【完結】英雄召喚されたのに色々問題発生です【改訂版】

七地潮

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第三章 異世界の馬車窓から

土岐家ではゆっくり眠ることもできないみたい

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歓迎会は続いていたけど、飲み会に突入したので、見切りをつけて部屋に戻る。

『とうちゃんお帰り~』

「ピヨピヨピヨピヨ」

部屋ではニヤとピヤと熊澤さんが待っていた。

熊澤さんは、基本的に僕の首に巻き付いて、そのまま眠っている。

そこなら人に追いかけられないし、僕に置いて行かれないって意味で安心なので、落ち着いて眠れるそうだ。
逆に僕が居ないところではあまり眠らないらしい。

夜に眠る時も巻き付いたままだ。
寒い冬にタオルを巻いて寝る感覚?
絶妙な巻きつき加減なので苦しくはない。
寧ろツルスベで気持ちいい。

毛の長いフェレットぽくって、爬虫類の脚を持ち、鳴き声はひよこなのに、沢山眠るのは猫っぽいかな?

基本的には僕と一緒だけど、流石に食事の場所には連れて行けないので、ニヤ達に相手をして貰ってたのだ。

「ピヤもお疲れ様」

『なんのこれしき~だよ』

相手をして貰うと言っても、ニヤ達より断然デカイ熊澤さん。
しかも見た目に反した柔軟なスリムボディなので、ちょっとした隙間に入って行ってしまうのだ。

ベットや棚の下ならまだしも、どんな隙間から外に出るかわからない。
外に出ると下手すれば駆除されてしまう。
かと言って部屋の中でまで紐は付けたくない。
ニヤ達に見て貰っていても、サイズ的に止められない。

なので、ピヤの空間の術で、部屋の床と壁に沿って、不可視の壁?を作って貰った。

『とうちゃんの言う通りに上だけ開けとけば、窒息死しなくて済むね』

ニッコリ笑って言うけど、相変わらず物騒だなぁ。
でも、助かったので、小さな頭をなでなでしていると、

『ねぇねぇ、くっついて良い?』

水の子や風の子達が何処からともなく現れて、僕から栄養補給していく。

最近の僕の夜はこうして過ぎて行くのが日常だ。


*****


「おっはよーー!」
「!!」
大きな声と共に勢いよくドアを開けられて、僕は飛び起きた。
一緒に寝ていた熊澤さんも毛を逆立てて威嚇している。

おおお、威嚇する時はハリネズミみたいに毛が全部立つのか!
指先で触れてみると固かった。

おおおおお、普段のツルスベからは想像出来ないカッチカチさだ。
なのに僕に触れている部分はツルスベのままって、器用だよね。

面白がって熊澤さんをツンツンしてると、
「お~い、ムシしちゃ~いや~よ」
入り口に居る秋彦さんがわざとらしく肩を落とす。
今日も秋彦節全開だ。

「おはようございます。早いですね」
「歳取ると朝は早いもんだよ。
さあ行こう!」
「????」

僕は部屋に入って来た秋彦さんに抱っこされて、そのまま連れ出されてしまった……。

「あの~、僕は何処に連れて行かれるんですか?」
「何処にしようかねぇ」
「スイは知ってるんですか?」
「秘密のアッ●ちゃんだよ」
「他の人は?」
「大丈夫、大丈夫」
「僕部屋着のままなんですけど」
「おっと、服は着替えた方が良いな」

そんなやりとりの末、開店前の衣料品を売ってる店の裏口から入り、服を一式と靴とコートを持ち出して来て僕に着せた。

「あのぉ~、お金は」
「気にするな、奢りだよ」
いや、お金置いて来てないよね?
服持ち出したけど、無断だよね?

「よーし、行くぞー」

うーむ、誘拐では無いだろうけど、スイに無断で良いのかなぁ。
後から怒られるんじゃないの?大丈夫かなぁ。

ご機嫌な秋彦さんに抱っこされたまま、僕は町の外まで連れ出された。


*****


「うわ~~~!凄い!!」

僕は今空を飛んでます。
ドラゴンの背に乗って!

町の外れの草原に居たのは、ヤシさんと見知らぬ女性だ。
「ほらほらユキさん、この子が最近召喚されてスイスイがお世話してる子だよ」

水色の長い髪に水色の瞳、そして耳の上辺りにスイと同じ角が有る、背の高い痩身の女性。

「初めまして、スイの母のユキです」
やっぱりスイの母親か。

「いつもはテリトリーの山頂に居るんだけど、ちょっと来て貰ったんだ」
わざわざ僕に紹介する為に来て貰ったのか?
と思ったら違ったみたい。

「ねえねえウチ君、空を飛んでみたくないか?」
「ええ?」
「ウチ君のおもてなしにユキさんにお願いしてみたら、OKしてくれたからね」

それにそろそろ……と言いながら、ヤシさんが町の方を見ていると、
「あははは、スイスイ凄~く怒ってるみたいだねえ」
スイが馬に乗って走って来た。

直ぐそばで馬から降り、眉間にシワを寄せて近づいて来たけど、ユキさんの姿を認めると、一瞬ポカンとした表情をした。

「ププププププ、スイスイのあの顔~」
秋彦さんとヤシさんが笑う。
表情を戻したスイは、咳払いを一つ吐き、僕の隣まで来る。

「高祖父殿、父上、これはどう言うことですか?」

二人は顔を見合わせふふふふと笑い、言い切った。


「サ~プラ~~イズ!」




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