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第三章 異世界の馬車窓から
ユゲ家の息子さんと会う
しおりを挟むレンに色々と話を聞いていると、「荷物の片付けが終わりました」とスイが呼びに来たので、滞在させてもらえる部屋で一旦休む事にした。
案内された部屋でそう言えば、と思い、スイに聞いてみた。
「スイは一緒にここで滞在するの?」
スイはお茶を淹れながら答える。
「そうですね、私としてはどちらでも構いませんが、各家にはそれぞれ使用人がおります。
なので身の回りの世話は不自由しませんでしょうし、他家の者が居ると邪魔になるかもしれません。
しかしウチ様が、慣れて居ない者の世話になるのを厭(いと)われるなら、引き続き私が側に控えさせていただきます」
どうされますか?と逆に聞かれた。
この世界に来てから色んな人と顔も合わせはしたけど、一番気安いのはやっぱりニトだ。
二人だと口調も砕けるので、特に気が楽に感じる。
その次はやはり、始終側にいるスイになる。
堅苦しいし、厳しいところも有るけど、いつも僕の事を考えてくれてるのも分かる。
それならやっぱり、
「出来るなら、これから他の家を回る時も付いて来て欲しいと思うんだけど、お願い出来るかなあ」
そう聞くと、スイはニッコリ微笑んで頷いてくれた。
「こちらこそよろしくお願い致します」
スイの微笑みは上品なんだよな。……【怒って居ない時は】だけどね。
*****
昼食時、レンの息子と顔合わせをした。
「こんにちは、トウ・ドウ・ウチです」
「初めましてウチ様、ユゲ・レン・ナチです。
ようこそおいで下さいました」
カイ王子より一つ年上だと言うナチは、レンさんと同じく金髪で、青い目をしている。
ん?金髪?
確か英雄家系を継ぐのは黒髪が条件だったよな?
他に子供さん居ないようだし、良いのかな?
「来年から学園に通うんだってね。
さっきちょっと聞いたけど、皆寮生活になんでしょ?
両親と離れるのはちょっと不安になりそうだけど、大丈夫?」
僕がそんな小さな頃親元から離れろって言われたら、絶対無理だと泣いてたかもしれない。
「そうですね、やはり少しばかりの不安と、正直申しますと寂しくも有ります。
しかし、私だけではなく、条件は皆同じですし、将来の為にも若いうちから多くの人と関わると言うのは、大切な事だと思います」
じ……11歳だよね?大人だなぁ。
「あー…言葉は崩しても大丈夫だよ。
中身が幾つでも、見た目はこんなだからね」
「……いえ、父と同年代の方だと伺っております。
実年齢より見た目と言われておりますが、やはり失礼にあたりますから」
おおおー、しっかりしてますねと、レンさんに言うと、
「少々融通が利かない所が有りますが、その辺りも学園で良い方向に向かうと思います」
と少しばかりの苦笑いを浮かべながらも、誇らしげでも有る。
話の流れで聞いてみても良いかなあ。
「将来は宰相を継がれるのですか?」
「いえ、宰相の仕事は五男が、ユゲ家は妻の次男が継ぎます。
この子は次期王となりますから」
えええ?!
カイ王子居るのに?
いや、それよりこれってこんな所であっさり聞いて良いの?
てか、次男が家継いで五男が仕事継ぐ?
ナチ君長男で…あ、前の旦那さんの子か。
それでもやっぱり昼食時の話で聞く事じゃないよね?
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