【完結】アラサーの俺がヒロインの友達に転生?ナイワー

七地潮

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そんなバカな

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二人とも椅子に腰掛けたけど、お互いにどう話始めようかと逡巡する。
キュッと唇を噛んで、クリスティーナが先に話し始めた。

「キャシー…少しお伺いしたい事があるの。
プライベートに踏み込んでしまう事ですから、言いたくなければ言わなくてもいいわ」
ん?聞きたい事?聞いて欲しい事じゃなくて?

「………どう言えばいいのかしら……、キャシーは成人後にある儀式の事をご存知ですか?」
………………えええええーーーー?
クリスティーナの実家の話じゃ無いの?
なんでいきなり儀式の話になるの?

思いがけない話を振られ、キョトンとしてしまった俺の反応を、クリスティーナは儀式を知らないから、不思議な顔をしているのだと思ったようだ。

「一般の方々と違って私達貴族は、家の為の結婚をすることがありますよね。
その際に何も知らないままですと、知らない方も、知っている方もお互い不都合が生じて、不幸を招く事があります。
ですから、成人した貴族の義務として、経験のある方に教えをこう、それを【儀式】と呼んでいますのよ」

まるで幼い子に言い聞かせるように、言葉を選んで言ってくれてるけれど、何でこんな話になっているのかわからない俺の混乱は治らない。

その間もクリスティーナが、儀式の重要性を説いている。
実家で聞いた話以外も、実際過去に起こった話も聞かされた。

「クラスの方々も、この休みの間に済ませているようですけれど、……キャシーはお家の方に何か言われませんでしたの?」
いや、ガッチリ聞いたし、キッチリ済ませてますが?

思わず微妙な表情になった俺を、どうとったのか、
「もしかして、何かお考えがあって伝えていないのかもしれませんけれど、キャシーもそろそろ17歳になられますよね?
それまでに済ませていないと、不名誉な噂を流されることがありますの。
ですから差し出がましいですけれど、お伝えさせていただきました。
キャシー、教えを乞う方はいらっしゃいまして?」

俺が色々悪口を言われないように、揚げ足をとられないようにと気を使ってくれているんだろうな。
仲良くなったきっかけも、囲まれて因縁つけられてるところを助けてくれたんだし、最近も王子関係で絡まれてたし。

でもさ、でもさぁ…、中身のおっさんと……いやお兄さんとしては、若い女の子とシモな話したくなかった感が…………。

「あの…クリス、私この休み中に……その………ねぇ……」
「え⁉︎もしかして済まされているの?」
「え⁈」
「え⁈………………全然かわ………」

全然変わってないって言った?
変ってないの?
もしかしてクラスでもまだだって思われてるとか?

えーーー、何とかかんとか精神的ダメージを乗り越えたのに、見えないって?
ショックなんだけど……。

俺がショックを受けている目の前で、クリスティーナも混乱中だ。

「……相手によっては殆ど変化はないのかしら……。
押し付けの相手ならショックが滲み出るでしょうし、好ましい相手なら幸せオーラが出ますし…。
ただの義務としてこなしたのなら、見た目の変化はないのかしら……」
…………きっと心配してくれてるんだろうけど、考えてること全部声に出てるよ……。

でもさ、クリスティーナもあんまり変ってないように見えるんだけど?
「ねぇ、キャシー……、貴女のお相手ってリズヴァーン様なのでしょう?」
「ブッッ!」

いきなりの確信に吹き出しちゃったよ!

「な……なにょ……何を言っ……」
「だって、貴女、あの方のことお好きでしょう?」
「違いますわ!」
「隠さなくても知っていますよ」
ニッコリ微笑まれるけど、確かにキャスティーヌはあいつの事憧れてたけど、でも俺は違う!
って、俺がキャスティーヌか。

「いえ、違うと言いますか、憧れているのであって……
と言いますか、なぜリズヴァーン様が相手だと思われたのですか?」
「ご家族ごとお付き合いがある相手がいらっしゃったら、その方に頼まれるのが一般的でしょう?
キャシーのお兄様のご学友でもありますし、好ましく想っていらっしゃる方ですから、他の方は思いつきませんわ」

頭の回転の良い人って怖い。
隠し事とかできないんじゃないの?
話変えたいし、受けたダメージの少しでも反撃して良いよね?

「クリスのお相手はどなたなのですか?
モースディブス様と交流をされているようですし、あの方のなのですか?」

どうだ、自分のことなら恥ずかしいだろ、俺の衝撃がわかったか。
内心勝ったと思っていたのに、めちゃスルッと返された。

「なぜあの方なのですか?
私はハズール先生に頼みましたわ」
ええ?まさかの教師?

「教師が教え子に手を出しても良いのですか⁉︎」
思わず大声が出ちゃったよ、淫行教師はダメだろう。

「何を驚いているのです?
教えを乞うのですから、身近に相手がいない私には、教師が一番適任だと思いますけど?」

えええーー、エッチを授業の一環みたいに考えてるの?
そんなんじゃないと思うんだけど…。
割り切りすぎな気がするんだけど、

えええええ~~~………。


ショックが過ぎて、その後何を話したか記憶にないし、何よりクリスティーナの家の話を聞くってのはどこに行った?
そんな感じの後期の新学期初日でした。





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