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第三章 異世界の馬車窓から
190歳年上の先輩英雄との共通点
しおりを挟む「それで聞きたいんだけど、君も自分と近い時代から来たって、ニトリんに聞いたけど、正確にはいつなの?」
やっと落ち着いてまともに会話出来るのかな。
「2018年です」
「ま?自分と同じ年じゃないか」
「え?牧さんも2018年から来たんですか?」
「だよ~。
因みに何月?自分は8月なんだけど」
「10月です」
「あー、惜しい、これで来た月も一緒なら面白いのに」
二ヶ月なんて僅差だよね。
面白いかどうかわからないけど、凄い確率だな。
「出身地は?」
この場合出身地と言うのか?
「僕はS県です」
そこの結構有名な動物園に勤務していたんだけど、あの子達はどうしているだろう。
「Sか~、へ~~。自分Cだな」
「ほー、ご近所さんですね」
「いやいや、場所は近くても…………」
そこからご当地バトルに発展してしまい、ロリさんの仲裁が入るまで続いてしまった。
まあ、お互いどっちが上かって良くある話なんだけどね。
いかんいかん、牧さんには何だか釣られてしまう。
「死因はどうなの?」
「…………色々あって自棄酒した後の、急性アルコール中毒かな」
「アル中か~。
因みに幾つだった?」
「享年と言うのかな、33歳だね」
「ま?そんなおっさんが幼児になるとか」
「いやいや、たまたまあの頃は良かったって思ってただけだから、深い意味ないから」
望んで幼児になったわけではない。
僕はおとこだけど、幼女好きに誤解されるのは、なんとなくだけど勘弁して欲しい。
本当になんとなくだけどね。
「自分28だったから年も近いっちゃあ近いね」
28歳で幼女好き……元の世界で犯罪なんて犯してないだろうなぁ。
ある意味こちらの世界に喚ばれて良かったんじゃ無いの?
「あの夏暑かったじゃない、自分はイベント会場で熱中症で倒れてちゃって、そのままこっちに来たんだよね。
あ~~折角入手した神絵師の新刊が~~~」
熱中症……確かに異常な暑さだったもんな。
動物達もぐったりしてたし、お客さんも気分悪くする人多かった。
「第二回のケモニアとのオフ会も予定してたのに」
…………ん?
「ケモニヤ?」
「ケモマニアのチャット仲間内で、【夏の暑さを自分らの熱で吹っ飛ばす会】とか言ってたんだけどね」
…………ひょっとして……
「ヒンヌー教の教祖?」
*****
「うわっマジか~」
休憩時間にスマホを見ながら叫ぶ山田さんに、弁当を食べながら視線を送ると、
「今メッセが入ったんだけど、教祖が亡くなったって~」
「教祖?山田さん、何か危ない宗教でも……」
仕事仲間が宗教家なのは、ちょっと嫌だな。
「いやいやいや、私じゃなくて、ヒンヌー教の教祖。
私は玄ミミナーですから」
「…………よく分からないけど、ハンドルネームとか言うやつ?」
「ハンドルネーム!古っ!
まぁ先輩のわかりやすいように言うとそうですね」
ジェネレーションギャップがキツいです。
「まぁ兎に角知り合いが亡くなられたんだね。
葬式とかは行くの?休みとるならシフト協力するよ」
「あ、大丈夫です。
リアルでは一度しか会ったことないですし、知ったのは今ですけど、イベで倒れてそれっきりって言うから、2週間くらい前みたいだし。
最近更新しないと思ってたんだよね~……」
*****
と言う会話を夏休みの終わりくらいにした覚えがあるけど、もしかして、その教祖様かな?
「何で知ってるん?
もしやフォロワーとか?」
「仕事場の後輩が、夏に知人が亡くなったと言ってたけど、もしかしてと思って」
当たりっぽいね。
「え?誰だろ」
「山田って言う二十歳の女の子なんだけど」
「名前言われても…職場って、動物園っつたよね?」
「ああ、飼育員だけど、心当たりある?」
S県の動物園……と少し考え込んだ牧さんが、何か思いついたように顔を上げる。
「もしやケモスキーが高じてリアケモ関連の仕事に着いた、玄人ミミスキーの玄ミナか?」
……………玄人ミミ好き……なんなんだか分からないけど、
「多分それかな」
「うっわ、いくらなんでもニア過ぎっしよ、ないわー」
……えー、いくらなんでもニアピン過ぎる、あり得ないわで良いのか?
確かに狭い日本と言えども、同じ年に隣の県の年齢の近い人間が、年代ずらして召喚されるって、どんな確率だよ。
……でも牧さんとは住む世界が違う気がするけどね…。
ーーーーー〈切り取り線〉ーーーーー
これを書いたのが2018年でして、40度超えの日が有るとか、かなりの酷暑でした。
マッキーのスラングも、この当時の物です。
今更な物が多いのは、そんな理由だとご理解いただけるとありがたいです。
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