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第三章 異世界の馬車窓から

ちょっとそこまででも遠くへも馬車移動

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王様から話を聞いた翌々日、僕はユゲ家へ向かう事となった。

翌日は旅の準備をするという事だったのだが、メイドさん達や、スイが全ての荷造りしてくれた。
手持ち無沙汰な僕の準備は、心の準備くらいかな?


夕食は王様達と一緒だった。
そこで王様に言われたのが、

「後見人と言っても難しく考える事はない。
ウチ様自身が幾つであろうと、この国…この世界では見た目の年齢で判断される事となる。

一人で暮らすにせよ、子供の見た目だと色々不都合も生じるであろう。
ましてや召喚された英雄だと分かると身の危険も生じる事となる」

あー、そうだろうな。
今は禁術とされている召喚術で、他の世界から来たとなると、面倒な事になりそうだよな。

ましてや祝福が沢山とか、妖精と会話が出来るなどバレた日には、めちゃ怖い事になりそうだよな。

それより何より、それで僕が危ない目に遭ったりしたら、ニヤ達の報復が恐ろしい事になりそうだし……。

「なので別の世界から来た事は他に漏らさぬ様お願いしたい」
「勿論です」
「一人で暮らされるにせよ、家の些事を任せる者や、有事の代理などを務める者を選ぶ、そう言った事もこの世界に来られたばかりだと不案内だろう。
家を建てるにせよ、ツテはひつようだ。
そう言った全ての事を任せる者を選ぶと思われれば良い。

勿論気に入った家が有ればそこでその家の者と暮らすのも良い。
どの家でも歓迎される事は間違いないであろうからな」

ん?なぜ断定的なんだろう。

「英雄家系には必ずと言って良いほど、魔物やその血を継ぐ者が居るから」
王様が半眼で女王様とルル姫を見る、
その視線に気づいて二人は素知らぬ顔をしているが、ミミが思いっきりこっち向いてる。

成る程、魔物さんやハーフさんには歓迎されるかもな。
でも王子みたいな反応も頭に入れておこう。

王子は相変わらず僕を睨んでいるけど、うん、もう慣れた。

とりあえず八つの家を回ってみてから細かい事は考えよう。


*****


朝、馬車に乗り込んで、まずはユゲ家へと向かう。

因みに城門の中は第一層、その外の家臣達の住む辺りは第二層と呼ぶらしい。
そしてその外側が城下町。

街の外には出た事無いけど、英雄家系の人が治めている街が広がって、この国を成り立たせているそうだ。

街と言ってるけど、元の世界の感覚からすれば、『県』と言うか『市』なのかな。
んで、市長がそれぞれの英雄家系の人。
多分その認識が近いのだと思う。


到着迄の時間潰しにでも、と案内役のスイが話してくれたのは、他国の事だ。
南の方角には人より魔物の多く住む国々、北の方へ行けば行くほど魔物は少なくなる。

山脈の向こう側は、北方五大国と呼ばれる五つの国で成り立っているとか。
その山脈の向こうの国々は、人間しか居ないそうだ。

つまり魔物やハーフは住みにくい……どころではなく、入国さえも出来ない国もあると教えてもらった。
差別が酷く、魔物やハーフの人々は、良くて奴隷扱い、酷いと………。

この国からその五大国まで、馬で無理をしても最低四ヶ月はかかるそうだ。
途中に山脈や大河が有るので、馬車で移動となると、倍近くの日数がかかるとの事。

なので五大国との交流はほぼ無く、今のところ揉め事も無いそうだ。

移動手段が馬か馬車か徒歩しか無いから、遠く離れている国と争いは無いけど、この先交通機関が発達したら……と考えるととても嫌な気分になる。

因みに五大国は妖精も居ないそうだ。

とにかく【人至上主義】で、妖精も魔物も全てが駆除対象とか、聞いただけで気分が悪くなるよな。
駆除って何だよ、人ってだけで偉いなんて、驕りも甚だしい。

山脈のこちら側の小国の国々も、北に近づけば近づく程、多少なりと交流のある向こう側の思想が根付いているとか。

妖精の祝福は受けるけど、魔物やハーフの人達は虐げられてるそうだ。
つまり、都合の良い所だけ取りの、ムカつく国々だ。

でもここ百年程で、国によっては考えが変わってきていて、前国王の外交も、この国から北側に有る小国に、妖精だけでは無く、魔物との共存を説きに行っていたそうだ。

前国王や外交官が地道に国々を回っていて、今では魔物だから、ハーフだからと差別される国も、徐々に減って来ている。


そんな話をしているうちにユゲ家に到着した。

城を出て五分位しか経ってない様な……。
良く話を終わらせられたな。
と思ったら、わざわざ会話が終わるまでグルグルと走らせていただけで、本来なら三分も掛からない、城の隣なのだそうで……。

まあ宰相や王弟が遠くに住むわけないのか?
でもさ、隣なら歩いても良くないか?
きっと歩いても十分そこそこだと思うけど、貴族様はご近所でも馬車移動?
近くのコンビニでも車で行くのと同じ感覚なのかな?

と言うか、前国王の話を馬車の中でしなくても良かったのでは?
そうすれば、御者の人も気を遣ってグルグルしなくて良かったのでは?





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