118 / 161
番外編ーこぼれ話集ー
その9 遠い日の思い出
しおりを挟むこんにちは、ニトです。
今日はいい天気です。
今隣には、ボクの黒歴史のスイが居ます。
ボクだけではなく、スイは黒歴史製造機だと思います………。
「キレイなお姉さん!ボクと結婚して下さい!」
俺とスイは幼馴染だ。
俺が8つの頃、母親の元から離れたスイが、トキ家で暮らすため町に行く途中、うちの曽祖父に挨拶に来た時に出会った。
それからの付き合いだ。
両家の初代が仲が良い為、しょっちゅう行き来があったので、顔もよく合わせていた。
俺が14で、スイが11歳かな?
その日は学園の長期休暇で戻って来たので、トキ家に挨拶に行ってたんだけど、その場に同じ英雄家系のフジ家のウルさんが、子供の顔見を見せに来たんだ。
3つか4つくらいの男の子、黒髪だからこの子も後継なんだなあ、とか思いながら、挨拶のためしゃがみこみ、
「こんにちは、俺はニトだよ。
君はなんて名前なのかな?」
ニッコリ笑って問いかけているのに、その子は真っ赤な顔をして、俺の後ろを見上げている。
そして口にしたのが、
「キレイなお姉さん!ボクと結婚して下さい!」
ああ……この子も俺と同じ黒歴史を背負ってしまったな……。
スイは勿論こっぴどく子供の純粋な好意を打ち砕いたよ、容赦なくね。
次の年にはスイも学園へ入学、4年間の学園生活の後、暫く母親の元で暮らし、町に戻ってきたのは17歳になる頃かな。
その頃俺は既に城勤だったんだけど、久々に会う幼馴染にちょっとワクワクしていた。
曾祖父さんに聞いたんだけど、母親の元へ戻っていた理由が【ドラゴンに変態した時の対処の仕方】を教わるためと聞いたからには、是非ともドラゴン体を見せてもらおうと思ったからね。
めちゃくちゃ下手に出て、頼み込んで、何とか見せてもらえる事になり、町外れへと二人で出かけ、そこでドラゴンに変態してもらったんだけど……
「カッコイイ!ドラゴン凄い!
ボクのモノにしたい!
いや、是非ともボクのものになって下さい!!」
久々に見たスイを追いかけて来たイツが大興奮で駆け寄って来て、ドラゴンになったスイの脚にしがみ付く。
子供にも容赦の無いスイは、脚を振り、イツはポーンと飛んで行ってしまった……。
二度あることは三度ある。
イツも大人になって、フジ家の仕事を手伝うべく、薬の研究に余念がない。
自分で調合もするし、他国の書物まで取り寄せて、新薬を開発するべく、色々と学んでもいる。
そんなある年、俺はいつものように書庫に篭っていたんだけど、何だか廊下が騒がしい。
ドアを開けて見てみると、面白い光景が広がっていた。
「お願いしますスイさん!
ボクのお嫁さんになるのがダメなら、せめて薬の為に爪か角かウロコを下さい!
それがダメならボクの旦那さんになって下さい!」
…………いや、イツよ、いい加減諦めろよ。
ほら、襟首掴まれて……スイ、流石に窓から投げ捨てるのはやり過ぎなんじゃないの?
そしてどうして俺は毎回目撃してしまうの?
そりゃあスイの見た目だから、今まで女性と間違えて言い寄る男は多かったよ?俺も間違ったよ?
でもこんな三段階で黒歴史作ったのってお前だけだよ、イツ。
何十年追いかけるんだよ。
運命の人って同性でもアリだし、ある日突然って事もあるけどさ、きっとお前とスイの運命は繋がってないと思うよ。
きっとお前は別の人と繋がってると思うから、いい加減諦めなよ。
そんなイツもやっと運命の人と出会えて、今日めでたく結婚する。
それも相手はお姫様、国を挙げての式だ。
ずっと足蹴にされているのを見てきた俺は、心の底からの祝いの言葉を贈った。
そして付き合わされていたスイにも「お疲れさん」と言葉を贈る。
さて、年下に抜かれた俺達だけど、どこにいるんだろうね、運命の人は。
1
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説


【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

嫌われ者の皇族姫
shishamo346
ファンタジー
両親に似ていないから、と母親からも、兄たち姉たちから嫌われたシーアは、歳の近い皇族の子どもたちにいじめられ、使用人からも蔑まれ、と酷い扱いをうけていました。それも、叔父である皇帝シオンによって、環境は整えられ、最低限の皇族並の扱いをされるようになったが、まだ、皇族の儀式を通過していないシーアは、使用人の子どもと取り換えられたのでは、と影で悪く言われていた。
家族からも、同じ皇族からも蔑まされたシーアは、皇族の儀式を受けた時、その運命は動き出すこととなります。
なろう、では、皇族姫という話の一つとして更新しています。設定が、なろうで出たものが多いので、初読みではわかりにくいところがあります。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
マーベル子爵とサブル侯爵の手から逃げていたイリヤは、なぜか悪女とか毒婦とか呼ばれるようになっていた。そのため、なかなか仕事も決まらない。運よく見つけた求人は家庭教師であるが、仕事先は王城である。
嬉々として王城を訪れると、本当の仕事は聖女の母親役とのこと。一か月前に聖女召喚の儀で召喚された聖女は、生後半年の赤ん坊であり、宰相クライブの養女となっていた。
イリヤは聖女マリアンヌの母親になるためクライブと(契約)結婚をしたが、結婚したその日の夜、彼はイリヤの身体を求めてきて――。
娘の聖女マリアンヌを立派な淑女に育てあげる使命に燃えている契約母イリヤと、そんな彼女が気になっている毒舌宰相クライブのちょっとずれている(契約)結婚、そして聖女マリアンヌの成長の物語。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる