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第三章 追憶と悔恨

【第103話:昇格試験 その2】

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「それでは早速ですが第一試験の魔力測定をお願いします。魔導具は3つ用意しておりますので、ユウトさん、リリルさん、メイさんの3人からお願いします」

 そう言って握力測定のような形の魔導具をそれぞれが渡される。

「これは握って魔力を込めるだけでいいのですか?」

 リリルが質問すると、担当でついてくれていたギルド職員の女の子が、

「はい。そのバーを握りしめて出来るだけ沢山の魔力を流し込んでみてください。10分以内にメモリを振り切れば合格です」

 と言って興味深そうに魔導具のメモリをのぞき込んでくる。

 そしてリリルが精神を集中して魔力を高めていくと、20秒ほどで

 ピピピピピッ!!

 と針が振り切れてすぐに音が鳴り出す。

「え!?もう!?」

 ギルド職員の女の子は数秒で針を振り切った事に驚き、

「ご、合格です……。リリルさん、凄いですね!」

 と言って合格を告げると、後でサインしてください! とか言っている。

(なんかミーハーな子だな……)

 そんな風に思いながら眺めていると、隣のメイにも職員が魔導具を持ってきて

「じゃぁ、メイさんもお願いします」

 そう言って開始を告げる。
 メイは魔力特化ではないのでリリルよりは時間がかかったが、それでも1分もかからずにアラームが鳴って針を振り切るのだった。

「こ、こんな小さな子が1分もかからずに……。ご、合格です。さすが隣国の皇帝様の推薦があるだけはありますね……」

 そしてようやくオレの番が回ってくるのだが、

「普通は時間がかかるので同時に出来るように3つ用意したのですが、一つで十分でしたね……」

 と言って引き攣った笑みを浮かべながら魔導具を渡してくる。
 オレも適当にハハハと愛想笑いでこたえると、

「じゃぁ、はじめますね~」

 と言って本気で魔力を流し込む。
 そして10秒ほど経過したところで、

 バシュッ!

 という音と共に煙を噴き出して……

 ボンッ!

 と爆発する測定用魔道具……。

「・・・・・・」

 どうやら壊れてしまったようだ……。

「うあぁぁ!ギルド秘蔵の魔道具がぁぁ!」

 その後数分間に渡って絶叫する職員の声がこだまするのだった。

 ~

 しばらくの放心状態の後に復活したギルド職員に

「ご、合格でいいです……」

 と伝えられる。

(なんか扱いが適当になってる気が……)

 そんなやり取りをしていると、オレの後ろでパズとキントキの番が回ってきていた。
 オレは嫌な予感がして振り向くと、今まさにパズが測定器を咥えようとしている姿が目に入る。

「やばい!パズ待ったーー!」

 と叫ぶのだが、パズは

 パクッ!

 と咥えてしまう。そしてパズが咥えるとほぼ同時に

 ボンッ!!

 一瞬で爆発する魔道具……。

 この日、代々オーレンス王国の冒険者ギルドで受け継がれた3つしかない魔道具は、その数を1つに減らしてしまう。

 さすがに3つ用意しておいて良かったですねとは言えなかった。

 ~

 少し騒動はあったがオレ達は全員無事に第一の試験は突破して、次の第二の試験の説明を受けていた。
 説明事態は最初にしてもらった通り模擬戦をやる事になっていて、その補足の説明をうけていた。

「じゃぁ、そのギルド魔法の強化を受けたゴールドランク冒険者の方と試合すれば良いんですね」

 と、オレが確認すると、ワーグナーさんは

「はい。前衛の方は『スキット』さんと後衛の方は『ワドル』さんと戦って頂きます」

 そう言うと、後ろに控えていた二人を紹介してくれた。

「俺がスキットだ。まぁさっきの測定を見てたから見た目で判断はしねぇが、本気でやるから怪我しねぇように気を付けろよ」

 と忠告してくる。そしてもう一人のワドルさんは

「正直女子供相手に気乗りしないが、ギルドからの指名依頼だから悪く思うな」

 と、少しやる気無さそうに挨拶してきた。
 こうしてまずは従魔のパズからという話になったのだが、

「あぁ~ちょっと良いっちか?」

 と静観していたグレスが割って入る。

「グレス様。どうされました?」

 ワーグナーさんが確認すると、グレスは

「最初にパズは絶対やめた方が良いっちよ。パズとやるなら二人同時で、更に残っているシルバーランクを全員サポート役につけるぐらいはした方が良いっち」

 そして、これは本気の忠告だっち と提案する。

「な……そこまでなのですか……?」

 ワーグナーさんもさすがにプラチナランクのグレスから忠告されては無視することが出来ず、

「すみません。失礼ですが『暁の刻』の中で一番実力の低い方はどなたですか?」

 とグレスに質問する。

「ん~。たぶん俺っちだと思うが、試験受けるメンバーの中ではキントキになるんじゃないっちかね?それでも二人がかりの方が良いけど、メイはキントキとの模擬戦で勝ち越してるし、リリルは魔法本気で撃てばこの街吹っ飛ぶし?」

 と恐ろしい事を口にする。
 しばらくグレスの言った事が飲み込めず、時を止めるワーグナーさんとゴールドランク冒険者の二人。
 そして最初に復帰したワーグナーさんが、

「そ、そこまでなのですか!?」

 と目を見開く。
 しかし、スキットとワドルは自分たちが侮られたと勘違いし、

「ちょっと待ってください。いくらグレスさんでも聞き捨てなりませんよ」
「そうだ。オレ達二人がギルド魔法で強化を得て、更に二人で協力すればグレスさんにだって勝てますよ」

 と抗議してくる。
 そしてそこから話が紛糾して先に中々進まなくなりそうだったので、オレは

「じゃぁとりあえず前衛で防御の高い技も使える私がお二人相手に『軽く』戦ってみるって言うのはどうでしょう?それで私が圧倒されるようなら最初の予定通りに進めて貰えれば良いですから」

 と提案する。
 するとグレスも

「あぁ。それが良いっちね。ユウトならまぁ加減も上手くできそうだし」

 と言って、『オレ VS スキット&ワドル』の模擬戦をする事が決定するのだった。
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