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第五章 問題は尽きないようです
もうさ…救いようがないよな、本当に
しおりを挟む「…………ならば救国の為などではなく、便利に使いたいだけという事なのだな」
「救国?我が居るのに何を救うというのだ?
我が居ることが全ての民の救いである」
「まさしくその通りでございます」
ジン前王の言葉にも相変わらずまともに取り合わない。
「………………承知した、貴殿ら……貴様らには制裁を加えよう」
やっと建て前が終わったか。
「何をおかしなことを言っておる、コイツは」
「制裁だと?それはこちらが加えるものだ。
愚鈍な者共よ、此奴らを殺せ」
ドアの外に向けて声を上げるハゲデブ。
「………………?何をしておる!さっさとしないと報酬は出さないぞ!」
さらに大声をあげるけど、無駄だよ、外に居た奴らもさっき一緒に飛ばしてるんだから。
流石に何かおかしいと思ったのか、今まで余裕たっぷりの態度だった男どもが、顔を見合わせる。
「貴様ら何かしたのか?
下手な事をすると捕らえている魔物を全て殺すぞ」
人質が居るからと幾分かの余裕が残っているね。
「映像の子、映せる?」
『任せて~』
僕の言葉で空中に浮かんだ映像には、通路に倒れている男たちと空の牢が映し出される。
一つの映像には、助け出された魔物の人に、回復の術をかけたり、怪我の治療をしている後方支援のベースの様子が映し出されている。
そしてもう一つはフェンディスへ送った男どもが、髭マロ達に縛り上げられている映像だ。
「なっ!!……」
「理由によっては話し合いで解決するかと思っておったが、これ以上聞きだすことも無いな。
罪を悔いて粛清されるが良い」
その言葉を合図に、騎士団員がベッドの上に居る者どもを抑え込む。
「何をふざけた事を言っておる!
我は栄光あるベルンリグールの皇帝ぞ!
神の血を引く尊き我に何をするというのだ!
不敬である!」
んー、まだ今の状況とか、自分の立場とかわかってないよね、このジジイ。
「ジン様、コイツこの場で殺したいんだけど、そうするとあとあと面倒だから、僕に任せてもらっていいかな」
本来の作戦は話し合いで解決するか、粛清するかだったけど、どうやらこの国の人達って想像以上に面倒そうだから、ちょっと自分の立場をわからせて、国民の前で懺悔してもらった方が、戦争も面倒な事も起きないかな?と思うんだけど。
「…ウチ様には何か考えがあるのですか?」
「改心させようとか思ってないけど、この国の人民も腐ってるかもしれないから、正してやろうかな、とか?」
成功するとは限らないので、曖昧な説明になったけれど、ジン前王は頷いてくれた。
まぁ、失敗しないだろうけどね。
「それでは皇帝は任せます。
他の者はどうしますか?」
「うん、皆に任せていいんじゃないかな。
だって僕でさえ収まりつかないんだから」
特に英雄を貶された血統の二人は、振り向くのも怖いほど殺気が漏れてるし。
「ではあの二人をフジ家へと送ってもらってよろしいですか?
その間に皇帝以外は処理しておきます」
ベッドの上で気を失っている男女は、シーツは汚れているので、窓からカーテンをひっぺがして包まれていた。
「わかりました。
では一旦離れますね」
殺気だっているスイとネイに、意識を失った魔物の男女を抱えてもらい、フジ家の治療室へ移動する。
このままここに置いておくと、確実に命刈り取っちゃいそうだから、敢えての人選です。
魔物の人達に自然治癒の力があっても、ここまで酷いと難しいものがあるから、フジ家へと連れて行き、簡単に説明をして二人を預けてから、ベルンリグールへと戻って来た。
そんなに時間は経っていないけれど、戻った新室内には縛られた皇帝と、それを抑える騎士が3人、そしてジン前王だけが残っていて、他の男どもや騎士団員は居なかった。
場所を移して色々やっているのだろう。
追求はしないよ
それよりも皇帝だ。
縛られて猿轡をかまされてるのに、ウーウーと唸っている。
多分文句を言ってるんだろうね。
何言ってるかわからないけど。
「さて、とっとと終わらせたいからちょっと身体離れるね。
スイ、ネイ、大丈夫だろうけど、僕の身体よろしく」
僕がやろうとしている事、スイにはわかったみたい。
「横になる場所がありませんので、私が抱き抱えていてもよろしいでしょうか」
うん、意識の無い身体を抱き抱えられるのは嫌だけど、色んな汁や血やらなんやらで汚れたベッドに横になりたく無いしね、仕方ない。
「ネイ、そいつ僕の横に連れて来て」
そいつとは勿論皇帝だ。
「こんな者を隣へと置くのはやめていただきたい」
「いや、離れてたら力及ばないかもしれないから」
僕の言葉に不承不承ながら、隣まで連れてくる。
相変わらずウーウー言っててうるさいなぁ。
「ネイ、コイツの意識狩っちゃって、でも殺さないでね」
「殺さなければ良いのですね?」
嬉しそうに笑って指をゴキゴキ鳴らす。
「うん、死ななければ好きにしていいよ」
ほどほどになんて言ってやらない。
殺したいけど、殺しちゃあコイツらと同レベルにやっちゃうから、死ななければオーケーだ。
僕もかなり頭にきてるんだから。
ネイが好きにしている間に、これからする事をジン前王に説明した。
「ウチ様、準備が整いました」
僕の説明が終わるのに合わせたように、ネイから声がかかる。
…うん、かなりやったね。
でも(なんとか)生きてるから大丈夫、うん。
そして僕はスイに抱き抱えられ、意識を浮かせる………。
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