87 / 161
第三章 異世界の馬車窓から
トモ家の書
しおりを挟む
翌日、再びトモ家へ。
今日は書を見せてもらう事になっている。
流石にずっと正座はキツイので、ことわって胡座をかき、じっくり読む事にした。
表紙には【伴 長信】と記名されている。
えー、本名じゃないでしょう、コレって、などと思いつつ中を読んでいく。
*****
【天正十年六月早朝
常宿としている本能寺で賊の襲撃に遭う。
賊の旗印は桔梗紋、日向守。
迎撃するも多勢に無勢、当方の手勢は客人も含み少数。
上様をお護りすべく、敵を倒しつつ探すも、やがて火の手が上がる。
女中に尋ね、上様の行く先を検討するも、向かう先は種子島を収める小部屋。
急ぎ駆け付けるも爆風に煽られ気を失う。
意識が戻り、所在を確認しようにも身体が動かず、床に留まり辺りを見回す。
異装の伴天連に取り囲まれ動くに能(あた)わず………】
「上様、上様は何処に……」
視線を彷徨わせ姿を探すと、隣で倒れている若い男から応えがあった。
「その声、伴か」
元服前程の若い男だ。
「我らは今どこにいるのだ?
かような場所は見た事もないぞ」
若い男に面影を見、もしやと尋ねてみる。
「……上様?…上様なのでしょうか?」
「何たわけた事を申しておる、うぬは我がわからぬのか」
その答えに伴は我が目うたがった。
確かに見た目は若者だが、身から漂うモノがその若者を、自分の主君だと言っているように感じる。
「しかし何故我は石の床に転がっておる?
周りの者は何者ぞ?」
問いかけられるが、伴はその答えを持ってはいない。
「周りの者共は何を言っておる?
伴天連供の言葉とはまた違って聞こえるが」
そもそも伴天連の言葉は一切わからないので、違って聞こえると言われても、答えようがない。
「それにこの周りに浮いている小さき者は何ぞ?」
小さき者…言われて何とか頭を動かし、主君の周りを見てみると、いくつかの光が倒れる主君を取り囲んでいる。
「ふむ……この妖供………」
【遠きこの国と妖供の和合の為、主君共々この地へ喚ばれる。
外つ国の言の葉を操り、武力を用い争いを収め、会合にて和平を結ぶ。
我等と別に喚ばれし者二名。
共に国許に戻る事能わず。
領地を拝領し、主君が町づくりを始める。
名を【尾張】とす。
吾の務めを全うする為、地の者と交わるが、この地独自の【運命の人】と言うのに阻まれる。
故に我が一族への家訓としていくつかの取り決めをす……】
うん、何だろう、こちらの世界の言葉で書いているからか、微妙な言い回しになっているけれど、おかげで完全な古語じゃないから、わかりやすい……かな?
ガチな古語で、しかも日本語…戦国時代の巻物みたいに書かれていたら、絶対に読めなかったと思う。
便利だねぇ、異世界って。
しかし、運命の人に阻まれるって何だろう?
そもそも運命の人って、僕の中では一目惚れした相手に言う言葉ってイメージがあるんだけど、多分違うんだろうな。
しかも家訓ってのが…
・運命人と結ばれるの仕方ないけど、出会う前、先立たれた後などに、一人でも多くの子を残すこと
・運命の人は仕方ないとして、必ず人との子供を作ること
・ハーフの子供は主の下働き、もしくは町の発展に尽くすこと
・人の子は必ず家業を継ぎ、他国の情報収集で国益を増やすこと
・たとえ捕らえられても、自国の情報を漏らすべからず
……何があるんだろう?
これは読むだけではわからないな。
ハルさんに聞いてみても大丈夫かなぁ。
思いっきりプライベートな事だろうから、聞くだけ聞いて、無理なら諦めよう。
ちょっともやっとするけどね。
今日は書を見せてもらう事になっている。
流石にずっと正座はキツイので、ことわって胡座をかき、じっくり読む事にした。
表紙には【伴 長信】と記名されている。
えー、本名じゃないでしょう、コレって、などと思いつつ中を読んでいく。
*****
【天正十年六月早朝
常宿としている本能寺で賊の襲撃に遭う。
賊の旗印は桔梗紋、日向守。
迎撃するも多勢に無勢、当方の手勢は客人も含み少数。
上様をお護りすべく、敵を倒しつつ探すも、やがて火の手が上がる。
女中に尋ね、上様の行く先を検討するも、向かう先は種子島を収める小部屋。
急ぎ駆け付けるも爆風に煽られ気を失う。
意識が戻り、所在を確認しようにも身体が動かず、床に留まり辺りを見回す。
異装の伴天連に取り囲まれ動くに能(あた)わず………】
「上様、上様は何処に……」
視線を彷徨わせ姿を探すと、隣で倒れている若い男から応えがあった。
「その声、伴か」
元服前程の若い男だ。
「我らは今どこにいるのだ?
かような場所は見た事もないぞ」
若い男に面影を見、もしやと尋ねてみる。
「……上様?…上様なのでしょうか?」
「何たわけた事を申しておる、うぬは我がわからぬのか」
その答えに伴は我が目うたがった。
確かに見た目は若者だが、身から漂うモノがその若者を、自分の主君だと言っているように感じる。
「しかし何故我は石の床に転がっておる?
周りの者は何者ぞ?」
問いかけられるが、伴はその答えを持ってはいない。
「周りの者共は何を言っておる?
伴天連供の言葉とはまた違って聞こえるが」
そもそも伴天連の言葉は一切わからないので、違って聞こえると言われても、答えようがない。
「それにこの周りに浮いている小さき者は何ぞ?」
小さき者…言われて何とか頭を動かし、主君の周りを見てみると、いくつかの光が倒れる主君を取り囲んでいる。
「ふむ……この妖供………」
【遠きこの国と妖供の和合の為、主君共々この地へ喚ばれる。
外つ国の言の葉を操り、武力を用い争いを収め、会合にて和平を結ぶ。
我等と別に喚ばれし者二名。
共に国許に戻る事能わず。
領地を拝領し、主君が町づくりを始める。
名を【尾張】とす。
吾の務めを全うする為、地の者と交わるが、この地独自の【運命の人】と言うのに阻まれる。
故に我が一族への家訓としていくつかの取り決めをす……】
うん、何だろう、こちらの世界の言葉で書いているからか、微妙な言い回しになっているけれど、おかげで完全な古語じゃないから、わかりやすい……かな?
ガチな古語で、しかも日本語…戦国時代の巻物みたいに書かれていたら、絶対に読めなかったと思う。
便利だねぇ、異世界って。
しかし、運命の人に阻まれるって何だろう?
そもそも運命の人って、僕の中では一目惚れした相手に言う言葉ってイメージがあるんだけど、多分違うんだろうな。
しかも家訓ってのが…
・運命人と結ばれるの仕方ないけど、出会う前、先立たれた後などに、一人でも多くの子を残すこと
・運命の人は仕方ないとして、必ず人との子供を作ること
・ハーフの子供は主の下働き、もしくは町の発展に尽くすこと
・人の子は必ず家業を継ぎ、他国の情報収集で国益を増やすこと
・たとえ捕らえられても、自国の情報を漏らすべからず
……何があるんだろう?
これは読むだけではわからないな。
ハルさんに聞いてみても大丈夫かなぁ。
思いっきりプライベートな事だろうから、聞くだけ聞いて、無理なら諦めよう。
ちょっともやっとするけどね。
1
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説


【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

嫌われ者の皇族姫
shishamo346
ファンタジー
両親に似ていないから、と母親からも、兄たち姉たちから嫌われたシーアは、歳の近い皇族の子どもたちにいじめられ、使用人からも蔑まれ、と酷い扱いをうけていました。それも、叔父である皇帝シオンによって、環境は整えられ、最低限の皇族並の扱いをされるようになったが、まだ、皇族の儀式を通過していないシーアは、使用人の子どもと取り換えられたのでは、と影で悪く言われていた。
家族からも、同じ皇族からも蔑まされたシーアは、皇族の儀式を受けた時、その運命は動き出すこととなります。
なろう、では、皇族姫という話の一つとして更新しています。設定が、なろうで出たものが多いので、初読みではわかりにくいところがあります。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる