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第三章 異世界の馬車窓から

次の滞在先はスイの実家

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トキ家に出発する前に、財務大臣でスイの祖父のトキ・サナ・ケチさんと話をした。

初めの予定では、ケチさんも同行する筈だったけど、北方の国へ外交に行ってた前王リア様の、交渉して来た取り引きの処理が長引いていて、今回の同行は無理になった。
なので、昼食を取りながらの話し合いとなった。

「この度はこちらの見通しが甘く、無作法で申し訳ない」
ケチさんが深々と頭を下げるので、慌ててしまう。

「いえ、こちらこそお忙しいところ、時間をとって頂きありがとうございます」
そんな挨拶から始まった会食は、各家を廻ってみてどうだとか、スイが役に立っているかなど聞かれて、僕が答える感じで話が進む。

話してみた印象は、スイのお爺さんだけあって、とても真面目な人だなぁと言う感じだ。
んー、ちょっと融通が利かなそうな頑固親父、って感じなんだけど、国のお金を取り扱う役職の人なんだから、頑固な程真面目なのは良い事だよね。

一対一で話をするのはちょっと気疲れしたけど。
スイの家の人達もこんな感じなのかな。

トキ家は一族で商会をやっているそうなので、滞在期間は邪魔にならない三泊四日と少し短い予定だ。
カチコチな一族なら短い方がありがたいと言うのが正直なところだ。

スイ一人ならまだしも、周りに居るのが、スイやケチさんばかりだと気後れする……ぶっちゃけ疲れるよな。

「家の者が迷惑かける事となるでしょうが、もし何か有りましたら、スイか直接私に申し付け下さい」
そんな言葉で会食は終わった。

食休みを経て随分乗り慣れて来た馬車に乗り込み、トキ家へと出発するのだった。


*****


城下町に有るトキ家には……驚いた。

まずはトキ家の人達の住居兼職場は、大小の十軒のお店が適度な間隔で建っており、それとは別に倉庫や加工所、荷運びに必要な馬車の収納庫や厩舎、従業員宿舎と、護衛の国軍の謂わば派出所みたいな建物、それとは別に傭兵や私兵の宿舎などなど、城下町の一角が、全てトキ家関係の建設物で、これはもう、トキ家の町と呼んで良いのではないかと思うよ。

お店はそれぞれ、野菜や果物、魚介などの素材を扱う店、それらを加工した物や、パンや菓子などの加工食品の店、輸入品などの各地の特産品、衣類、家具、装飾品、嗜好品の店は絵や置物なども扱っており、金物屋は農具、工具、武器や防具や調理器具など、鍛冶屋さんの作った物全般を取り扱っている。

後は僕には見慣れているけど、この世界にはここしかないと聞いた、リサイクルショップと質屋が有る。

それぞれの店に、小売店の人達が買い付けに来て、それぞれの店や町で売ると言う形なんだそうだ。
卸業者みたいな感じなのかな?
一般販売もする業務用スーパーなのか?
それか問屋街と言う方がしっくりくるかな。

馬車でぐるりと廻ってから降りたのはリサイクルショップ前。
ここが本家になるそうだ。

「スイさんの実家、凄いですねぇ」
「ええ…まあ家業的には誇れますかね」

僕の言葉に何故か微妙な顔のスイ。
何だろうと思いながら、促されるまま入口へ向かう。
スイが扉を開けようと手を伸ばした時、中から勢いよく扉が開き、一人の青年が飛び出して来た。

「ス~イ!久しぶりだな!」
満面の微笑みを浮かべた青年が、思いっきりよくスイに抱きついた。

「ゲッ…何故居る!」
珍しく言葉も表情も崩れたスイが心底嫌そうに、青年を引き剥がそうとしている。
フジ家で跡取りさんに会った時より嫌そうだ。

誰だこの若い男の人は?




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