではありません。魔力炉持ちの方は第一、第二試験は免除されるのですよ」

 そう言って模擬戦は強制終了させられるのだった。
 しかし、今回はお試しで『軽く』やって実力を測るという事になっていたはずだと思い出す。

「あの?まぁ終了なのはわかりましたが、それでどうしたら良いですか?オレが『軽く』戦ってみた感じだと、良くてキントキとトントンぐらいだと思いますが?」

 オレの言葉に一瞬反論しようとしたワドルだったが、オレの実力は認めてくれたようでその言葉を飲み込んで、

「あぁ。まぁ君が言うなら本当にそうなんだろう。それなら君がパーティーメンバーと模擬戦してみてくれないか?実力がはかれれば良いんだから」

 と提案してくる。
 オレは嫌な予感がしてすぐに断ろうとするのだが、

「おぉ!僕もキントキもユウト殿に稽古をつけてもらえるなら嬉しいでござる!」
「えっと……、私もユウトさんなら大丈夫だろうし安心して戦えます!」
「ぶっふっふぅ」

 うちのパーティーメンバー達が凄く乗り気になってしまう。

「いや!ちょっと待って!?色々身の危険を感じるんだけど!?特に最後のいっぴきが!!」

 オレは最後まで抵抗するのだが、結局メンバーとの総当たり戦が行われることに決まってしまうのだった……。
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