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番外編ーこぼれ話集ー

その1 ニトの初恋

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ボクの名前はマキ・ミル・ニト、この前8歳になったんだ。

ボクのひいひいじいちゃん?は魔物の国の王様……じゃなかったかな?
とにかく一番偉い人なんだって。

ボクはラグノルって国で生まれて、今はお城で働くお父さんとお母さんと一緒に、お城の近くのお家に住んでいるんだよ。

お父さんはひいひいじいちゃんとあまり仲良しじゃないからお留守番だけど、お母さんとボクはたまにひいひいじいちゃんの国へ遊びに行くんだ。
今日も遊びに来てたんだけど、ひいひいじいちゃんの所にお客さんが来ているの。

ボクともよく遊んでくれるヤシおじちゃんだ。
今日も遊んでくれるのかな?
ボクはおじちゃんに走って近付いたんだけど、おじちゃんの向こう側に知らない子が居た。
ボクより小さい女の子だ!

「おーニト、久しぶりだな、今日はうちの子が母親の元から巣立ったからな、爺さんに預けるんだけど、その前にマッキーさんに合わせようと思って連れてきたんだ。
後でお前にも引き合わすつもりだったんだけど、丁度いいや。
ほら、自己紹介できるだろ?
自分で名前言ってみな」

おじちゃんの向こう側に居た女の子、ボクとおんなじ黒い髪の毛だから、えーゆーの血を引く子供だ!

ボクとおんなじな子供は初めて見たのでびっくりだけど、この子すっっっっっごくカワイイ!!
今まで一番カワイイって思ってたミラちゃんよりずっとずっとカワイイ!

この子がボクの【うんめいのひと】ならいいのに。
こんなにドキドキするんだから【うんめいのひと】かもしれない!

その子はボクの前に立つと、ペコって頭を下げて、
「はじめまして、わたくしの名前はスイと言います」
って名前を言った後、横に立つおじちゃんを『これでいい?』って見上げて、おじちゃんがうんって頷いたら、ニコーって笑ったんだ。

もう、もう!めちゃめちゃカワイイ!!

「おじちゃん!ボクこの子と【うんめいのひと】ぜんていでお付き合いさせてください!」

ボクは二つ隣のお家のお兄ちゃんが言っていた言葉をマネして、おじちゃんにお願いしたんだ。
そしたらおじちゃんとカワイイ子はポカンとした後、おじちゃんは笑い出しちゃった。
なんで?

「いやー、若い奴らがそんなこと言うの聞いたことあるけど、スイが良いなら良いぞ。
どうするスイ」

やった!おじちゃんが良いよって言ったから、後はこの子次第…………あれ?なんでこの子震えれるんだろう?
感激したのかな?

「……お…………だ……………」
「なになに、どうしたの?」

小さい声で何か言ってるけど聞こえないから、もっと近づいてミミを傾けた。

「オレは男だーーー!!」

叫び声と一緒にアゴに何かが当たった後の記憶が無い…………。



「いやはははははは!見事なアッパーだったよ!」
「うわっ見たかった~。
でもスイってまだ5つだよな?
流石ドラゴンハーフ?」
「でもあそこまでキレイに吹っ飛ぶとは思わなかったよ」
「いやー、でも騙されるよ、このスイスイの美幼女っぷり!
女の子なら【俺の嫁】に加えたよ」
「そんなこと言ってるとアゴ砕かれますよ」
「…そんなに凄いの?」
「さっきは手加減してたから。
ここに来る途中乗合馬車でお尻触ったオーガ半殺しにしたから」
「5歳でオーガ半殺しとか、草生えるわ~、大草原だわ~」
「おっ、目が覚めたかニト」
「ニト……プブプ…大丈夫か?アゴと失恋の傷は」

申し訳なさそうなおじちゃんと、笑いをこらえるひいひいじいちゃん、そしてすまし顔のカワイイ女の子……じゃなくて、強い男の子…。


脳裏から消し去りたい俺の黒歴史の第一幕だ……。





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