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第五章 問題は尽きないようです
日本から来た?
しおりを挟むそれは客として来店している国軍の兵士さん達の話から始まった……。
「そう言えば最近、失踪者の探索依頼が多いよな」
「三、四年前からたまに有ったんやけど、ここ最近は本当に多いやな」
「単なる家でなのか、事件なのか」
「ただ単に、思いついて旅行に行ったのやもな」
「んなわけあるかい」
そんなノリツッコミな会話を聞くとなしに聞いていた。
*****
ある日、いつものように、ネイが休みだからと店に来た。
「お邪魔してすみません。
今日はちょっと変わったお土産を持って来ました」
特別な用事が無い限り、この15年間休みのたびに通って来ているのだけど、珍しい物や美味しいものなどが手に入ると、仕事の休憩時間にでも抜け出してくる。
「別にそんなにちょこちょこ、手土産なんて持って来なくてもいいって言ってるでしょ。
別に来店拒否なんてしないから」
もう諦めてるからとは言わないでおこう。
「いえ、本当に珍しいものなんですよ。
トモ家の者が見つけて、オダ家へ献上されたのですが、ウチ様が好きそうですから持って来ました」
献上品の使い回しか。
僕的にはお金を使うより、家にある物を持って来る方が、気を使わなくて済むけど、それを渡したトモ家的にはどうなんだろう。
そっとカウンターの上に置かれた手土産は、50センチ四方程の箱を風呂敷で包んでいる物だ。
中から生き物の気配がする。
「山脈に一番近い国で捕まえたそうです。
初めて見る鳥なのですよ」
言いながら風呂敷を取り外すと、中は竹で作られた鳥籠に入った一羽の鳥……
「え?これって……。
この鳥ってこの世界にも居たの?」
ちょっと驚いたので、思わずネイに詰め寄った。
「いえ、初めて見る鳥です。
ミル様に書物を調べて貰いましたけれど、このような鳥は記録にも無いそうです。
……ウチ様はご存知なのですか?」
籠に近づいてよくよく見ても、やはりこれって…。
「うん、僕の世界の鳥だね。
しかも日本固有種……僕の住んで居た国と、飛んで渡れる近隣の国にしか居ない種だ」
以前に聞いたように、やっぱり日本とのゲートでも有るのかもしれないな。
まさかこの世界でこの鳥を見るなんて…。
不測の事態に動揺している僕の目の前で、籠の中の鳥は澄んだ声で鳴く……。
「ホー…ホケキョ」
実は一、二ヶ月前、町中てセグロセキレイを見かけた気がしたんだ。
しっかり確認しようと近づいたら逃げられたから、きっと似た感じの鳥だろうな、とその時は思ってんだ。
だって、セグロセキレイも日本固有種の鳥なんだから。
こちらの世界にいる訳ないから、見間違いなんだろうなと思ったけど、あれってやっぱり、セグロセキレイで、偶然ゲートでも繋がって、こちらの世界に来たのかな?
一応先輩召喚者に聞いてみようと、まずはキシ家へウグイスを連れて行ったら、どうやら23世紀ではウグイスは絶滅していたらしく、地球の生き物という以上に、
「これがウグイスですか!
映像で見た事はあるけど、本物は素晴らしい!
これは是非標本に……」
大興奮で、何か危ない事言い出したから、逃げました。
フジ家へ連れて行って見たら、
「まさかこちらの世界でこの鳴き声を聞くことができるなんて、思っても見なかった」
と、泣き出した。
何事かと待合室の患者さんがジロジロ見るので、居心地が悪くてこちらも逃げてしまった。
牧さんは……あまり興味無さそうだった。
『リアル鳥はねぇ…。
小さくてモフれないし、鳥以外がいいな。
やっぱりモフってなんぼだよ。
それかせめて擬人化してくれるならこちらも……』
何だか斜めな事を言い出したので、通信を切った。
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