17 / 161
第一章 異世界だねぇ
キラキラメルヘンファンタジーはおっさんには辛いです
しおりを挟むスイが報告して来ますと部屋を出て行った。
残されたのは僕と妖精王と女王、そしていつの間にか集まっていた沢山の妖精。
部屋の中がイルミネーションの様にキラキラ輝いている。
そう言えばと、思い立って聞いてみた。
「さっきなんかも呼ぶ時、女王とか王って呼んだけど、皆の名前は?」
問いかけにふよふよ漂っていた妖精が一気に集まって来て身体にまとわりつく。
『ぼくは風だよ』
『わたしは水』
火、闇、光、木、雷、音……などなど、口々に言うけど、
「それって属性とか言うやつ?」
うっすら聞き齧りのファンタジー用語(?)で合ってるのかな?
『そうなの、それが名前なの。
だから雪は雪だし、王は王なの』
「確か属性毎に一つの意思とか言ってたから、混乱する事無いのか。
でもさ君達はちょっとややこしいかもね。
この国の王様を名前呼びなんて出来ないから、名前が有れば良いなと思うんだけど」
『名前?人みたいに?
王なのに王じゃ無くてボクだけの名前?』
『ワタシを呼ぶ時にワタシだけの呼び名?』
「うん、そう。
ダメかな?」
そう聞くと暫しの沈黙の後、二人は飛び上がり
『スキーーーー!!!!』
と両頬に張り付いて、グリングリン頭を押し付けてくる。
痛くは無いけどくすぐったいなぁ。
喜んでる様だから良いか。
名前をどうするか聞いてみたら、僕に付けてくれと言われたので考えてみた。
妖精女王と言えば、ティターニアだっけ?
二文字だから、テイ……イタ………ニアだな。
「ニア……ニア…ニア………あれ?声に出すと意外に言いづらいって言うか聞き取りづらい?」
実際声に出して気づいた。
どうしてもニヤーと耳に届くのは聞き慣れている言葉に脳内変換されるのか?
それとも僕の舌が舌ったらずなだけ?
「まぁ、言いやすいのも有るし、ニヤで良い?」
女王に聞くと頭の周りを飛び回りながら
『ニヤ、ニヤ、ニヤ、わたしはニヤー』
と嬉しそうだ。
ニヤニヤ言ってると妖精の女王って言うより猫娘……えー、王様はどうしよう。
確かオベロンだったよな?
オベ…ベロ……無いな、ロンだな。
「ロンでどう?」
女王と同じノリで決めようとしたら
『ロンはダメ』
とダメ出しされてしまった。
『ロンはミヤ家のロンと一緒だからダメ』
あ、そう言えば、医療大臣がミヤ・キリ・ロンって言ってたな。
同じ名前はダメだし、ミヤ・ロンとニヤとロンってなると響き的にもアウトだな。
じゃあどうしよう…。
妖精って言うと真夏の夜の夢…シェイクスピアだよね。
「えー、じゃあ………シェ…ク……ピア、うんピア…………ん?ピア…あれ?」
何だろう、二文字で語尾が『ア』って意外に言いづらいし聞き取りづらいんだ。
舌ったらずだからじゃ無いんだからね!
「ピヤでも良い?」
『ピヤ~~~~!!』
王も頭の周りを飛び始める。
ニヤと手を取って二人で
『ニャー』『ピャー』
と言い合いながらくるくる踊りだした。
【ニヤとピヤ】じゃなくて、【ニャとピャ】になってるよね。
やっぱり舌ったらずじゃないんだよ、うむ。
女王の擦り寄る感じが猫っぽいし、泣き虫な王だし、案外合ってる……とか思うのは自画自賛?
踊る妖精王達に釣られて、他の妖精達もくるくる踊り始めた。
いやー、何だろうこのメルヘンな世界。
このキラキラな中心に居るのが、くたびれた中年のおっさんじゃ無くて、見た目だけでも幼児なのがせめてもの救いに思える。
報告へ行っていたスイと、アフタヌーンティーのお茶とお菓子の乗ったワゴンを押したメイドさんが連れ立って戻って来るまで、このキラキラメルヘンは続いた。
何故だろう、綺麗だし癒される光景のはずなのにライフゲージがガッツリ削られた気がする……。
まぁ、見た目幼児でも、おっさんはおっさんだしねぇ…。
1
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説


【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

嫌われ者の皇族姫
shishamo346
ファンタジー
両親に似ていないから、と母親からも、兄たち姉たちから嫌われたシーアは、歳の近い皇族の子どもたちにいじめられ、使用人からも蔑まれ、と酷い扱いをうけていました。それも、叔父である皇帝シオンによって、環境は整えられ、最低限の皇族並の扱いをされるようになったが、まだ、皇族の儀式を通過していないシーアは、使用人の子どもと取り換えられたのでは、と影で悪く言われていた。
家族からも、同じ皇族からも蔑まされたシーアは、皇族の儀式を受けた時、その運命は動き出すこととなります。
なろう、では、皇族姫という話の一つとして更新しています。設定が、なろうで出たものが多いので、初読みではわかりにくいところがあります。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる