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第三章 追憶と悔恨

【第93話:心機一転】

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 何とかセリミナ様にリリルとメイとキントキにかけられた神の力のろいを解いてもらい、本当の意味でようやく新生『あかつきとき』の活動を開始する。

「はじめまして。グレスさん」
「グレス殿。はじめましてでござる!」
「がぅがぅ!」

 と、二匹と一匹が『はじめまして』と挨拶をする。
 これに対してグレスは、

「ぅう……。は、はじめまして……。グレスと言うっち。一応プラチナ冒険者だっち……」

 と話をあわせて『はじめまして』の挨拶をする。
 少し話した程度だったのだが、『神の力のろい』で記憶から抹消されていたグレスは、

「俺、泣いてもいいっちか?」

 と、オレにそう聞いてくるのだった。

(……頑張れグレス……)

 ~

「それで真面目な話に戻るが、ゼクスの手がかりが途絶えてしまったし、これからどうするかな……」

 とオレが皆に問いかける。
 グレスが不真面目な話でわるかったっちな!と愚痴っていたがスルーしておこう。

「ユウト殿。パズ殿なら匂いで追えるんじゃないでござるか?」

 と、メイが聞いてきた。
 何故かゼクスにはオレの『第三の目』が通用せず情報を掴めなかったので、すっかりパズの鼻の事を忘れてしまっていた。

「それだ!すっかり忘れてたよ!」

 と喜び、オレはメイの頭を撫でてあげる。
 メイはちょっと頬を朱に染めながら嬉しそうに、

「こ、これぐらい余裕です!」

 と『普通に』こたえるのだった。

 ~

「じゃぁパズ!頼むぞ!」

 オレがパズにお願いすると、パズは

「ばぅわぅ!」

 僕に任せておいて!と言って残像を残すような速さでゼクスの匂いを探して崩れ去った遺跡中を駆けまわる。

「パズっち……頼むっちよ……」

 グレスが祈るように呟いていると、

「ばぅ!!」

 見つけた!と、オレに伝えてくる。

「良し!パズがゼクスの匂いを見つけたらしいぞ!」

 オレはそう言ってグレスと喜び合うと、パズの元まで皆で走っていくのだった。

 ~

 パズの元まで移動してみると、そこは例の『何か』があった場所だった。

「……え……?……まさか世界の裏側に戻ってしまったって言うのか?」

 オレは心配になってパズに問いかけると、パズは

「ばふふぅ」

 ユウトの心配性~と言ってきた。

「ち、違うのか?あ。そっちに向かって匂いが続いているって事か」

 と言って、パズの後を追っていく。

「どこに向かっているんでしょう?」
「まぁパズ殿に任せておけば大丈夫でござるよ」

 リリルとメイがそんな会話をしていると、パズがオレに意志を伝えてきた。

「えっと……、パズが言うには草原をあっちに向かってずっと匂いが続いているみたいだ」

 と、オレはパズが伝えてきた内容を皆に伝える。
 すると、グレスが

「さすがパズっち!!」

 と言ってパズを抱きかかえると、頭上高くに掲げてクルクル回って喜ぶのだった。

 ~

 オレ達は草原の少し平らになっているところまで歩いて移動すると、『草原の揺り籠』を呼び出してみんなで乗り込む。
 今回はパズは少し眠たいようで呼び出した馬車ソリの中に入って寝てしまったので、キントキに牽いてもらう事になった。

「キントキ。悪いけど頼むな。さっきパズに確認したらこのまま真っ直ぐオーレンス王国って国に向かえば良いみたいだから」

 オレは『はじまりの森』で特訓中に『第三の目』を使用すればパズだけでなくキントキとも詳細な会話が出来る事に気付いて、キントキとも随分色々話すようになって仲良くなっていた。

「がぅ!」

 キントキはわかったよ! とこたえると馬車ソリを牽いて走り出す。
 そのスピードは中々のものだった。
 どれぐらい中々かと言うと、さっきぶっちぎった騎士団よりも少し早いぐらいだ。

「なんか皆を見ていると俺がちっぽけな存在に思えてくるっち……」

 と、ため息をつくグレスなのだった。
 ~
 こうして3時間ほどキントキに牽かれて走り続けたオレ達は、目の前に街道を見つけるとそこからは街道に沿って進み始める。
 そして更に2時間ほど進んだ時に、

「あ。あれって守りの家かな?」

 と、リリルが遠くに見える建物らしきものを見つけて聞いてくる。
 今度はその問いに対してグレスが、

「そうっちね。俺も何度か泊った事がある場所っち。無事だといいんだけど……」

 とこたえ、一瞬嫌な未来を想像して暗い表情を浮かべる。
 だが、それに気付いたオレは、

「大丈夫だよ。あそこはみんな無事のようだ」

 と権能で覗き見た情報を伝えてあげると、グレスは

「おぉぉ!!本当っちか!嬉しいっち!」

 と今度は飛び跳ねて喜ぶのだった。

「うわっ!こんな狭い所で飛び跳ねるな!」
「嬉しい時は嬉しいって体全身使って表現する事にしてるっちよ!」

 などとじゃれあいながらも、今夜の宿を求めて『守りの家』に向かって進んでいくのだった。
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