84 / 161
第三章 異世界の馬車窓から
オダ家の方々とご対面
しおりを挟む城は5階建てで、こちらの世界で見たどの建物よりも高い建物だ。
こちらの世界の建築物は、高さより広さがあるので、王城でも3階建てで、横に広い。
土地の狭い日本だと、横より縦に伸びるのだろうな。
城は堀で囲まれていて、櫓もいくつか見える。
些細な違いはあるけど、日本の城だ。
でも、僕が心配していたことは無く、中は畳敷きの和室半分、板の間半分で、板の間はテーブルや椅子、ベッドもある。
正座がちょっと…なこの世界の人の事も考えられてるみたいだ。
思わず「良かったね、スイ」と声をかけてしまったら、苦笑いされてしまった。
すまぬ。
和室と洋室どちらが良いか聞かれたから、僕は和室にしたよ。
やっぱり家の中では靴を脱ぎたいからね。
正直スリッパも要らない。
自宅では家に帰ると、まず靴下を脱いで素足で生活してたから、この開放感が懐かしい。
逆に靴下を履いていると言えども、普段風呂と寝る時以外は靴を履いて生活しているスイなんかは、何だか居心地悪そうだ。
部屋にもスリッパのまま畳に上がってこようとしたから、僕がスイの部屋に出向くことにした。
この後のスケジュール確認だけして、今日は部屋でゴロゴロさせてもらうことにした。
久々の畳、良いねぇ~。
ベッドやソファーでゴロゴロするのとは違う、床でゴロゴロするこのなんとも言えない心地よさ。
座布団を枕に気づいたら眠ってしまっていた。
*****
うっかり寝てしまったので、オダ家の人達への挨拶は夕食時になった。
「町長(まちおさ)相談役のオダ・アト・モトです」
「私の祖父です」
隣に座るモトさんの補足をするネイ。
白いものはチラホラと混じるけど、艶々の黒髪の、背筋が伸びた着物を着ている50代くらいの見た目の男性だ。
見た目だと、ラトさんとそう変わらなく見える。
向かいに座っている男性とも同年代に見えるよなぁ。
「現町長のオダ・モト・ヤクです。
隣が妻のメニです」
「初めまして」
ヤクさんの隣に座っている女性はお子さんかと思った…小さいから。
もしかしてマキさんと同類?と思ったけど、よくよく見ると、ただ小さいだけで、顔は大人だ。
「父の義理の弟で、メニさんはドワーフ族です」
成る程。マキさんとは違うね。
僕が勘違いしてると気づいたかな。
僕はいつもの挨拶をした。
モトさんは最初の奥さんとの間にラトさんを設けて、数年後に死別。
その後再婚した女性との間にヤクさんと、嫁に行ったアリさんの、合わせて三人のお子さんがいる。
因みにアリさんは、夫婦で城下町にて甘味処を営業しているそうだ。
ヤクさんとメニさんの間にはイルさんと、ユグさんと言う男の兄弟と、チコさんと言う女性の、こちらも三人のお子さんがいて、男性は鍛治師見習いとして、チコさんは細工師見習いとして、それぞれ家を出て独り立ちしているとの事で、今日は来ていない。
この場に居ない4人には、町に行った時に挨拶をしよう。
「オワリは他の町や他国へ、この国独特の着物や小物を輸出して生計を立てております。
また金物も有名で、鍛治や、細工物も人気があります。
そしてもう一つの名物が、甘味です。
初代様が甘味好きでいらしたそうで、トモ家の方々や、部下の方々に材料を探させるところから始めて、元の世界の甘味を持ち込んだそうです」
ああ、そう言えば甘いもの好きだったとか、何かで読んだ覚えがあるな。
僕も嫌いでは無いし、甘味と言うことは、こちらの世界で今まで食べた生クリーム系ではなくて、小豆系だろうから、ちょっと楽しみだ。
マモランドとは違って人間やハーフの人が多いみたいだし、あそこまで囲まれることは無いだろうから、ゆっくり回れるかな。
明日は城下町を回って、明後日はトモ家とオダ家の書を見せてもらう予定だ。
その後は……まぁその時になってと言う事で、ふんわりとした予定しかたてていない。
視察とかではなく、その家の雰囲気を感じ取るらのが一番の訪問だからね。
マモランドは予定外だったけど、今回はのんびりといけるだろう。
しかし……トラウマになっているのか、ついつい比べちゃうよな、マモランドと。
1
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説


【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強の職業は付与魔術師かもしれない
カタナヅキ
ファンタジー
現実世界から異世界に召喚された5人の勇者。彼等は同じ高校のクラスメイト同士であり、彼等を召喚したのはバルトロス帝国の3代目の国王だった。彼の話によると現在こちらの世界では魔王軍と呼ばれる組織が世界各地に出現し、数多くの人々に被害を与えている事を伝える。そんな魔王軍に対抗するために帝国に代々伝わる召喚魔法によって異世界から勇者になれる素質を持つ人間を呼びだしたらしいが、たった一人だけ巻き込まれて召喚された人間がいた。
召喚された勇者の中でも小柄であり、他の4人には存在するはずの「女神の加護」と呼ばれる恩恵が存在しなかった。他の勇者に巻き込まれて召喚された「一般人」と判断された彼は魔王軍に対抗できないと見下され、召喚を実行したはずの帝国の人間から追い出される。彼は普通の魔術師ではなく、攻撃魔法は覚えられない「付与魔術師」の職業だったため、この職業の人間は他者を支援するような魔法しか覚えられず、強力な魔法を扱えないため、最初から戦力外と判断されてしまった。
しかし、彼は付与魔術師の本当の力を見抜き、付与魔法を極めて独自の戦闘方法を見出す。後に「聖天魔導士」と名付けられる「霧崎レナ」の物語が始まる――
※今月は毎日10時に投稿します。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

嫌われ者の皇族姫
shishamo346
ファンタジー
両親に似ていないから、と母親からも、兄たち姉たちから嫌われたシーアは、歳の近い皇族の子どもたちにいじめられ、使用人からも蔑まれ、と酷い扱いをうけていました。それも、叔父である皇帝シオンによって、環境は整えられ、最低限の皇族並の扱いをされるようになったが、まだ、皇族の儀式を通過していないシーアは、使用人の子どもと取り換えられたのでは、と影で悪く言われていた。
家族からも、同じ皇族からも蔑まされたシーアは、皇族の儀式を受けた時、その運命は動き出すこととなります。
なろう、では、皇族姫という話の一つとして更新しています。設定が、なろうで出たものが多いので、初読みではわかりにくいところがあります。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
マーベル子爵とサブル侯爵の手から逃げていたイリヤは、なぜか悪女とか毒婦とか呼ばれるようになっていた。そのため、なかなか仕事も決まらない。運よく見つけた求人は家庭教師であるが、仕事先は王城である。
嬉々として王城を訪れると、本当の仕事は聖女の母親役とのこと。一か月前に聖女召喚の儀で召喚された聖女は、生後半年の赤ん坊であり、宰相クライブの養女となっていた。
イリヤは聖女マリアンヌの母親になるためクライブと(契約)結婚をしたが、結婚したその日の夜、彼はイリヤの身体を求めてきて――。
娘の聖女マリアンヌを立派な淑女に育てあげる使命に燃えている契約母イリヤと、そんな彼女が気になっている毒舌宰相クライブのちょっとずれている(契約)結婚、そして聖女マリアンヌの成長の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる