【完結】英雄召喚されたのに色々問題発生です【改訂版】

七地潮

文字の大きさ
上 下
125 / 161
第五章 問題は尽きないようです

日本から来た?

しおりを挟む

それは客として来店している国軍の兵士さん達の話から始まった……。

「そう言えば最近、失踪者の探索依頼が多いよな」
「三、四年前からたまに有ったんやけど、ここ最近は本当に多いやな」
「単なる家でなのか、事件なのか」
「ただ単に、思いついて旅行に行ったのやもな」
「んなわけあるかい」

そんなノリツッコミな会話を聞くとなしに聞いていた。


*****


ある日、いつものように、ネイが休みだからと店に来た。

「お邪魔してすみません。
今日はちょっと変わったお土産を持って来ました」

特別な用事が無い限り、この15年間休みのたびに通って来ているのだけど、珍しい物や美味しいものなどが手に入ると、仕事の休憩時間にでも抜け出してくる。

「別にそんなにちょこちょこ、手土産なんて持って来なくてもいいって言ってるでしょ。
別に来店拒否なんてしないから」
もう諦めてるからとは言わないでおこう。

「いえ、本当に珍しいものなんですよ。
トモ家の者が見つけて、オダ家へ献上されたのですが、ウチ様が好きそうですから持って来ました」

献上品の使い回しか。
僕的にはお金を使うより、家にある物を持って来る方が、気を使わなくて済むけど、それを渡したトモ家的にはどうなんだろう。

そっとカウンターの上に置かれた手土産は、50センチ四方程の箱を風呂敷で包んでいる物だ。
中から生き物の気配がする。

「山脈に一番近い国で捕まえたそうです。
初めて見る鳥なのですよ」

言いながら風呂敷を取り外すと、中は竹で作られた鳥籠に入った一羽の鳥……
「え?これって……。
この鳥ってこの世界にも居たの?」
ちょっと驚いたので、思わずネイに詰め寄った。

「いえ、初めて見る鳥です。
ミル様に書物を調べて貰いましたけれど、このような鳥は記録にも無いそうです。
……ウチ様はご存知なのですか?」

籠に近づいてよくよく見ても、やはりこれって…。
「うん、僕の世界の鳥だね。
しかも日本固有種……僕の住んで居た国と、飛んで渡れる近隣の国にしか居ない種だ」

以前に聞いたように、やっぱり日本とのゲートでも有るのかもしれないな。
まさかこの世界でこの鳥を見るなんて…。

不測の事態に動揺している僕の目の前で、籠の中の鳥は澄んだ声で鳴く……。

「ホー…ホケキョ」


実は一、二ヶ月前、町中てセグロセキレイを見かけた気がしたんだ。
しっかり確認しようと近づいたら逃げられたから、きっと似た感じの鳥だろうな、とその時は思ってんだ。

だって、セグロセキレイも日本固有種の鳥なんだから。

こちらの世界にいる訳ないから、見間違いなんだろうなと思ったけど、あれってやっぱり、セグロセキレイで、偶然ゲートでも繋がって、こちらの世界に来たのかな?


一応先輩召喚者に聞いてみようと、まずはキシ家へウグイスを連れて行ったら、どうやら23世紀ではウグイスは絶滅していたらしく、地球の生き物という以上に、
「これがウグイスですか!
映像で見た事はあるけど、本物は素晴らしい!
これは是非標本に……」
大興奮で、何か危ない事言い出したから、逃げました。


フジ家へ連れて行って見たら、
「まさかこちらの世界でこの鳴き声を聞くことができるなんて、思っても見なかった」
と、泣き出した。
何事かと待合室の患者さんがジロジロ見るので、居心地が悪くてこちらも逃げてしまった。


牧さんは……あまり興味無さそうだった。
『リアル鳥はねぇ…。
小さくてモフれないし、鳥以外がいいな。
やっぱりモフってなんぼだよ。
それかせめて擬人化してくれるならこちらも……』

何だか斜めな事を言い出したので、通信を切った。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妖精族を統べる者

暇野無学
ファンタジー
目覚めた時は死の寸前であり、二人の意識が混ざり合う。母親の死後村を捨てて森に入るが、そこで出会ったのが小さな友人達。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで商売をして生計を立てていく〜

西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」 主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。 生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。 その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。 だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。 しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。 そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。 これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。 ※かなり冗長です。 説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界から異世界に召喚された5人の勇者。彼等は同じ高校のクラスメイト同士であり、彼等を召喚したのはバルトロス帝国の3代目の国王だった。彼の話によると現在こちらの世界では魔王軍と呼ばれる組織が世界各地に出現し、数多くの人々に被害を与えている事を伝える。そんな魔王軍に対抗するために帝国に代々伝わる召喚魔法によって異世界から勇者になれる素質を持つ人間を呼びだしたらしいが、たった一人だけ巻き込まれて召喚された人間がいた。 召喚された勇者の中でも小柄であり、他の4人には存在するはずの「女神の加護」と呼ばれる恩恵が存在しなかった。他の勇者に巻き込まれて召喚された「一般人」と判断された彼は魔王軍に対抗できないと見下され、召喚を実行したはずの帝国の人間から追い出される。彼は普通の魔術師ではなく、攻撃魔法は覚えられない「付与魔術師」の職業だったため、この職業の人間は他者を支援するような魔法しか覚えられず、強力な魔法を扱えないため、最初から戦力外と判断されてしまった。 しかし、彼は付与魔術師の本当の力を見抜き、付与魔法を極めて独自の戦闘方法を見出す。後に「聖天魔導士」と名付けられる「霧崎レナ」の物語が始まる―― ※今月は毎日10時に投稿します。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

嫌われ者の皇族姫

shishamo346
ファンタジー
両親に似ていないから、と母親からも、兄たち姉たちから嫌われたシーアは、歳の近い皇族の子どもたちにいじめられ、使用人からも蔑まれ、と酷い扱いをうけていました。それも、叔父である皇帝シオンによって、環境は整えられ、最低限の皇族並の扱いをされるようになったが、まだ、皇族の儀式を通過していないシーアは、使用人の子どもと取り換えられたのでは、と影で悪く言われていた。 家族からも、同じ皇族からも蔑まされたシーアは、皇族の儀式を受けた時、その運命は動き出すこととなります。 なろう、では、皇族姫という話の一つとして更新しています。設定が、なろうで出たものが多いので、初読みではわかりにくいところがあります。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

処理中です...