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第五章 問題は尽きないようです
対処への方針
しおりを挟む「ハルさん、お聞きしますけど、その召喚は成功したのですか?」
僕が聞くと、ハルさんは報告書に目を通して答えてくれる。
「ほぼ失敗のようですが、何度か成功しているようです。
最初の2回は小鳥が、3回目の成功時は小動物が、4度目の成功時は中型の鳥が喚び出されたようです」
うん、小鳥と小動物って、確実に家に居る2匹が含まれるよね。
「と言う事は失敗していると言う事なのではないのか?
動物では英雄とは言えないだろう」
「妖精王達の話では、本来なら妖精の術と王族の人間の願いで召喚されるそうで、魔法だと力技のようです。
ですから完全には成功していないのかと思われます」
僕はニヤ達に聞いた事を伝える。
「しかしなぜ彼の国は英雄召喚をしようとしているのだ?」
「何か国の危機でもあったのでしょうか」
「そんな話は伝わってきていないぞ」
室内が騒めいていると、牧さんが再びテーブルに拳を打ち付けた。
「国の危機?
もしそうだとしてもそれが魔物を殺していい理由になりますか?
他国に力を借りるなり、それこそラグノルに依頼して喚び出してもらうなり幾らでもやり方はあるでしょう。
他国の民を拐かしてまで、命を犠牲にしてまでやらなければならない事などあるのですか?」
握りしめた拳が震えている。
そんな牧さんを見て、今まで黙って会議を見ていたジン元国王が口を開く。
「ユウ殿の言う通りだな。
もし何らかの理由で英雄召喚をするにせよ、我が国の民を攫って、あまつさえその命をもって召喚する理由がわからない。
理由があったとしても、こんなやり方は認められない……いや、認めてはならない。
この暴挙を看過ごすなど出来ない。
ナチよ、そなたは此度の事、どのように対処する?」
前国王の問いかけに、ナチは目を閉じ考え込む。
暫くの後目を開け、言葉を紡ぐ。
「私情を話す事をお許し下さい。
私としましてはすぐさま彼の国へ宣戦布告を申し立て、これ以上の暴挙を防ぐと共に、未だ囚われている方々を救い出し、彼の国を滅ぼすのも辞さない気持ちです。
……しかしながら、国を護る者としましては、さらに詳しい内情を調べ、証拠を揃えた上で、罪を断罪し、何らかの報復措置を行い、国家間の戦争は避けるべきかと……」
そうだよな、相手を叩き潰したくても、戦争は国民全て巻き込むから避けなきゃならないよな。
それにきちんとした裏を取らないと、逆に揚げ足を取られる事もあるし…。
国を治める立場は私情で動いちゃあいけないし、私情を抑えてでも国を守る事を考えないといけないから大変だよな。
「戦争は避けるべき、それは正しかろう。
……しかし、詳細を調べてその後はなんとするか」
「…………首謀者及び協力者、実行犯には然るべき処罰を」
うん、行った事には責任をもってもらわないとね。
魔物の侵略は元を正せば、侵略して魔物を追いやったのは人間だから、戦わずに話し合いを。
大災害の後の他国の侵略も、同じ被災国でラグノルがいち早く復興し、生活環境を元に戻せたから、復興が及ばず飢えた民を抱える国が、民の為豊かな国を侵略しよとしたのが理由だったから、交渉で戦いを避けた。
けれど、今回の場合そういった大義がない気がするから、ナチの答えは正しく思える。
ジン前王も頷いているし。
戦争は避けるに越した事ないけど、だからと言って何でも許すってのは違うと思うから。
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