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第三章 異世界の馬車窓から
初代様の記録〜終〜
しおりを挟むそうこうしているうち月日は過ぎ、妖供は南の地で国を作る。
小競り合いをしつつも心を交わした者共は、一部この地へと残る事となった様だ。
円満と迄はいかずとも、言葉を交わす毎に隔たりは薄くなっておる。
「最初からこうなると言う道は無かったのでしょうか」
我の隣に立つ敵大将…魔王が漏らす。
「全てが初めから上手くいくものではなかろう。
良かれと思えど間違う事は多々ある。
全てのものは失敗して然り。
それに気づきその後どうするかは其々。
我はこの国が、ここの主君が気に入った。
これより先良き国となるであろう。
無論其方の英断も良い」
我が告げると小さく笑う。
ふむ…是非も非ず……。
数年の後此奴と所帯を持つこととなるとは思わなんだがな。
人と妖…魔物は所帯を持ち、間に生まれた子は増えて行く。
小さき者…妖精の祝福を受けし人は、魔物と変わらぬ寿命を持ち、永らく添い遂げる。
最早見た目や寿命で二つの種族を分けて考える事は愚かなり。
そして王の言う【祝福】とやらの力で、姦通する者、他者を貶める者、盗む者など、国の害となる者はこの地に居つく事は無く、和やかな月日は過ぎる。
永の寿命を受けども、人はいつかは儚くなる。
共にこの世へ来た者は一人二人と先に逝ってしもうた。
その後、天変地異で未曾有の飢饉に襲われし時、当時の王が再び日の本より人を招く。
飢饉を乗り切りし後、他国よりの侵略の際、三度(みたび)招くが、国の為と言い、安易に頼り過ぎる。
確かに我の居た日の本に優秀な者が多数居るやも知れぬが、この国の問題を他者に任すは非なる事。
国境(くにざかい)の尾張より城へ赴き、召喚術を禁術とする事を申し述べる。
人と魔物と妖精とで力を合わせれば、成せぬ事など数少ない。
国の事は国で解決するが人の義であるべき。
我はこの義を王に誓わせる。
永らく生きて来たが、そろそろ我も迎えが来る様だ。
奥も一緒に逝く様だが、心残りは我に連れ添っていた妖精の事だ。
主人が亡くなるとあ奴らも消える。
どうやらあ奴ら自身に寿命は無いようだ。
主人の死があ奴らの寿命なのだとすると、我の死後も生き延びて欲しいと言うのは無理なのだろうか。
会話は出来ぬが我の考えは読めておろう。
我の代わりにこの国の行く末を見守ってくれる事を願う。
出来事を書き残せと言われたが、城で見かけたこの【記録の石】なる物に我の記憶を残す事とす。
これを見た後の者が、祖の過ちを繰り返さぬよう、あの甘くも偉大な男の遺志を違わぬよう頼みたいものだ。
そして願わくば、我等の子孫に恒久なる安寧を……。
*****
「うぉー!何だこれ!大河か?
長編スペクトルムービーか⁉︎
信長って残虐非道な人物じゃ無かったのか⁈
っつーかカッケーー‼︎」
石から手を離した僕は大興奮だよ!
臨場感溢れる3D映画みたいだったよ!見応え充分だったよ!
は~~面白かった。
ん?
一緒に見ていたスイとニトは僕と違って静かだ。
「やはり初代様達って凄いなあ」
「ええ、今の私達が平和に暮らせてるのは賢王と初代様のお陰ですね」
おお、この世界の当事者だから感慨深いのか。
それに対して僕は別世界の出来事で、完全第三者目線だから実感もなく、物語として見てたから面白かったとしか思わないのか。
うん、立ち位置が違うと同じ物でも受け取り方は変わるもんだね。
「…しかしこうして過去を見てみると、やはり今回の王子達のしでかした事は、初代様の思惑にも反する一大事項ですね」
「そうだなぁ、やらかしただけで済ませて良いもんじゃ無いのかも知れないな」
……あ!僕も当事者か!
と言うのか、被害者?
「でもさ、親の事を思った子供のやらかした事だし、あのまま死んじゃうより、こうして生きている方が良いし……ほら、スイやニトにも出会えたんだし!
今回の事はノーカンって言うか、忘れよう?ね?」
被害者の僕が言うんだから、納得出来ないまでも、引いてもらおう。
僕の必死の説得に二人は不穏な空気を収めてくれた。
ーーーーー〈切り取り線〉ーーーーー
懺悔の時間です。
はい、ご想像の通り、この部分を書きたいが為に書いたといっても過言ではありません。
信長好き過ぎて、かといってガチな歴史物など書ける訳もなく、転生信長のや転移信長は沢山あるので、あくまでも【過去の偉人】として書かせていただきました。
もう、楽しくて楽しくて。
でも主人公はウチなので、話はまだまだ続きます。
よろしければお付き合いお願いします。
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