【完結】アラサーの俺がヒロインの友達に転生?ナイワー

七地潮

文字の大きさ
89 / 109

海の向こうからのお客さん

しおりを挟む

ガチ寝をしていた俺をマリアンヌが起こしに来たのは、夕食の時間だった。
着替えてダイニングへ向かうと、見知らぬ男性達がいた。
もしかして、と思った通り、国境近くに居た人達だった。

「ではカエザルオン諸島連合からいらした方々なのですか?」

食べながらの会話はマナーが良くないので、食事の時は軽い紹介だけで終わった。
詳しくは食事の後サロンでくつろぎながら話を聞く。
もっとも俺が寝ている間に、おじさん達は詳しく聞いていたようだけど。

「ああそのようだ。
南の国を見て回った後、大陸を一周するために東に向かったそうだ。
東の国の国境で攻撃されて西に逃げ
、こちら側の国境砦へ辿り着いたが、また攻撃されるといけないので様子を見ていたそうだよ」
トーマおじさんが説明してくれ、確認するように相手を見ると、頷き話を引き継ぐ。

「初めまして、カエザルオン諸島連合の【悠久の海】で剣士をやっているユムユムの民のミヤミヤムーです」
お?もしかしてファンタジーに付き物の冒険者パーティーですか?

「アーチャーのスックです。
風魔法も使います」
おお?その見た目の感じ、もしやエルフ?

「クラリ、水魔法とダガー使う。
サーチ魔法も使える」
そして双子?

「タンクのアッスルムだ。
誇り高きカムラッカの戦士だ」
わーお、筋肉モリモリ!

「ワシはスルティドのモルターセ、武器の手入れと荷運びが主だが、斧で戦いもする」
このおじさん絶対にドワーフ!

「俺が一応リーダーの秋親(あきちか)で、武器は一応剣かな?
情報収集をするのが役目にもなるんだけど、今回は下手こきましたよ」

この国(いや大陸)には冒険者や冒険者ギルドは無い。
国を外敵(侵略や魔獣)から守るのは軍や兵、領地なら派遣されてくる警備兵や領地を預かる領主が雇う私兵が安全を守る。

ファンタジーによくある傭兵が居ないのは、国か領主または貴族に雇われるから。
国や自分、領地を守るのに信用がないと安心して任せられないから、きちんと身元も調べて正式に契約するから、フリーなイメージの傭兵は存在自体がない。

それに狩人が動物も魔獣も狩るし、軍や兵が討伐もするので、冒険者の出る幕が無い。
だからこの世界には居ないと思っていたけど、他の国には居るんだね。

しかもその冒険者が、この国ではお目にかかったことのない亜人さん達だなんて、テンション上がるよ。
例えエルフが男性でも。

話を聞くと、幾つかのパーティーが船に乗ってこの大陸にやって来て、パーティー毎に東回り、西回り、うちの国を突っ切り北上するルートと分かれてこの大陸を回り、情報収集と交易のチャンスを見つけに来たそうだ。

諸島連合は島々で特徴があり、特産品も多く有るそうなのだけど、島々だけで取引するより、他の大陸へ販売ルートを確保し、外貨を稼ごうと言う試みらしい。
戦争が終わってまだ数十年だから、国を安定させる資金を他所から稼ぐって考えかな。

冒険者の殆どが、戦後生まれの者達で、出身の島や種族の隔たりなくパーティーを組み、復興の手伝いをしたり、漁や狩りをしたり、島から島へ荷運びをしたりしている。
そんな若者達のうち、仕事の取り組みを見て、このパーティーならと選ばれた人達が、今回未知の大陸へ渡っているそうだ。

そして国元を離れるパーティは、男性だけのパーティ限定なんだって。
長旅になるから、女性にはキツイし、そんな長旅にうら若い女性が居たら、周りの若い男性達もある意味キツイだろう。
手を出しちゃいけないのに、船と言う密所で、手が届く範囲で女性が寝起きしたり、風呂に入ったりするんだよ?
個人的には食事風景もある意味エロい……いや、なんでもない、話を戻そう。

冒険者達は勿論他の大陸や、大和の国へも出向いているらしい。
未知の大陸へ向かうなんて、まさに冒険譚だよね。

「東の国は閉鎖的だから、うかつに近寄ると危ないと言うのは、南の国で聞いていたんだけと、まさかいきなり矢を放たれるとは思わなかったよね」

のほほんと言うアキチカに、ミヤミヤムーが突っ込む。
「だからやめようって言ったのに、アキチカが大丈夫って言ったんだよね」
「そうだよ、現地の人がやめた方が良いって言うならやめなきゃだよ」
スックのセリフに頷くクラリ。

「だが、ワシらは東から回れって言われたから、行かないわけにもいかなかったろ」
モルターセが援護をする。
6人の中で一番年上みたいだから、纏め役みたいなものなのかな?

「東の国は気の荒い者が多いから、迂闊に近寄らない方が良いのは本当のことだ。
彼の言う通り、現地の民の言うことは信じるべきだったな」
トーマおじさんの言葉にミヤミヤムーが「だよねー」と笑う。

「だが無事でなによりだ」

続いた言葉にアキチカが礼を言う。
「ありがとうございます。
戦うわけにもいかず、逃げて来たんですけど、森を抜けたと思ったら、立派な砦が有るから、またいきなり仕掛けられたらどうしょうかと…。
敵対する気は無いと青布振ったんだけどね」

「??」

何を言っているのかわからず、首を傾げる俺達。
「え?戦意が無い時って、青旗振らない?」
「いや、そんなことはしないな」
おじさんの言葉に「マジか」と言いながら説明してくれた。

どうやら島から島へ手っ取り早い連絡方法で、手旗信号もどきがあるらしい。
その中で一番簡単な意思疎通が、旗の色だそうだ。


赤ー近寄るな、逃げろ
黄ー状況確認、助けてください
白ー病蔓延
黒ーモンスター大量発生
青ー戦意は無い、降伏します
緑ー平和です


他にも細々とあるらしいけど、大雑把にこんな感じだそうだ。
灯台みたいな感じの【旗振り櫓】が各港に有って、船が近づいたら旗を振り、島の状態を伝える。
そして船からも決まった旗を振る。

例えば流行病で助けてほしいなら、白と黄色、クラスター防止なら、白と赤の旗を振る。

また、旗振り櫓は、敵襲などを島内の民に伝える役目もあるそうで、それは音で伝えるとかなんとか。

「そんな重要なことを他国の民に話して良いのか?」
おじさんが聞くと、アキチカが答える。

「いえ、監視の目が有りますから、島へ近づく前にバレますよと伝えるのも仕事のうちなんですよ。
船から島へ振る旗は四つですから。
その四つを正しく振らないと攻撃されますよ。
うちは復興が終わったばかりだから、他国とあまり揉め事を起こしたく無いんです。
だから、こっそり忍び込もうにも、海は見晴らしいいからバレバレなので、お互い無駄な争いはやめるためにも、ですよ。
情報は秘匿するより、一部公開する方が上手くいく事が多いと頭領の言葉なんですけどね」

なる程である。
おじさん達も頷いている。

興味深い話はまだまだ尽きないようだけど、双子が眠そうにしているのに気付いたマギーおばさんの気遣いにより、今日はここでお開きとなった。






しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

処理中です...