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第五章 問題は尽きないようです
対面
しおりを挟む深く眠らされたのだと思う。
気づくとベッドで寝ている僕を見下ろしていた。
『おーー、幽体離脱~』
ベッドの横では熊澤さんを抱いたスイが、心配そうに僕を見ている。
そのスイの前で手を振ってみたけれど、やっぱり見えてはいないようだ。
『幽体離脱だ、幽体離脱、スゲー』
思わずはしゃいでしまったけど、こんな事してる場合じゃないよな。
『それで?これからどうするの?』
ニヤとピヤは両側から僕の手を握り締め、顔を見合わせうんうんと頷く。
『じゃあ行くの』
『この手を離さないでね』
僕も二人の手をぎゅっと握った……と思ったら、周りの風景が変わった。
『ん?え?』
部屋の中に居たのに、瞬きする間もなく、湖の上に居た。
『おーーーー、テレポーテーション!
幽体離脱に空中浮遊に瞬間移動!
なんなんだこれは!』
思わず浮かれてしまうのも仕方ないよね?
ちょっと落ち着こうと、ゴホンと咳払いをし、周りをよく見てみる。
『うわー…スゲー……』
湖はため息が出るほど美しかった。
水は透明度が高く、深さはあるだろうに湖底がくっきりと見える。
水面は凪いでいて、月明かりに照らされた向こう岸どころか、星空もはっきりと映し出されて、まるで鏡のようだ。
勿論宙に浮いている僕の姿も写っている。
高所恐怖症では無いけど、あまりにキレイに映し出されているので、背筋がゾゾっとする。
『で?ここのどこかにいる人と会えばいいの?』
『…?違うけどそうなの』
相変わらずよくわからん。
『じゃあ行くよ』
ピヤがそう言い、僕を湖の方へ引っ張る。
『ちょーっと待った!
え?湖の中に入るの?
僕泳げないんだけど、溺れるよ』
慌てる僕に、二人がキョトンとする。
『溺れないの』
『とうちゃん中身だけだよ』
………………あ…。
二人に手を引かれ、僕は目をつぶり、湖の中へ入っていった。
*****
湖の中は……精神体だからか、水圧も感じず、それどころか上下左右もわからない。
そっと目を開けるとそこは……どこだ?
夜の湖の中へ入ったはずが、燦々と輝く太陽の下、水の上に浮かんでいる。
水の上だけど、先ほどの湖では無いことは確かだ。
だって周りの景色が違うから。
夜と昼の差だけではなく、見える範囲に岸がない。
海の真ん中にポツリと浮いている感じだ。
本当どこだ、ここは。
それにニヤ達も居ない……。
ここがどこなのか、どうやって戻ればいいのかもわからない。
なのに不思議と恐怖も焦りも感じない。
誰も居ないはずなのに、一人じゃない感じ。
感覚的過ぎて、どう言っていいのかわからないけど、とにかく不安は感じられない。
ただぷかぷかと水に浮いているだけ、そんな時間が何時間か過ぎたのか、それとも時間は経っていないのか、曖昧な感覚の中、声が聞こえてきた。
『初めまして……かな?
ようこそこの場所へ』
耳で聞いているのか、頭に直接響いてくるのか、男の人の声なのか、女性の声なのか……。
全てが曖昧だ。
『この場所ってどこなんですか?』
『さあ?この場所はこの場所でしかないよ』
『あなたはどなたなのですか?』
『さあ?【ボク】は【ボク達】てわ、誰なのかはわかんないね』
『僕は妖精達が山脈を越えても動ける術があると聞いて来たんですけど』
『ああ、そうだね。
あの子達が一生懸命だから教えてあげようと思ったんだ』
『……あなたは賢王の前に現れた神様ですか?』
『賢王?ああ、人の前に現れた彼女とボク達は別だけど同じかな』
『世界に降りてきたと言われる五柱の神々ですか?』
『神?神って何だろうね。
それより君と話がしたくて呼んだんだ。
さあ、話をしようじゃないか』
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