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第一章 異世界だねぇ

妖精側の気持ち

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妖精王の言葉に驚き思わず聞き返す。

「眠りにつくって……繋がるって意思の疎通が出来たり、術を使えるようになるだけじゃ無いのか?」
妖精の言葉は分からなくとも、僕の問いかけで、不穏な空気を感じたスイは黙って成り行きを見守る。

『そうなの、全部が繋がるの。
だから残されて寂しい想いもしなくて良いのよ』

「寂しい想いって……いや、でも寿命まで繋がるなら、確かに本当に好きじゃないと簡単に繋がれないよな」
そりゃあお願いされたからって、ほいほい人と繋がるなんて出来るわけない。
まさか命がけでなんて、思いもしなかった。

「……ウチ様、妖精は何と仰っているのですか?」
僕の声しか聞こえないスイは、それでも重要な事を話してると推測し、聞いてくる。

なので祝福を授けた妖精は、繋がった人と同じ寿命、つまり【繋がった人が亡くなると、妖精も一緒に死んでしまう】と言っていると伝えると、とても驚いた。

「知らなかったのですか?」
「知りませんでした。
祝福を受けた本人でない限り、妖精は光にしか見えませんので、見分けがつかないのです。
会話も出来ない、見分けもつかないですから、どの光がどの妖精かの個別判断がつきません。

なのでまさか人と一緒に儚くなっているとは存じませんでした」

そうなんだ。
しかしそこまでして人に尽くさなきゃいけないのか?
会話も出来ない相手に、術を使えるように力を貸して、相手が死んじゃうと自分まで死ぬとか、言い方悪いけど便利に使われてるだけじゃ無いの?
口には出せなくても、理不尽に思う。

『そんな事ないよ、使われてるんじゃなくて、好きだから力になりたいんだよ』

王がにっこり笑って僕の思考に答える。

純粋かよ!どんだけ健気なんだよ!
って突っ込んでしまっても仕方ないよね。

好きだから力になりたい、好きだから残されて寂しい思いするより一緒に……。
ただただ純粋な思いで行動する彼ら。
これが人同士なら思いを交わし合う事も(色んな意味で)有るだろうけど、会話も出来ない相手になんて、報われないのでは?

『そんな事無いの。
ありがとうって気持ちは伝わるの。
言葉も伝わるけど、素直な気持ちはもっと伝わるの』

ああ、言葉だと変に飾ったり、本心じゃない事もあり得るけど、繋がっていると純粋な気持ちがダイレクトに伝わるのか。

『うん、そうだよ。
そのありがとうは、ボク達の力になるの』

そうか。妖精達にも得るものがあるのか。
感謝の気持ちが力になるって、信仰心みたいなものが力になるのかな?

仕組みはわからないけど、一方的に搾取されてるので無いのなら少しは安心か。
安心と言うより、知ってしまった罪悪感は薄れると言うのが正直なところか。

『そんなに難しく考えなくても良いの。
ワタシ達が好きでやってるの』

これは人として、ありがとうと言っておくべきかな。
これから僕も色々と、力を貸してもらう事も出てくるだろうから、とやかく言わずに素直に感謝しておけば良いのか?

『それで良いんだよ。
とうちゃん難しく考え過ぎだよ』

妖精って純粋な生き物なんだね。
しみじみ思ってると二人は照れると顔を赤らめた。

「あの……」
スイが声をかけてくる。
あ、途中から頭の中の会話になってたか?

「今の話王に報告してもよろしいでしょうか?
妖精達に伺って頂けますか?」

そうか、今現在祝福受けてる人も多いし、これからも妖精との付き合いは続いて行くのだろうから、新たに分かった情報は共有した方が良いよな。

てな感じなんだけど、伝えても大丈夫なの?
僕の問いかけに、王も女王も大丈夫と頷く。

「あれ?ちょっと待って、繋がった人が亡くなると妖精も一緒にだと、僕が死んだら二人もだけど、百人以上の僕と繋がった妖精いっぺんに皆死んじゃうの?」

そんなに大量の妖精を道連れにしちゃうとか、まるで大量殺人(殺妖精?)じゃないの?

『大丈夫なの。
ワタシ達居なくなっても、すぐ新しい妖精生まれるの』

『ボク達は常に一定の数存在するから、一度に百人居なくなったとしても、すぐに百人生まれるから大丈夫だよ』

え?そんなに一気にすぐ生まれるもんなの?

『人みたいに生まれるんじゃないの。
発生するの』

…自然発生って事?
そうそうと頷く二人。
妖精の事は分からない事だらけだな。
そのうち詳しく聞こう……覚えていたら。

とりあえず今は一旦頭を休ませたい。
スイが淹れなおしてくれた紅茶を飲みながら、柔らかなソファーに深く埋もれた。


後日集まった王様や重臣達の前で妖精達に聞いた話を披露した。

これって通訳の初仕事かな。





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