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第三章 追憶と悔恨

【第100話:獣人】

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 オレ達は孤児院兼宿屋である『風の宿り木』で清々すがすがしい朝を迎えていた。
 特にオレはベッドに座り、パズを膝に乗せて微睡まどろみながら、

「昨日の晩飯は美味かったなぁ……」

 と、まだ半分寝ながらボーっと思い返していた。
 いや。食事自体は普通の宿とそう変わらないのかもしれない。
 ただ、その味付けが和食に凄く近い味付けだったのだ。

(あの醤油っぽい味付けの魚の煮つけ美味しかったな……)

 そんな事をぼんやり考えパズの頭に涎をたらしそうになっていると、部屋の扉が控え気味にノックされる。

「ユウトさ~ん。起きてます~?朝ですよ~。ご飯出来ましたので準備できたら下まで降りてきてくださ~い」

 と、ユリアさんが朝食の準備ができたと起こしに来てくれていた。
 オレは間一髪の所で涎を吸い込むと、

「じゅるっ、、あ!はい!起きてますよ!すぐ行きますねー!」

 とこたえて立ち上がるのだった。

(危なかった……もう少しでパズとバトルする羽目になる所だった……)

 ~

 オレは1階に降りると既にリリルが座ってハーブティーを飲んでいたので、

「リリル。おはよう」

 と言って自分もセルフサービスのハーブティーをポットから淹れて席に向かう。
 パズはまだ頭の上で寝ていたのだが、匂いが気に入ったようで自分の分も淹れてくれと起きてせがんでくる。

(朝から優雅にハーブティー飲むチワワってどうなんだ……)

 などと思っているとグレスも2階から降りてきたので、3人で先に食事をとりながら今日の予定を確認する事になる。

「それで今日はまずはギルドに行くとして、その後どうしようか?」

 と、オレが何気なく確認すると、グレスが

「昨日も言ったけど、ユウト達は今日たぶん全員ランクがあがるから試験を受ける事になると思うっちよ。だから今日は俺っちは単独で情報収集してくるっち」

 普通はランクあがるって聞いたら凄い喜ぶところっちよ と少し呆れ気味で説明される。

「わかってるよ。だからその試験が終わったらどうしようかってはな「わかってないっちよ!」」

 と食い気味に突っ込まれる。

「普通試験は一日がかりだから、その後はもう晩飯の時間になるっちよ」

「えぇぇ……そんなかかるの~」

 グレスに一日がかりと聞いてオレがげんなりして、やめようかな~とか言ってると、

「その態度は全冒険者に失礼だっち!いいっちか!」

 と言って何故かグレスに食事中ずっと説教や注意を受ける事になるのだった。

 ~

 オレ達はメイが待ってても起きてこないのでリリルに頼んで起こしてきてもらうと、メイとキントキの食事を待ってギルドに向かう。
 宿から少し離れていると聞いていたのだが思ったよりも近く、みんなでゆっくり歩いて15分かからなかった。

「これがこの街のギルドでござるか~」

 とメイがお上りさんのようにキョロキョロしながら入っていくと、グレスも

「じゃぁ、まずはパーティー登録するっちよ。それ終わったら皇国のギルド本部から発行されたその書類見せれば後は教えてくれるっち」

 と言って、メイを追いかけて入ってしまう。
 ちなみにキントキは慣れたもので既に一人で裏の厩舎に向かっている。
 そしてパズはオレの頭の上で気持ちよさそうに寝ていた……。

「じゃぁオレ達も行こうか」

 オレは一緒に取り残されたリリルに話しかけてギルドの扉をくぐると、そこはコルムスの街のギルドとは少し違う光景が広がっていた。

「え?これは予想外の光景だな……」

 そこには朝の混む時間という事もあり沢山の冒険者がいたのだが、その半数近い冒険者の頭とお尻には多様な『耳』と『尻尾』が付いていたのだった。

 ~

 獣人は今までに寄った街でオレもチラホラとは見かけていたのだが、近くで見るのは初めてだった。
 そしてパタ王国などでは獣人は尻尾をしまい、フードや帽子で耳を隠している者が多かったのだ。
 その為、こんなに沢山の獣人がオープンに冒険者としてギルドに集まっている光景を不思議に思い、

「これはまた……なんで冒険者の半分が獣人なんだ?」

 とオレが呟くと、ちょうどグレスが戻ってきていて

「あぁ。それはこの街のそばにあるダンジョンの管理を近くの獣人の村に任せてるからっちよ」

 と説明するのだった。
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