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第三章 異世界の馬車窓から
どんなに遠くへ行くにもやっぱり馬車移動
しおりを挟む「曾祖父さんと会うの久しぶりだなぁ」
東へ向かう馬車の中でニトが言う。
「何せ馬を飛ばしても2日以上かかるからね、なかなか行こうと思わないよ」
「そんなに遠いんだ」
「まあね、馬車だと速度によるけど、5~6日くらいかな。
山越えも有るし、途中に町が有ったり無かったりだから、野宿もするしね」
「ああ、だから荷物が多いんだ」
「説明したと思いますが?」
スイにチロリと見られて、聞いてませんでしたとは言えず、視線を反らせてしまう。
僕達は今南の山を目指して馬車を走らせている。
目指すはそのさらに先に有る魔物の国の一つだ。
山を越えて暫く南下した場所にある大森林の中のその国は、マキ家の初代が、魔物の為に作った国なのだそうだ。
「まあ、詳しくは曾祖父さんに聞いてくれ」
との事なので、あまり突っ込んで聞いてはいない。
秋彦さんと気があうと言う事なので、何となくどんな人なのか想像がつく。
その後はそこから北上し、また山を超えて今度は西へ……つまりラグノル国の北西の端、国境付近の街へ。
そこが最後に目指すオダ家とトモ家が治めている街だ。
その三家を巡った後(のち)にラグノルへと戻る事となる。
日程としは魔物の国まで余裕をみて7日、滞在に5日、魔物の国から国境の国まで10日、そこでの滞在は二つの家で7日間、国へ戻るのに3日、トータル日数で32日?
長い、長過ぎる。
車や電車に慣れきっている日本人からしたら、移動に時間がかかり過ぎだ。
きっと敏和さんと会っていなければ、車を作ろうと働きかけるか、どうにかこうにか自分で作ろうとしたかもしれない。
まぁ、長距離移動にも慣れるしかないな。
それに現実問題、僕に車など作れるわけないしね。
しかし何故今回は今までの様に一軒ずつにせずに、魔物の国から国境まで続けて行くかと言うと、護衛の問題だ。
今までの様に城下町や近隣の町ならまだしも、片道でも日帰り出来ない距離の場合、やはり護衛は必要だと言う事で、普段なら国軍の兵士が同行するそうなのだ。
けれど、今回行く国境の国は近衛団長の地元なので、近衛団長が同行する。
それならいっそ、最初から団長が同行して、護衛も近衛で組んだ方が良いのでは?となったそうだ。
その辺はお任せです。
今回は僕達の乗っている馬車の他に、荷馬車が3台、近衛団が18人、それに団長だ。
「これって多いの?少ないの?」
「王族の方だとすれば少ないですし、一般の方ですと多いと思います。
また荷馬車3台の商人だとすれば…やはり少し多いですかね」
「何かあった時に、馬車一台を三人で、俺たちを護るのに一人ずつ、団長を含む四人が前に出て戦う、って感じかな」
成る程、具体的で分かりやすい。
あれ?でも
「御者の人は誰が護るんた?」
「御者も団員だから大丈夫」
成る程成る程。
「まあ、国内なら魔獣に注意しておけば良いんだけど、国境近くだと盗賊が出ないとは言えないから、このくらいの人数が最低ラインかな。
いざとなったら俺達も戦えるし」
ニトが胸を叩いてドヤ顔する。
となると戦えないのは僕だけか。
いや、『戦った事が無いのは』と言えるかな。
戦うだけならニヤ達を呼べば戦う事が出来るだろうけど、僕に生き物を傷付ける事が出来るかと言うと……無理だと思う。
人であれ、動物であれ。
ここは何かあった時は大人しく護られていよう。
そんな感じで旅は始まった。
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