78 / 137
第二章 激動
【第77話:ゲルド皇国の戦い その4】
しおりを挟む
オレが驚愕していたのと同じく、サラッとカミングアウトしたオレの『魔力炉持ち』という言葉に周りも驚愕する事になる。
「おぉぉ!魔力炉持ちなのか!?どうりで!」
「凄いな…シトロン様と君がいれば、この戦い何とかなるぞ!」
「魔力炉!?これは凄い戦力になる!」
さっきまで剣呑だった雰囲気は一瞬で霧散し、周りの騎士たちは興奮して騒ぎ出していた。
しかし、騎士隊長に見える男は、
「私はパタ王国騎士団、大騎士『シトロン』だ。それで『暁の刻』と言ったか?お前たちはこれから向かう先が、これから起こる戦いが死闘になるというのは理解しているのか?」
と、真剣な眼差しで聞いてきた。
「もちろん理解しています。先ほどもお伝えしましたが、オレ達は暁の女神様から加護を頂いた者だけで構成されたパーティーです。闇の眷属の侵攻が始まったというのに逃げるわけにはいきません」
オレも表情を引き締め真剣にこたえ、そして『魔人ゼクス』の情報を発したのも自分たちであることを伝える。
「これは驚いたな。あの情報はお前たちがもたらしたものだったのか」
そう言って、ようやく信用をしてもらう事ができたのだった。
~
その後、オレは『静穏の陣』を解除するとパーティーメンバーを騎士団に紹介し、軽い挨拶を済ませる。
「ご、ござるって…」
何か魔法兵団の人が若干驚いていたが気付かなかったことにしよう…。
(いつの間にかメイのござる調が普通に感じるようになってるな。慣れって恐ろしい…)
そしてこの先の情報をある程度把握できること、オレ、リリル、パズは遠距離から有効な攻撃手段を持っている事、また接近戦もリリルを除いて全員こなせることなどを説明する。
パズの強さを説明する時に、パズが自分の小さな胸を逸らして自慢げだったが、ただ小さな可愛い魔物としか見えなかった。
なのでパズがこのパーティー最強ですと伝えてもまったく信じてもらえていないようだった。
ようやく現在持っているお互いの情報を交換し終わると、オレ達も遊撃部隊として騎士団に組み込まれ、まずは陥落させられた『地方都市ミングス』まで移動する事になったのだった。
~
急いでオレ達が出発の準備をしていると、シトロンさんが興味深そうに観察しながら近づいてきて、
「それにしても変わった馬車だな。車輪もなしにこれはどうやって動くんだ?…ん?…って待て…それは何の冗談だ…?」
『パズ号』こと【神器:草原の揺り篭】をパズに取り付けているのを見てシトロンがジト目で突っ込んでくる。
(シトロンさんもそんな目で突っ込めるんだ…じゃなくて、いやまぁ…そうなるよな。普通…)
内心そりゃ突っ込まれるよなと納得するが、なんと説明したものかと頭を悩ます。
「えっと…、これはですね……単なる冗談です…」
何かめんどくさくなってオレは説明を放棄するのだった。
(どうせ騎士団と一緒に行くならキントキに交代してもらおう…)
とキントキを呼んで交代してもらうのだった。
パズは凄く不満そうだったが、干し肉あげたら尻尾振ってご機嫌になったからまぁ大丈夫だろう。
~
オレ達は遠くの状況を察知できる能力を買われて、シトロンさんの駆る馬と並走して先頭を走っていた。
最初は皆この【神器:草原の揺り篭】に驚いていたが、今は一応受け入れてくれたようだ。
そして1時間ほど走ったところでオレやパズには街がハッキリと見えてくるのだった。
~
城壁は焼け焦げ崩れ落ち、まだ完全に鎮火していないのか、いたるところでまだ燻っていた。
『第三の目』で街の中を確認するがその状況はとてもひどく、ほぼすべての建物が破壊され、燃やされ、原形を留めているものは何もなかった。
そして……、生存者は誰もいなかった。
いや……、その亡骸さえも残っていなかった。
「シトロンさん、やはり生存者は一人もいないようです。街もほとんどが破壊しつくされていてもう街としての復興も厳しいかと思われます……」
長年争ってきた敵国とはいえオレから伝えられた状況にシトロンさんも苦い表情を浮かべる。
「そうか。あの『ミングス』はもうこの世に存在しないのだな…」
その呟きがオレに届いた時だった。
無数の魔物の反応が街の中から現れる。
「な!?やられた!?亡骸すらなかったのはこういう事か!」
オレが突然御者席から立ちあがらんばかりの勢いで驚き叫んだ声に反応し、
「どうした!」
シトロンさんが大丈夫かと状況を確認してくる。
「くっ!やられました……罠です!街に近づく者の数に応じて自動的に発動する魔法陣が街の地下に仕掛けられていました!五千を超えるスケルトンソルジャーです!」
オレは何故先に魔法陣に気付かなかったのかと臍を噛むのだった。
「おぉぉ!魔力炉持ちなのか!?どうりで!」
「凄いな…シトロン様と君がいれば、この戦い何とかなるぞ!」
「魔力炉!?これは凄い戦力になる!」
さっきまで剣呑だった雰囲気は一瞬で霧散し、周りの騎士たちは興奮して騒ぎ出していた。
しかし、騎士隊長に見える男は、
「私はパタ王国騎士団、大騎士『シトロン』だ。それで『暁の刻』と言ったか?お前たちはこれから向かう先が、これから起こる戦いが死闘になるというのは理解しているのか?」
と、真剣な眼差しで聞いてきた。
「もちろん理解しています。先ほどもお伝えしましたが、オレ達は暁の女神様から加護を頂いた者だけで構成されたパーティーです。闇の眷属の侵攻が始まったというのに逃げるわけにはいきません」
オレも表情を引き締め真剣にこたえ、そして『魔人ゼクス』の情報を発したのも自分たちであることを伝える。
「これは驚いたな。あの情報はお前たちがもたらしたものだったのか」
そう言って、ようやく信用をしてもらう事ができたのだった。
~
その後、オレは『静穏の陣』を解除するとパーティーメンバーを騎士団に紹介し、軽い挨拶を済ませる。
「ご、ござるって…」
何か魔法兵団の人が若干驚いていたが気付かなかったことにしよう…。
(いつの間にかメイのござる調が普通に感じるようになってるな。慣れって恐ろしい…)
そしてこの先の情報をある程度把握できること、オレ、リリル、パズは遠距離から有効な攻撃手段を持っている事、また接近戦もリリルを除いて全員こなせることなどを説明する。
パズの強さを説明する時に、パズが自分の小さな胸を逸らして自慢げだったが、ただ小さな可愛い魔物としか見えなかった。
なのでパズがこのパーティー最強ですと伝えてもまったく信じてもらえていないようだった。
ようやく現在持っているお互いの情報を交換し終わると、オレ達も遊撃部隊として騎士団に組み込まれ、まずは陥落させられた『地方都市ミングス』まで移動する事になったのだった。
~
急いでオレ達が出発の準備をしていると、シトロンさんが興味深そうに観察しながら近づいてきて、
「それにしても変わった馬車だな。車輪もなしにこれはどうやって動くんだ?…ん?…って待て…それは何の冗談だ…?」
『パズ号』こと【神器:草原の揺り篭】をパズに取り付けているのを見てシトロンがジト目で突っ込んでくる。
(シトロンさんもそんな目で突っ込めるんだ…じゃなくて、いやまぁ…そうなるよな。普通…)
内心そりゃ突っ込まれるよなと納得するが、なんと説明したものかと頭を悩ます。
「えっと…、これはですね……単なる冗談です…」
何かめんどくさくなってオレは説明を放棄するのだった。
(どうせ騎士団と一緒に行くならキントキに交代してもらおう…)
とキントキを呼んで交代してもらうのだった。
パズは凄く不満そうだったが、干し肉あげたら尻尾振ってご機嫌になったからまぁ大丈夫だろう。
~
オレ達は遠くの状況を察知できる能力を買われて、シトロンさんの駆る馬と並走して先頭を走っていた。
最初は皆この【神器:草原の揺り篭】に驚いていたが、今は一応受け入れてくれたようだ。
そして1時間ほど走ったところでオレやパズには街がハッキリと見えてくるのだった。
~
城壁は焼け焦げ崩れ落ち、まだ完全に鎮火していないのか、いたるところでまだ燻っていた。
『第三の目』で街の中を確認するがその状況はとてもひどく、ほぼすべての建物が破壊され、燃やされ、原形を留めているものは何もなかった。
そして……、生存者は誰もいなかった。
いや……、その亡骸さえも残っていなかった。
「シトロンさん、やはり生存者は一人もいないようです。街もほとんどが破壊しつくされていてもう街としての復興も厳しいかと思われます……」
長年争ってきた敵国とはいえオレから伝えられた状況にシトロンさんも苦い表情を浮かべる。
「そうか。あの『ミングス』はもうこの世に存在しないのだな…」
その呟きがオレに届いた時だった。
無数の魔物の反応が街の中から現れる。
「な!?やられた!?亡骸すらなかったのはこういう事か!」
オレが突然御者席から立ちあがらんばかりの勢いで驚き叫んだ声に反応し、
「どうした!」
シトロンさんが大丈夫かと状況を確認してくる。
「くっ!やられました……罠です!街に近づく者の数に応じて自動的に発動する魔法陣が街の地下に仕掛けられていました!五千を超えるスケルトンソルジャーです!」
オレは何故先に魔法陣に気付かなかったのかと臍を噛むのだった。
0
お気に入りに追加
1,121
あなたにおすすめの小説
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
君は、妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは、婚約中だが、彼は王都に住み、マリアは片田舎で遠いため、会ったことはなかった。でも、ある時、マリアは、妾の子であると、知られる。そんな娘は大事な子息とは、結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして、次の日には、迎えの馬車がやって来た。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう
天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。
侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。
その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。
ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。
どうぞご勝手になさってくださいまし
志波 連
恋愛
政略結婚とはいえ12歳の時から婚約関係にあるローレンティア王国皇太子アマデウスと、ルルーシア・メリディアン侯爵令嬢の仲はいたって上手くいっていた。
辛い教育にもよく耐え、あまり学園にも通学できないルルーシアだったが、幼馴染で親友の侯爵令嬢アリア・ロックスの励まされながら、なんとか最終学年を迎えた。
やっと皇太子妃教育にも目途が立ち、学園に通えるようになったある日、婚約者であるアマデウス皇太子とフロレンシア伯爵家の次女であるサマンサが恋仲であるという噂を耳にする。
アリアに付き添ってもらい、学園の裏庭に向かったルルーシアは二人が仲よくベンチに腰掛け、肩を寄せ合って一冊の本を仲よく見ている姿を目撃する。
風が運んできた「じゃあ今夜、いつものところで」という二人の会話にショックを受けたルルーシアは、早退して父親に訴えた。
しかし元々が政略結婚であるため、婚約の取り消しはできないという言葉に絶望する。
ルルーシアの邸を訪れた皇太子はサマンサを側妃として迎えると告げた。
ショックを受けたルルーシアだったが、家のために耐えることを決意し、皇太子妃となることを受け入れる。
ルルーシアだけを愛しているが、友人であるサマンサを助けたいアマデウスと、アマデウスに愛されていないと思い込んでいるルルーシアは盛大にすれ違っていく。
果たして不器用な二人に幸せな未来は訪れるのだろうか……
他サイトでも公開しています。
R15は保険です。
表紙は写真ACより転載しています。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる