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第四章 そしてこれから
賢者の意思を伝える石
しおりを挟む問われるままに答えていると、暫しの沈黙が訪れた。
自分に問いかけてきたものは何なのだろうと思っていると、再び意思が伝わってきた。
『理想を語る者よ、良かろう。
我が眷属の力を貸そう。
汝と汝の国民の幾人かに妖精を遣わそう。
妖精の術と寿命を受け取るが良い。
魔物と共存すると言うのなら、魔物と添い遂げる事も許そう。
人と魔物で思うままの国を作るが良い。
妖精を住まわす事により、異なる世界より窮地を救う者を喚び出す事を許そう。
人と魔物と異世界の者とで力を合わせるが良い。
そなたの国に害なす者をその地に根付かせぬ加護を与えよう。
そなたの国の民が末永くその地にあるように、全ての民に心の繋がる伴侶を与える事にしよう。
そなたにも良き出会いがある。
そなたと、その子孫がこの国を治めていくが良い。
我はそなたとそなたの国に複数の加護を与えよう。
但し、国を治める者は必ず人とする事。
人が治め、魔物との架け橋となる事。
そなたの子孫が意思を背かぬ限り、我の加護は続く事を約束しよう。
そして、多くのものが心安らかに過ごせる国になる様に努めよ』
……あなたは神なのですか?
『我は世界を見守るもの。
正しくあろうとする者に加護を与えしもの』
…私は正しいのでしょうか?
もしかするとただのエゴなのではないのでしょうか?
『正しいかそうでないかを決めるのは後の世の者。
我は今のそなたの想いに加護を与えよう。
そなたの願いが後(のち)に正しく伝わるよう、記録の石を授けよう』
……ありがとうございます。
いただいた加護に恥じぬ様、私の出来る事を成したいと思います。
見守っていてください。
『ラグノルに祝福を』
光は消え、元の場所へ戻ってきた。
今のが夢でない証拠に、手の中には卵ほどの仄かに暖かな石があり、周りに小さな魔物……妖精がふわふわと漂っている。
「私は神に会ったのか?」
信じられない事ではあるが、現実なのだと理解し、私はこの記録の石に今の出来事を、忘れないうちに刻んでおく。
数多き祝福を授かった国が、長きに渡り良き国となるように。
そして、私の子や子孫に、この出来事を、この国のあり方を忘れない様に、願いを込めて……】
*****
その後、召喚する事を家臣に伝えて一悶着、召喚して一悶着、賛同できない人々は国を出て行って、祝福を受けた王様、タシ・テス・ヤカは、当時の妖精王と女王の祝福で、二百年近く生きていたみたいだ。
その間に子供や孫、曽孫の方が先に寿命を迎えたのが、とても辛かったと。
そりゃあそうだろうな。
でも、ヤカ王の生きている間に、魔物との共存が確たるものになったのは、喜ばしい事だったとある。
王としては凄い事を成し遂げたのだろうけど、身内の死を二百年近く見てきたのはキツイだろうな。
王の奥さんは国の事、民の事を考える、とても良い王妃だったそうだ。
けれど、祝福を受けていない人間だったので、早くに亡くなったそうだから、余計に辛かったろう。
そう考えると祝福を受けた人は、同じく祝福持ちか、魔物と一緒にならないと、寂しい老後どころでなく、人生の大半を一人で過ごす事に……。
その上、子供や孫の王達が、亡くなる前にヤカ王に、
「先に逝きます」
的なメッセージ残してるって……僕なら心折れそう。
そんなヤカ王を支えたのが、召喚された英雄達と妖精、そしてどんどん明るい笑顔になる国民だったそうだ。
強い意思を持ってないと、途中で挫けそうだよなぁ。
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