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授業の始まる時間が近かったため、クリスティーナには教室へ戻ってもらい、救護室へと向かったけど、別に体調悪くない。
でも戻るのもなんだし、このままサボろう。
色々記憶のすり合わせもしたいしね。
人目を避け校舎裏の温室へ向かう。
あそこなら温室内の木々で隠れるから、外からは見つかりにくかったはず。
温室の中には小さなデーブルとソファーが二つある。
温室の中の珍しい木々を見ながらお茶をするためだ。
誰がって、主に王子や高位貴族がだ。
ここでは確かヒロインと用務員のフラグ発生イベントがあったはず。
でも用務員ルート未攻略だから、ハッキリとは言えない。
まあ、でも普通に考えると、草木が有る場所なら用務員だよな。
俺には関係ないか。
植物を見ながらソファーに近付いたんだけど、そこに居た先客を発見した俺は回れ右をして、入口へと戻ろうとした。
だが見つかってしまったよ。
「キャスティーヌ嬢か、授業をサボるとは、アルが知ったら嘆くぞ」
濃紺の瞳でこっちをじっと見る男、リズヴァーンだ。
勘弁してよ、教室行く前に会ったばかりだろ。
あんたのルートに行きかけてんだから、なるべく近寄りたくないんだけど。
「あら、リズヴァーン様こそどうなさったの?
私はまだ少し気分が優れないので、温室の植物たちに癒されようかと思いましたの。
リズヴァーン様も授業だと思うのですけど、ここに居てよろしいのですか?」
うん、全部嘘ではないよな?
だって気分が悪いから養護室に向かうことになっているんだけど、そこまでではないから代わりにここに来た。
うん、言い訳に筋が通ってるよね。
「俺は……教室に居たくなかったんだ…」
「あら、何かありましたの?」
こんなガタイのいい、そこそこ立場のある男が虐められてるってこともないだろう。
細マッチョな見た目だけど、成績も良いはずだし、授業が嫌で抜け出したって線も薄いな。
…………まさか……。
「アルが……………………」
小さい声で思わず呟いたのは、キャスティーヌの兄の名。
これはもしかして、あの後兄にキツイこと言われて凹んじゃって、授業どころではなく、気を落ち着かせるため、ここに避難してた、とかいうパターンなのではないのか?
「……お兄様が何か酷いことを言ったのかしら、リズヴァーン様は何も悪くないのに」
先日の事はこの男になんの落ち度もないのに、兄がシスコン過ぎるのだ。
叱られた大型犬みたいになってるよ。
ここは兄のフォローしとかないとね。
「授業をサボったと聞けば、お兄様にまた何か言われるかもしれませんわね。
でしたら、顔色の優れない私を見かけて温室で休ませていた、と言うのはどうかしら」
俺の言葉に俯いていた顔を上げるリズヴァーン。
「その代わり私がサボっていたこともお兄様に内緒にして下さいね」
あの兄にバレるのは面倒臭そうなので避けたいから、口裏を合わせてもらおう。
頷いたリズヴァーンが、向かいのソファーを勧めてきたので腰掛ける。
あー、お茶かなんかあれば良かったな。
自販機なんて便利なもんないし、なんてぼーっと考えてたら、じっとこっちを見るリズヴァーンの視線を感じるのだが…。
…………ん?フラグなんて立ててないよね?
そのままなんとなく気まずい時間を過ごし、教室へと戻って行った。
*****
教室へ戻ると、クリスティーナが心配顔で寄って来る。
うん、ヒロインだけあって可愛いよね。
自分の席で和やかに話してると、近付いて来る赤い影(忍者じゃないよ)
「まぁ、キャスティーヌ様、授業に出られないほど体調がよろしくないとお聞きしましたのに、随分と元気がおありですのね」
「スカーレット様、ご心配おかけしましたでしょうか?
ほんの少しばかり気分が優れなかったのですが、クリスティーナ様のお心遣いで休んでまいりましたの。
先生へは後程私からも謝罪の言葉を伝えて来ますわ」
ライバルの悪役令嬢、スカーレット侯爵令嬢の登場だ。
いじめっこだけど、群れず、日和らず、ハッキリとした性格は好みなんだけど。
それにいじめって言っても、陰険なことしないしね。
ヒロインの攻略相手によってスカーレットの相手も替わるから、ある意味振り回されてるのは彼女なのかも?
「昨日の夜会でも倒れたそうですわね、もしかして何かご病気でも患ってるのではなくって」
「まあ、昨夜のことまでご心配をお掛けしたようですわね、ありがとうございます。
この通りもう大丈夫ですわ」
こう言う返しをすると、それ以上のツッコミができなくなるところも可愛いと思うんだけどねえ。
「そ…それならよろしいのよ。
これからもご自愛くださいませ」
では失礼致しますわと、ライバル退場。
って言っても俺のライバルじゃあないんだけどね。
隣で会話を聞いていたクリスティーナが、眉を下げてこちらを見ている。
「スカーレット様はいつも辛辣ですね。
キャシー、気を悪くしていませんか?」
「あら、全然そんなことありませんわ。
スカーレット様はわざわざ心配して来てくれたのでしょう?
言葉をハッキリ仰るので少しキツく感じますけれど、根は優しい方だと思いますわ」
うん、これは俺の本音だ。
その言葉を聞いたクリスティーナは、感動したように瞳をウルウルさせている。
「キャシーは本当に優しいですわね」
いや、好みの女性を庇いたくなるのは男のサガだと思うよ、うん。
でも戻るのもなんだし、このままサボろう。
色々記憶のすり合わせもしたいしね。
人目を避け校舎裏の温室へ向かう。
あそこなら温室内の木々で隠れるから、外からは見つかりにくかったはず。
温室の中には小さなデーブルとソファーが二つある。
温室の中の珍しい木々を見ながらお茶をするためだ。
誰がって、主に王子や高位貴族がだ。
ここでは確かヒロインと用務員のフラグ発生イベントがあったはず。
でも用務員ルート未攻略だから、ハッキリとは言えない。
まあ、でも普通に考えると、草木が有る場所なら用務員だよな。
俺には関係ないか。
植物を見ながらソファーに近付いたんだけど、そこに居た先客を発見した俺は回れ右をして、入口へと戻ろうとした。
だが見つかってしまったよ。
「キャスティーヌ嬢か、授業をサボるとは、アルが知ったら嘆くぞ」
濃紺の瞳でこっちをじっと見る男、リズヴァーンだ。
勘弁してよ、教室行く前に会ったばかりだろ。
あんたのルートに行きかけてんだから、なるべく近寄りたくないんだけど。
「あら、リズヴァーン様こそどうなさったの?
私はまだ少し気分が優れないので、温室の植物たちに癒されようかと思いましたの。
リズヴァーン様も授業だと思うのですけど、ここに居てよろしいのですか?」
うん、全部嘘ではないよな?
だって気分が悪いから養護室に向かうことになっているんだけど、そこまでではないから代わりにここに来た。
うん、言い訳に筋が通ってるよね。
「俺は……教室に居たくなかったんだ…」
「あら、何かありましたの?」
こんなガタイのいい、そこそこ立場のある男が虐められてるってこともないだろう。
細マッチョな見た目だけど、成績も良いはずだし、授業が嫌で抜け出したって線も薄いな。
…………まさか……。
「アルが……………………」
小さい声で思わず呟いたのは、キャスティーヌの兄の名。
これはもしかして、あの後兄にキツイこと言われて凹んじゃって、授業どころではなく、気を落ち着かせるため、ここに避難してた、とかいうパターンなのではないのか?
「……お兄様が何か酷いことを言ったのかしら、リズヴァーン様は何も悪くないのに」
先日の事はこの男になんの落ち度もないのに、兄がシスコン過ぎるのだ。
叱られた大型犬みたいになってるよ。
ここは兄のフォローしとかないとね。
「授業をサボったと聞けば、お兄様にまた何か言われるかもしれませんわね。
でしたら、顔色の優れない私を見かけて温室で休ませていた、と言うのはどうかしら」
俺の言葉に俯いていた顔を上げるリズヴァーン。
「その代わり私がサボっていたこともお兄様に内緒にして下さいね」
あの兄にバレるのは面倒臭そうなので避けたいから、口裏を合わせてもらおう。
頷いたリズヴァーンが、向かいのソファーを勧めてきたので腰掛ける。
あー、お茶かなんかあれば良かったな。
自販機なんて便利なもんないし、なんてぼーっと考えてたら、じっとこっちを見るリズヴァーンの視線を感じるのだが…。
…………ん?フラグなんて立ててないよね?
そのままなんとなく気まずい時間を過ごし、教室へと戻って行った。
*****
教室へ戻ると、クリスティーナが心配顔で寄って来る。
うん、ヒロインだけあって可愛いよね。
自分の席で和やかに話してると、近付いて来る赤い影(忍者じゃないよ)
「まぁ、キャスティーヌ様、授業に出られないほど体調がよろしくないとお聞きしましたのに、随分と元気がおありですのね」
「スカーレット様、ご心配おかけしましたでしょうか?
ほんの少しばかり気分が優れなかったのですが、クリスティーナ様のお心遣いで休んでまいりましたの。
先生へは後程私からも謝罪の言葉を伝えて来ますわ」
ライバルの悪役令嬢、スカーレット侯爵令嬢の登場だ。
いじめっこだけど、群れず、日和らず、ハッキリとした性格は好みなんだけど。
それにいじめって言っても、陰険なことしないしね。
ヒロインの攻略相手によってスカーレットの相手も替わるから、ある意味振り回されてるのは彼女なのかも?
「昨日の夜会でも倒れたそうですわね、もしかして何かご病気でも患ってるのではなくって」
「まあ、昨夜のことまでご心配をお掛けしたようですわね、ありがとうございます。
この通りもう大丈夫ですわ」
こう言う返しをすると、それ以上のツッコミができなくなるところも可愛いと思うんだけどねえ。
「そ…それならよろしいのよ。
これからもご自愛くださいませ」
では失礼致しますわと、ライバル退場。
って言っても俺のライバルじゃあないんだけどね。
隣で会話を聞いていたクリスティーナが、眉を下げてこちらを見ている。
「スカーレット様はいつも辛辣ですね。
キャシー、気を悪くしていませんか?」
「あら、全然そんなことありませんわ。
スカーレット様はわざわざ心配して来てくれたのでしょう?
言葉をハッキリ仰るので少しキツく感じますけれど、根は優しい方だと思いますわ」
うん、これは俺の本音だ。
その言葉を聞いたクリスティーナは、感動したように瞳をウルウルさせている。
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いや、好みの女性を庇いたくなるのは男のサガだと思うよ、うん。
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