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第五章 問題は尽きないようです
会議でカミングアウト
しおりを挟む翌朝、昨夜の事をスイからカイへ、カイからナチへと、伝えてもらったら、その翌日に皆の前で報告する事となった。
集まったメンバーの前で、妖精達を山脈の向こう側へ連れて行く術を手に入れた事、それを手に入れた経緯などを詳しく話した。
皆やはり「神と対面したのか」と言うので、皆にも神とはどう言う存在かと聞いてみた。
「正義を執行する存在」
「純然たる善」
「罰を与えるもの」
「導き手」
「創造主」
「光の存在」
「祟るもの」
などなど、皆違った答えを返してくれた。
うん、本当に受け取り方次第だね。
皆自分の考えで、自分の受け取りたいように受け取っている。
「話が逸れてしまいすみません。
もう一つ報告する事があって聞いてみたかったのです」
僕は深呼吸をして、力を貸してくれている妖精に、少し離れるようにお願いした。
二人の妖精、影の子と重力の子が離れると、僕の体は透けて、床から浮き上がる。
「!!!!!」
集った皆の視線が集まって、圧力がかかった感じがする。
「ウチ様……そのお姿は…………」
異様なものを見るような視線が痛い。
「何だか僕人間じゃなくなったみたいなんですよね」
しんと静まる室内。
あー、やっぱり気持ち悪いよなぁ。
暫しの沈黙の後、ナチが口を開いた。
「……ウチ様は神になられたのですか?」
「いやいやいや、違う違う!
神になんてなってないよ、ちょっと透けて浮いてるだけで!
神なんてとんでもない、普通の人間です!」
とんでもない誤解だと、慌てて否定するけれど、室内は静まったままだ。
居た堪れずにいると、「ぷっ!」と牧さんが吹き出した。
「祝福受けすぎて浮いてて、水に浮いて、宙にも浮くって、どんだけ浮けば気がすむの!」
可笑しそうに言ってゲラゲラ笑う牧さんに釣られて、あちらこちらから笑いが起こる。
「浮きたくて浮いてんじゃないから!
全部事後承諾なんだから!」
さらに広がる笑い。
そう、僕が望んだり、「こうなるよ」なんて先に言われた事は一度もない。
全てが事後承諾だ。
……まぁ、助かるんだけどね。
笑ったおかげで室内の空気は軽くなったので改めて話が進む。
「ウチ様のおかげで妖精達が山脈を越えられると言う事で、北側でも妖術が使える様になる。
それなら少数精鋭で部隊を組み、攫われている魔物の方を助ける部隊と、ベルンリグールの城へ突入し、目的を暴き、場合により粛清する部隊、主だった行動をするのはその二つで、後は後方の兵站と、情報収集、他国からの横槍を防ぐ為に働きかける人選も必要ですね」
「そうだな、騒ぎを聞きつけて介入してくるのを防ぐ事はすべきだな。
特にフェンディスはしゃしゃり出てきそうだから、要注意だ」
ああ、脳筋国家はしゃしゃり出て来そう。
「フェンディスは力が全てなので、こちらの力を示せば従うのでは?」
「それも考慮に入れるが、まずは話し合いだろう」
「情報収集はトモ家に任せ、兵站はトキ家が指揮をとる、後方部隊にはフジ家の協力もお願いしたい。
オダ家の方々は各部隊に分かれていただく事となる」
聞いてると、英雄家系って、本当に国の為に呼ばれた英雄なんだなと思うの。
役割っての?
そう言ったものがちゃんとあるよね。
「家系だけではなく、妖精の方々の使える術によっても振り分けを考えなければならないのでは?」
「後は無事魔物の方を助け出した後の移動方法も考えておくのが宜しいのでは?
場合により体力が低下している事もあるだろう」
「そうですね、どんな扱いを受けているのかわかりませんから、移動手段も必要になるかと……」
もしかすると五体満足じゃない人もいるかもしれないから、移動手段は絶対必要だよね。
「少しでも早く助け出すためにも、一日も早く出発するべきなのでは?」
「北方の国々は遠いから、親戚筋のドラゴンの方々に乗せてもらえないか訪ねてみよう」
会議は具体的な事も含め、どんどん進んでいく。
その話を聞きながら、僕は頭の中の会話でニヤ達に色々聞いていた。
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