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第二章 激動

【第77話:ゲルド皇国の戦い その4】

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 オレが驚愕していたのと同じく、サラッとカミングアウトしたオレの『魔力炉持ち』という言葉に周りも驚愕する事になる。

「おぉぉ!魔力炉持ちなのか!?どうりで!」
「凄いな…シトロン様ときみがいれば、この戦い何とかなるぞ!」
「魔力炉!?これは凄い戦力になる!」

 さっきまで剣呑だった雰囲気は一瞬で霧散し、周りの騎士たちは興奮して騒ぎ出していた。
 しかし、騎士隊長に見える男は、

「私はパタ王国騎士団、大騎士『シトロン』だ。それで『あかつきとき』と言ったか?お前たちはこれから向かう先が、これから起こる戦いが死闘になるというのは理解しているのか?」

 と、真剣な眼差しで聞いてきた。

「もちろん理解しています。先ほどもお伝えしましたが、オレ達は暁の女神様から加護を頂いた者だけで構成されたパーティーです。闇の眷属の侵攻が始まったというのに逃げるわけにはいきません」

 オレも表情を引き締め真剣にこたえ、そして『魔人ゼクス』の情報を発したのも自分たちであることを伝える。

「これは驚いたな。あの情報はお前たちがもたらしたものだったのか」

 そう言って、ようやく信用をしてもらう事ができたのだった。

 ~

 その後、オレは『静穏せいおんの陣』を解除するとパーティーメンバーを騎士団に紹介し、軽い挨拶を済ませる。

「ご、ござるって…」

 何か魔法兵団の人が若干驚いていたが気付かなかったことにしよう…。

(いつの間にかメイのござる調が普通に感じるようになってるな。慣れって恐ろしい…)

 そしてこの先の情報をある程度把握できること、オレ、リリル、パズは遠距離から有効な攻撃手段を持っている事、また接近戦もリリルを除いて全員こなせることなどを説明する。
 パズの強さを説明する時に、パズが自分の小さな胸を逸らして自慢げだったが、ただ小さな可愛い魔物チワワとしか見えなかった。
 なのでパズがこのパーティー最強ですと伝えてもまったく信じてもらえていないようだった。

 ようやく現在持っているお互いの情報を交換し終わると、オレ達も遊撃部隊として騎士団に組み込まれ、まずは陥落させられた『地方都市ミングス』まで移動する事になったのだった。

 ~

 急いでオレ達が出発の準備をしていると、シトロンさんが興味深そうに観察しながら近づいてきて、

「それにしても変わった馬車だな。車輪もなしにこれはどうやって動くんだ?…ん?…って待て…それは何の冗談だ…?」

 『パズ号』こと【神器:草原の揺り篭】をパズに取り付けているのを見てシトロンがジト目で突っ込んでくる。

(シトロンさんもそんな目で突っ込めるんだ…じゃなくて、いやまぁ…そうなるよな。普通…)

 内心そりゃ突っ込まれるよなと納得するが、なんと説明したものかと頭を悩ます。

「えっと…、これはですね……単なる冗談です…」

 何かめんどくさくなってオレは説明を放棄するのだった。

(どうせ騎士団と一緒に行くならキントキに交代してもらおう…)

 とキントキを呼んで交代してもらうのだった。
 パズは凄く不満そうだったが、干し肉あげたら尻尾振ってご機嫌になったからまぁ大丈夫だろう。

 ~

 オレ達は遠くの状況を察知できる能力を買われて、シトロンさんの駆る馬と並走して先頭を走っていた。
 最初は皆この【神器:草原の揺り篭】に驚いていたが、今は一応受け入れてくれたようだ。
 そして1時間ほど走ったところでオレやパズには街がハッキリと見えてくるのだった。
 ~
 城壁は焼け焦げ崩れ落ち、まだ完全に鎮火していないのか、いたるところでまだ燻っていた。
 『第三の目』で街の中を確認するがその状況はとてもひどく、ほぼすべての建物が破壊され、燃やされ、原形を留めているものは何もなかった。
 そして……、生存者は誰もいなかった。
 いや……、その亡骸さえも残っていなかった。

「シトロンさん、やはり生存者は一人もいないようです。街もほとんどが破壊しつくされていてもう街としての復興も厳しいかと思われます……」

 長年争ってきた敵国とはいえオレから伝えられた状況にシトロンさんも苦い表情を浮かべる。

「そうか。あの『ミングス』はもうこの世に存在しないのだな…」

 その呟きがオレに届いた時だった。
 無数の魔物の反応が街の中から現れる。

「な!?やられた!?亡骸すらなかったのはこういう事か!」

 オレが突然御者席から立ちあがらんばかりの勢いで驚き叫んだ声に反応し、

「どうした!」

 シトロンさんが大丈夫かと状況を確認してくる。

「くっ!やられました……罠です!街に近づく者の数に応じて自動的に発動する魔法陣が街の地下に仕掛けられていました!五千を超えるスケルトンソルジャーです!」

 オレは何故先に魔法陣に気付かなかったのかとほぞむのだった。
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