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第一章 Legend Idoru Notes
トップアイドル#2
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闇に包まれた街を駆ける。花音の脚に纏った光が軌跡を残し、さながら流星の様に暗闇を進む。
「きゃあああああああ‼︎」
「口閉じる!」
「は、はいいいい!」
ジェットコースター並みの速度で疾駆する花音の後方。黒い何かの群れはいつの間にか数え切れないほどの大群になっていた。花音の周囲を漂う光の球が迎撃するが、際限なく影の中から現れる黒い何かには効果が無かった。
花音の背後に再び光の球が現れる。黒い何かの数に対抗する様に、光の球は数を増やしていき、目が眩むほどの光量と数にまでなった。
「そんなに構って欲しいならまとめて相手してあげる!」
花音が言い放ったのと同時に、光の球は一斉に黒い何かの大群を迎撃する。波のように押し寄せていた黒い何かの大群との距離が徐々に開いていく。
「花音さん、あれ!」
少女が指差す先には、腹の底を震わせるようなエンジン音をけたたましく鳴らす一台の車があった。深い青で車体が染められ、"爆走夜行"と書かれたギラギラ光る派手なステッカーが貼られている。花音が車の側で立ち止まると、運転席の窓からタバコを咥えた男が顔を出す。黒髪のオールバック、堀の深い整った顔立ちの偉丈夫。クールでニヒルな雰囲気を纏う彼はタバコの煙を吐きながら口を開く。
「おいおい、急に飛んでいったと思ったらとんでもねえ奴ら引き連れてきやがって。トップアイドルってのも大変だな、お嬢」
男は飄々とした口調で言いながら再びタバコを吸う。背後から叫ぶ黒い何かに動じるような素振りもなく、アクセルを踏みエンジンを吹かす。
「龍二、ふざけてる場合じゃないでしょ! とりあえず、この子乗せて逃げるよ!」
「生き残りか? 今まで散々探し回ったってのに、よりによって敵さんがいる街中にいたとわな」
花音は後部座席のドアを開け抱えていた少女を乗せる。状況が飲み込めずにいる少女を気遣うように、龍二と呼ばれた男は語りかける。
「安心しな嬢ちゃん。俺たちもお前さんと同じ生き残りってやつだ。ちょっとばかし揺れるから気いつけろよ!」
少女が返事をする間も無く、龍二はアクセルを力強く踏み込み悲鳴にも似たスケール音を轟かせながら車を急発進させた。加速した際の重力に逆らえず少女は座席に押さえ付けられるような感覚に陥る。
「ひいやあああ!」
「シートベルトは付けとかなあかんで。龍二はんの運転は荒いからなあ」
「へ?」
突然聞こえてくるはんなりとした京都弁の声に驚き、少女は隣の座席に目をやる。そこにはシートベルトを付けた五十センチほどの京人形が座っていた。黒髪のおかっぱ頭のその人形は、何故か花音と似たアイドル衣装を着て少女の顔を無邪気な笑みで見つめている。
「そこにあるやろ? あ、もしかして付け方知らへんの?」
「…………人形が喋ってる!?」
「きゃあああああああ‼︎」
「口閉じる!」
「は、はいいいい!」
ジェットコースター並みの速度で疾駆する花音の後方。黒い何かの群れはいつの間にか数え切れないほどの大群になっていた。花音の周囲を漂う光の球が迎撃するが、際限なく影の中から現れる黒い何かには効果が無かった。
花音の背後に再び光の球が現れる。黒い何かの数に対抗する様に、光の球は数を増やしていき、目が眩むほどの光量と数にまでなった。
「そんなに構って欲しいならまとめて相手してあげる!」
花音が言い放ったのと同時に、光の球は一斉に黒い何かの大群を迎撃する。波のように押し寄せていた黒い何かの大群との距離が徐々に開いていく。
「花音さん、あれ!」
少女が指差す先には、腹の底を震わせるようなエンジン音をけたたましく鳴らす一台の車があった。深い青で車体が染められ、"爆走夜行"と書かれたギラギラ光る派手なステッカーが貼られている。花音が車の側で立ち止まると、運転席の窓からタバコを咥えた男が顔を出す。黒髪のオールバック、堀の深い整った顔立ちの偉丈夫。クールでニヒルな雰囲気を纏う彼はタバコの煙を吐きながら口を開く。
「おいおい、急に飛んでいったと思ったらとんでもねえ奴ら引き連れてきやがって。トップアイドルってのも大変だな、お嬢」
男は飄々とした口調で言いながら再びタバコを吸う。背後から叫ぶ黒い何かに動じるような素振りもなく、アクセルを踏みエンジンを吹かす。
「龍二、ふざけてる場合じゃないでしょ! とりあえず、この子乗せて逃げるよ!」
「生き残りか? 今まで散々探し回ったってのに、よりによって敵さんがいる街中にいたとわな」
花音は後部座席のドアを開け抱えていた少女を乗せる。状況が飲み込めずにいる少女を気遣うように、龍二と呼ばれた男は語りかける。
「安心しな嬢ちゃん。俺たちもお前さんと同じ生き残りってやつだ。ちょっとばかし揺れるから気いつけろよ!」
少女が返事をする間も無く、龍二はアクセルを力強く踏み込み悲鳴にも似たスケール音を轟かせながら車を急発進させた。加速した際の重力に逆らえず少女は座席に押さえ付けられるような感覚に陥る。
「ひいやあああ!」
「シートベルトは付けとかなあかんで。龍二はんの運転は荒いからなあ」
「へ?」
突然聞こえてくるはんなりとした京都弁の声に驚き、少女は隣の座席に目をやる。そこにはシートベルトを付けた五十センチほどの京人形が座っていた。黒髪のおかっぱ頭のその人形は、何故か花音と似たアイドル衣装を着て少女の顔を無邪気な笑みで見つめている。
「そこにあるやろ? あ、もしかして付け方知らへんの?」
「…………人形が喋ってる!?」
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