【完結】英雄召喚されたのに色々問題発生です【改訂版】

七地潮

文字の大きさ
上 下
109 / 161
第四章 そしてこれから

大円団?いや、とりまの終わり

しおりを挟む

「いやー、何だか凄いよね、あの人」
翌日、城下町へお昼ご飯を食べに行くのに付き添ってくれているニトに話しかける。

「あー、イツな。
アイツは昔からあんなだぞ。
今のウチより小さい頃に、スイに会って一目惚れ。
カイ王子くらいの頃にドラゴン姿を見て二目惚れ。
成人後にドラゴンの角や爪やウロコなんかが、希少な薬の素になるって知って三度惚れ」
「運命の人なのかな?」

それだけ執心してるなら、そうなのかな?と思ったんだけど、

「いや、違うだろ。
小さい頃は見た目で、物心ついた後は知的好奇心だと思うぞ。
まぁ、アイツの運命の人がイツだと面白いけどな」

そう言った後、
「いや、やっぱりダメだ。
イツは最近まで俺との仲を疑ってて、随分厄介に突っ掛かれたから、幸せを願ってやる事なんて出来ないな」
と、首を振る。

「ニト……心が狭いんじゃない?」
僕が言うと、隣を歩いていたニトがしゃがみ込み、視線を合わせて真剣な顔で言う。

「お前さ、昨日アイツに突っ掛かれたんだろ?
あれが二十年以上続いてみな」
想像するまでもなく、げんなりするな、それは。

「前言撤回させていただきます」
「わかれば宜しい」
立ち上がるついでに抱っこされてしまった。

「でも、運命の人って同性もアリなんだ?」
子孫を残す為の運命的なモノなんじゃないんだ。

「そりゃそうさ、種族さえ超えるんだから、性別なんて小さい事だろ」
まぁ、種族が違うのに子供が出来るって事考えると、性別くらい小さな事……なのか?
でも僕は女の子が良いなぁ。

なんで事を抱っこされたまま考えてると、強い視線を感じて、ぶるっと震えてしまった。
同じく震えるニト。

「…………………………」
「…………お前も大変だなぁ」
視線の元は、護衛について来たネイだ。
「何がそんなに気に入ったんだ?
視線合わせるなら、スイだってワンコ副団長だって居るんだろ?」
小声で聞くと、ニトも小声で返してくる。

「スイの場合、上位種に対する服従って言うか、敬意だろうし、ワンコ……リイに対しては、アレは誰に対してもあんな感じだから、ペット感覚?
と言うか、やっぱり部下は部下だろ。
そこいくとお前は上でも下でもない立ち位置で居られるから……とかじゃないの?
まぁ、立ち位置は対等でも、立った視線の位置は全然違うけとね」
最後の一言余分だよ。

うーん、スイだと気分的に上司?ワンコ副団長だと、部下だから、上下関係が無い分いいって事なのかな?

でもさ、でも……何だかなぁ。
ネイが女の人なら嬉しかった気が……。

「案外ネイの運命の人かもね」
「いや、いくらバツイチと言っても、僕は女の子が良いから、BLは要らないから」
「バツイチ?BL?今度曾祖父さんに聞いてみよう」

何だかメンタルダメージを受けてしまった。

抱っこされたままうなだれて居ると、ニヤリと嫌な笑い方をするニト。

「あ~あ、腕が疲れて来たかな、誰か抱っこ変わってくれないかなぁ~」
「ちょっ!」
めちゃくちゃワザとらしく言うと、ススススとネイが近寄って来て、手を差し出す。

「私が変わりましょう」

ああ……めっちゃ良い笑顔だ…。
ニトめ、覚えてろよ!
と思いながら、ニコニコ笑顔のネイに抱っこされたまま城へ、しかも部屋まで運ばれた……。

こんな時は、熊澤さんに癒してもらおう……………。


*****


それから五日後、受け入れの準備が整ったと言う事で、いよいよ城を出て行くことになった。

この五日の間、城で仲良くなった人や、王妃様達への挨拶は順に済ませておいた。

出発の時は、特に仲の良くなった庭師の人達と、厨房の人達がわざわざ見送りに来てくれた。
勿論王様や宰相さん、ニト達やら八兵衛さんもで、なんだかんだで賑やかな出発となった。

「近いのだからいつでも城へ遊びに来てくれ」
「はい、妖精達との通訳が必要な時は、いつでも呼んで下さい」
一番のお仕事なのですからね。

「まぁ、近いし、買い物とかでもちょくちょく行くわ」
「仕事に差し障りのない程度でね」
ニトの言葉に返しているとネイが、
「私もお邪魔させていただいて宜しいでしょうか…」

「ハイオマチシテオリマスー」
そう返すしかない僕に、苦笑いを浮かべるラトさん。
息子さんを止めようよー。

「じゃあそろそろ行きますか」
トキ家からの迎えは、オールバックに髪を纏め、三つ揃いのスーツを着た秋彦さんだ。

「正装だからね」
とウインク。
いつも乗っていた馬車ではなく、トキ家の馬車へ乗り込み、トキ家へ向けて出発だ。

召喚されて、色々問題発生したけど、落ち着く場所も決まったし、これからこの世界で楽しみながら生きていこう。





ーーーーー〈切り取り線〉ーーーーー

前半はここでお終いですけど、番外編を挟んで、後半が始まります。

番外編は、ウチ以外のお話しとなります。

後半は、R15な部分もありますけど、よろしければ最後までお付き合いください。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妖精族を統べる者

暇野無学
ファンタジー
目覚めた時は死の寸前であり、二人の意識が混ざり合う。母親の死後村を捨てて森に入るが、そこで出会ったのが小さな友人達。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

嫌われ者の皇族姫

shishamo346
ファンタジー
両親に似ていないから、と母親からも、兄たち姉たちから嫌われたシーアは、歳の近い皇族の子どもたちにいじめられ、使用人からも蔑まれ、と酷い扱いをうけていました。それも、叔父である皇帝シオンによって、環境は整えられ、最低限の皇族並の扱いをされるようになったが、まだ、皇族の儀式を通過していないシーアは、使用人の子どもと取り換えられたのでは、と影で悪く言われていた。 家族からも、同じ皇族からも蔑まされたシーアは、皇族の儀式を受けた時、その運命は動き出すこととなります。 なろう、では、皇族姫という話の一つとして更新しています。設定が、なろうで出たものが多いので、初読みではわかりにくいところがあります。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

処理中です...