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第三章 異世界の馬車窓から
運命の人って…
しおりを挟む運命の人とか、運命の赤い糸とか、イメージ的な物でなく、この世界ではもっと具体的な何かがあるのか?
「そうですね、この国独特のものではありますね」
ハルさんの説明によると、他の国では、王族や地位の高い人が、第二夫人や、第三夫人、それ以外にも愛妾などを持つのは普通にあるそうだ。
特に王様だと、後継は必須なので、優秀な子を作る為にも、沢山の子を持つ事が義務と言っていい。
そして起こる後継者争いは、もうあって当たり前、寧ろ無いわけないじゃん?って感じなんだって。
そしてここ、ラグノルでも、建国後暫くして後継者争いで、国が揺れた時代もあったとか。
でも、全てが変わったのが500年前、そう、初めて異世界召喚をした【賢王】とも【神に愛されし王】とも言われる国王、タシ・テス・ヤカの統治の時代だそうだ。
「その頃の詳しい事は、城で記録を見る方が宜しいかと思います。
その時に色々あって、この国は祝福を受けたそうですよ。
その一つとして誰もが皆【運命の人】と出会えるようになったそうです。
但し、運命の人は一度に一人ですが、生涯を通して一人だとは限らないようです。
また、出会ってすぐにそれとわかる場合と、元々の顔見知りが時を経て、然るのちに自分の相手だと気づく場合もあるそうです。
または、出会った時は相手に別の運命の人が居ても、後々その相手が独り身になった後で自分と結ばれるという事もあるとか」
レンさんがそんな事言ってたけど、もっとふんわりとした、概念って言うか、そんなもんだと思っていたけど……うーむ、混乱する!結局運命の人って何?
「魔物の方は【番(つがい)】と言う言葉を使うそうです」
あー成る程、なんだかイメージがはっきりしてきた。
感覚的ではあるけど。
「その運命の人とか言うのは気持ち的なものなんですよね?
この人だけ!とか、この人は自分の生涯の相手だ!とか」
何とは無しに聞いてみたら、ハルさんは気まずそうな苦笑いを浮かべて答える。
「ウチ様は確か実際の年齢はそれなりでしたよね……。
少し言いにくいですけれど、肉体的にも関係してくるのですよ。
その……何というか…気持ち良くないと言うか、違和感を感じるといいますか…………。
人によっては運命の人以外だと使い物にならない場合もあるそうですよ」
え?何?●たなかったりするの?
【運命の人】何てロマンチックな響きの癖に、そんな下ネタチックな事も含んでんの?!
「トモ家の始祖も、他国への密偵の為に、この世界の人との間に沢山子供を作って、色んな国へ忍び込ませようとしたそうですけれど、その……役に立たなくて…。
運命の相手が先にお亡くなりになった後で、人との間に幾人かのお子をもうけたそうです」
あー、それであんな家訓になったんだ。
「他国へ忍び込むのにハーフだと直ぐにラグノルの関係者だとバレますからね。
黒髪もこの世界には私達召喚者しか居ませんので、黒髪の後継はこの地で情報を纏める役を、ハーフの者は城で下働きや、町の発展の為に尽くしております」
運命人と言い、忍と言い、目からウロコな話を立て続けに聞いて、思考回路ショート寸前の僕は
「へーーー」
としか返す事が出来なかった。
そうか、EDになるのか、そうなんだ……いやはや、この世界に来て一番の衝撃的な話だ。
まぁ、自分に関係してくるのはずーっと、ずーっと先だけど……そうなんだ……………。
その日の夜は悪夢にうなされました。
*****
「ウチ様、どうかされましたか?」
「何だウチ、元気ないなぁ」
こーんなイケメンや色男なのに、もしかしてニトもスイも【魔法使い】だったりするのか?
いや、まさかだよな。
役に立たないわけではないっていってたから。
でも、もしかして60歳超えてて…………。
「おいウチ、本当に大丈夫か?」
「体調が優れないのなら、本日は部屋でゆっくりなされますか?」
下世話なことを考えてるとは気づかない二人に、思いっきり心配されてしまった。
いかんいかん、人様の下半身事情なんて思いっきりプライベートな事じゃないか。
ゲスの勘ぐりはやめよう。
「いや、大丈夫、ちょっと考え事をしてただけ…」
君達の床事情を、とは言えない。
思考を切り替えて、
「じゃあヤクさんの所へ行こうか」
オダの書を見せてもらいに行こう。
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