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第二章 激動

【第65話:闇の眷属】

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 メイの叫びに気を引き締めなおし『第三の目』の範囲をもう一度広げていくと、その『おかしい』原因を理解する。

「なるほどね…。今回のボスキャラの登場といった感じか」

 そう呟くオレはすぐに腰のスティックを抜き放ち、一気に聖なる力を行使する。

≪我は『残照ざんしょう優斗ユウト』の名において力を行使する≫
余光よこう武威ぶい

 光の文様がオレの中におさまっていくと、すぐさまその原因に向かって疾駆する。

「はぁぁ!」

 気合いを入れてスティックを振りぬき、光の斬撃を飛ばす。
 しかし…、

 ガギン!

 その斬撃はそこにいた闇の眷属によって防がれる。

「面白い技を使うな。それも加護の力の一つか?」

 そう尋ねてくるその姿は、悪夢から這い出てきた悪魔のような姿をしていた。
 全身を黒い羽根で覆い大きな翼を持つ一見大きな鳥のような形を取っているが、ちゃんと人間のような足があり、長い首の先には歪んだ人の顔を付けている。
 身の丈は2mとちょっとだが翼を広げればその倍はあり、異様で威圧的な容姿をしていたのだった。

 ただ、オレはその姿を知っていた。

「こんばんは。ゼクスさん。お会いできて光栄です」

 と、少しとぼけて挨拶をする。

 オレはセリミナ様に頂いた知識かくかくしかじかの中にあった『闇の眷属大図鑑』から、その名前を知っていた。
 そしてその姿に負けず劣らずの凶悪な数々の逸話も…。

「へぇ~。知らぬ間に俺様も随分有名になったらしいな」

 歪んだ顔を更に歪ませ嫌らしく笑いながらそう答えると、

「まぁでも…とりあえず死んどけよ」

 そう言って羽を一振りすると、無数の黒い羽根を放ってくる。

 ガガガガガッ!

 オレも無数の光の斬撃を飛ばし相殺するが、思っていた以上に厄介そうな相手だと更に気を引き締める。
 何気に放たれた黒い羽根だったが、オレに向かってくる無数の羽根に隠して、後ろにいるリリル達にもちゃっかり攻撃をしかけていたのだ。

「ほぅ。これは本当にやるようだ。普通は見えぬ隠し羽根まで撃ち落とすとはな。まぁだがせっかく集めたこの呪いの力を消滅させるのは惜しいのでな。もらっていくぞ」

 そういうとその場に澱みのように溜まっていた呪いの力を何らかの呪具に取り込んでいく。

(なんだあの呪具は!?あれは不味い!)

 オレは【見極めし者】の力でその危険度を理解すると、何度も放たれる羽根の攻撃をかいくぐって肉薄し、聖なる力の乗った魔力撃を次々と叩き込む。

「させるか!素直に消滅してくれ!」

 ズガガガガァツ!

 武術KALIをベースにしてアレンジしたオリジナルの連撃を次々と叩き込むのだが、いきなり空間が裂けたかと思うと無数の鎖が飛び出してきて全てのオレの攻撃を防いでしまう。

「なんだ!?」

 オレの第三の目でも『空間が裂けた』としかわからず、一瞬隙を作ってしまう。
 すると、

「フフフ。ゼクス様に相手してもらおうなんて1000年早いわよ」

 という声と共に、視界を埋め尽くすほどの闇の鎖が放たれる。
 その新手の猛攻に防戦一方となるオレは、

 ギギギギン!

 なんとか第三の目の力も借りて全ての鎖による攻撃をしのぎ切るのだが、ゼクスが呪具を使った澱みの回収を終えてしまう。

「く!?パズがいないと厳しいか!?」

【見極めし者】でわかってしまうのだが、オレはともかく加護を受けたリリルやメイ、キントキが束になってかかってもゼクスは止められないだろう。

(いや。ここで下手に本気になられても不味いかもしれない…)

 そう思う程にゼクスの力は強大だと理解してしまっていた。

 そしてそのゼクスは一瞬こちらを振り向くと、

「まぁまた今度遊んでやるよ。あと置き土産おいてってやるからそれで我慢しな」

 と言い残し、もう一人の闇の眷属と共に『空間の裂けめ』に消えていくのだった。

「な!?ま、待て!」

 と言って放たれた光の斬撃は空を切り、第三の目でも裂け目の向こう側を見通すことができなかった…。

「これからあんな奴らと戦わないといけないのか…」

 そう呟いた言葉は、むなしく辺りに浸み込んでいくのだった。

 ~
 しかし…、ゆっくり考えている状況ではなかった。

「ユウトさん!?あれは!」

 叫ぶリリルの言葉に、オレは、

「わかってる!あの変異種を先に片づけよう!」

 そう言って、目の前に現れた巨大な影を見据えるのだった。
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