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第五章 問題は尽きないようです
お山越えの策
しおりを挟むその夜自宅の部屋のベッドで寝て居ると、頬をペチペチ叩かれて目を覚ました。
『とうちゃんとうちゃん、起きて~』
『とうちゃん起きるの』
「うーん…何?どうしたの?」
目をこすりながら身体を起こすと、ニヤとピヤがニコニコ笑顔で顔の前にいた。
『あのねあのね、相談したの。
そしたら連れて来いって言われたの』
「相談?会議中に言ってたやつ?」
『連れて来たら良いよって言われたから迎えに来たよ』
「いや、だから誰に言われてどこに行けって言うの?」
『誰に…?わかんないの』
『どこに?僕たちのところだよ』
「僕たちのとこって、湖の事?」
そうそうと頷く二人。
向かう場所はわかったけど、一体誰に言われて迎えに来たんだよ。
「そこに行けば何かあるんだね」
『そうそう。
お山の事を相談したら、とうちゃん連れて来て良いよって言われたの』
『だから行くよ』
要領得ないけど、何か進展する事があるのなら、行かないってわけにはいかないよな。
僕がベッドから降りようとすると、いつもの様に熊澤さんが首に巻きついて来た。
「……熊澤さん連れて行くのは大丈夫なの?」
『ん~~、ダメ?』
『う~ん、ムリなの?』
いや、だから聞かれても……。
僕は熊澤さんを連れてスイの部屋を訪れた。
「スイ、起きてる?」
ノックをすると、中からドアが開き、スイが顔を覗かせる。
「ウチ様、こんな夜更けにどうかされましたか? 」
「もしかしなくても寝てた?
起こしたのならごめん」
「いえ、まだ起きてましたから大丈夫ですよ。
何かありましたか?」
聞いてなんだけど、こんな時間なのに起きてたんだ。
「スイって今起きてる事件知ってるよね?」
スイが頷いたのを見て、今自分でわかってる事をざっと説明する。
「で、どうやら山脈の向こうに妖精達が行けるようになる術(すべ)があるみたいなんで、ちょっと出て来るね。
どれくらいで戻って来れるかわからないけど、心配しないで」
「……お一人で大丈夫なのですか?」
心配そうに聞かれるけれど、
「ニヤ達が一緒だし、この子達が僕を危ない場所に連れて行くわけないから大丈夫。
それと、どうも熊澤さんは連れて行けないみたいだから、お願いしていい?」
「お預かりするのは問題ありませんが………。
目的地までお送りしましょうか?」
近くまで送ってもらって良いのかな?とニヤ達を見ると、ふるふると頭を振っていた。
「何でかわからないけど、ダメみたい」
スイは黙って考え込んでしまったけど、ため息とともに頷いた。
「わかりました。
では私は大人しく待っていますので、くれぐれも無茶をせず、無事に戻って下さい。
熊澤さんは責任を持ってお預かりさせていただきます」
入り口まで見送りを…とスイは言ったけど、ニヤ達に言われて向かった場所は僕の私室だ。
「部屋に戻ってどうするの?」
『んとね、危ないからベッドに横になって』
横になるってもしかして、
「精神だけ連れて行くとか?」
僕の問いかけに、そうそうと頷く二人。
「スイ……どうも中身だけ連れて行って、身体はここに置いて行くみたい」
「大丈夫なのですか?」
不安そうなスイに反して、ニヤ達は自信満々だ。
『あのね、眠りの子に深ーく深ーく眠らせてもらうの。
それで私たちが連れてくの』
ちゃんと戻って来れるんだろうねえ……。
スイに心配かけないよう、頭の中で問いかけると、二人は腰に手を当て胸を張る。
『大丈夫なの。
眠りの子に深く眠らせられたら、眠りの子に起こしてもらうと大丈夫なの。
でも他の人が起こすと危ないの』
大丈夫ちゃうやん!
「……あの…スイ、今から妖術で深く眠って精神だけで行くらしいけど、途中で起こすとヤバイみたいだから、僕が自分で目覚めるまで……眠りの子に起こしてもらうまで、身体の見張りよろしく」
僕の言葉にスイの眉間にシワがよる。
「本当に大丈夫なのですか?」
「まあ、大丈夫だよきっと。
僕はニヤ達を信じてるから」
そう言うと、二人が顔に張り付いて来た。
そして眠りの子を呼んで、僕は深い眠りに入って行く……。
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