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番外編ーこぼれ話集ー
その9 遠い日の思い出
しおりを挟むこんにちは、ニトです。
今日はいい天気です。
今隣には、ボクの黒歴史のスイが居ます。
ボクだけではなく、スイは黒歴史製造機だと思います………。
「キレイなお姉さん!ボクと結婚して下さい!」
俺とスイは幼馴染だ。
俺が8つの頃、母親の元から離れたスイが、トキ家で暮らすため町に行く途中、うちの曽祖父に挨拶に来た時に出会った。
それからの付き合いだ。
両家の初代が仲が良い為、しょっちゅう行き来があったので、顔もよく合わせていた。
俺が14で、スイが11歳かな?
その日は学園の長期休暇で戻って来たので、トキ家に挨拶に行ってたんだけど、その場に同じ英雄家系のフジ家のウルさんが、子供の顔見を見せに来たんだ。
3つか4つくらいの男の子、黒髪だからこの子も後継なんだなあ、とか思いながら、挨拶のためしゃがみこみ、
「こんにちは、俺はニトだよ。
君はなんて名前なのかな?」
ニッコリ笑って問いかけているのに、その子は真っ赤な顔をして、俺の後ろを見上げている。
そして口にしたのが、
「キレイなお姉さん!ボクと結婚して下さい!」
ああ……この子も俺と同じ黒歴史を背負ってしまったな……。
スイは勿論こっぴどく子供の純粋な好意を打ち砕いたよ、容赦なくね。
次の年にはスイも学園へ入学、4年間の学園生活の後、暫く母親の元で暮らし、町に戻ってきたのは17歳になる頃かな。
その頃俺は既に城勤だったんだけど、久々に会う幼馴染にちょっとワクワクしていた。
曾祖父さんに聞いたんだけど、母親の元へ戻っていた理由が【ドラゴンに変態した時の対処の仕方】を教わるためと聞いたからには、是非ともドラゴン体を見せてもらおうと思ったからね。
めちゃくちゃ下手に出て、頼み込んで、何とか見せてもらえる事になり、町外れへと二人で出かけ、そこでドラゴンに変態してもらったんだけど……
「カッコイイ!ドラゴン凄い!
ボクのモノにしたい!
いや、是非ともボクのものになって下さい!!」
久々に見たスイを追いかけて来たイツが大興奮で駆け寄って来て、ドラゴンになったスイの脚にしがみ付く。
子供にも容赦の無いスイは、脚を振り、イツはポーンと飛んで行ってしまった……。
二度あることは三度ある。
イツも大人になって、フジ家の仕事を手伝うべく、薬の研究に余念がない。
自分で調合もするし、他国の書物まで取り寄せて、新薬を開発するべく、色々と学んでもいる。
そんなある年、俺はいつものように書庫に篭っていたんだけど、何だか廊下が騒がしい。
ドアを開けて見てみると、面白い光景が広がっていた。
「お願いしますスイさん!
ボクのお嫁さんになるのがダメなら、せめて薬の為に爪か角かウロコを下さい!
それがダメならボクの旦那さんになって下さい!」
…………いや、イツよ、いい加減諦めろよ。
ほら、襟首掴まれて……スイ、流石に窓から投げ捨てるのはやり過ぎなんじゃないの?
そしてどうして俺は毎回目撃してしまうの?
そりゃあスイの見た目だから、今まで女性と間違えて言い寄る男は多かったよ?俺も間違ったよ?
でもこんな三段階で黒歴史作ったのってお前だけだよ、イツ。
何十年追いかけるんだよ。
運命の人って同性でもアリだし、ある日突然って事もあるけどさ、きっとお前とスイの運命は繋がってないと思うよ。
きっとお前は別の人と繋がってると思うから、いい加減諦めなよ。
そんなイツもやっと運命の人と出会えて、今日めでたく結婚する。
それも相手はお姫様、国を挙げての式だ。
ずっと足蹴にされているのを見てきた俺は、心の底からの祝いの言葉を贈った。
そして付き合わされていたスイにも「お疲れさん」と言葉を贈る。
さて、年下に抜かれた俺達だけど、どこにいるんだろうね、運命の人は。
応援ありがとうございます!
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