【完結】英雄召喚されたのに色々問題発生です【改訂版】

七地潮

文字の大きさ
上 下
16 / 161
第一章 異世界だねぇ

妖精側の気持ち

しおりを挟む

妖精王の言葉に驚き思わず聞き返す。

「眠りにつくって……繋がるって意思の疎通が出来たり、術を使えるようになるだけじゃ無いのか?」
妖精の言葉は分からなくとも、僕の問いかけで、不穏な空気を感じたスイは黙って成り行きを見守る。

『そうなの、全部が繋がるの。
だから残されて寂しい想いもしなくて良いのよ』

「寂しい想いって……いや、でも寿命まで繋がるなら、確かに本当に好きじゃないと簡単に繋がれないよな」
そりゃあお願いされたからって、ほいほい人と繋がるなんて出来るわけない。
まさか命がけでなんて、思いもしなかった。

「……ウチ様、妖精は何と仰っているのですか?」
僕の声しか聞こえないスイは、それでも重要な事を話してると推測し、聞いてくる。

なので祝福を授けた妖精は、繋がった人と同じ寿命、つまり【繋がった人が亡くなると、妖精も一緒に死んでしまう】と言っていると伝えると、とても驚いた。

「知らなかったのですか?」
「知りませんでした。
祝福を受けた本人でない限り、妖精は光にしか見えませんので、見分けがつかないのです。
会話も出来ない、見分けもつかないですから、どの光がどの妖精かの個別判断がつきません。

なのでまさか人と一緒に儚くなっているとは存じませんでした」

そうなんだ。
しかしそこまでして人に尽くさなきゃいけないのか?
会話も出来ない相手に、術を使えるように力を貸して、相手が死んじゃうと自分まで死ぬとか、言い方悪いけど便利に使われてるだけじゃ無いの?
口には出せなくても、理不尽に思う。

『そんな事ないよ、使われてるんじゃなくて、好きだから力になりたいんだよ』

王がにっこり笑って僕の思考に答える。

純粋かよ!どんだけ健気なんだよ!
って突っ込んでしまっても仕方ないよね。

好きだから力になりたい、好きだから残されて寂しい思いするより一緒に……。
ただただ純粋な思いで行動する彼ら。
これが人同士なら思いを交わし合う事も(色んな意味で)有るだろうけど、会話も出来ない相手になんて、報われないのでは?

『そんな事無いの。
ありがとうって気持ちは伝わるの。
言葉も伝わるけど、素直な気持ちはもっと伝わるの』

ああ、言葉だと変に飾ったり、本心じゃない事もあり得るけど、繋がっていると純粋な気持ちがダイレクトに伝わるのか。

『うん、そうだよ。
そのありがとうは、ボク達の力になるの』

そうか。妖精達にも得るものがあるのか。
感謝の気持ちが力になるって、信仰心みたいなものが力になるのかな?

仕組みはわからないけど、一方的に搾取されてるので無いのなら少しは安心か。
安心と言うより、知ってしまった罪悪感は薄れると言うのが正直なところか。

『そんなに難しく考えなくても良いの。
ワタシ達が好きでやってるの』

これは人として、ありがとうと言っておくべきかな。
これから僕も色々と、力を貸してもらう事も出てくるだろうから、とやかく言わずに素直に感謝しておけば良いのか?

『それで良いんだよ。
とうちゃん難しく考え過ぎだよ』

妖精って純粋な生き物なんだね。
しみじみ思ってると二人は照れると顔を赤らめた。

「あの……」
スイが声をかけてくる。
あ、途中から頭の中の会話になってたか?

「今の話王に報告してもよろしいでしょうか?
妖精達に伺って頂けますか?」

そうか、今現在祝福受けてる人も多いし、これからも妖精との付き合いは続いて行くのだろうから、新たに分かった情報は共有した方が良いよな。

てな感じなんだけど、伝えても大丈夫なの?
僕の問いかけに、王も女王も大丈夫と頷く。

「あれ?ちょっと待って、繋がった人が亡くなると妖精も一緒にだと、僕が死んだら二人もだけど、百人以上の僕と繋がった妖精いっぺんに皆死んじゃうの?」

そんなに大量の妖精を道連れにしちゃうとか、まるで大量殺人(殺妖精?)じゃないの?

『大丈夫なの。
ワタシ達居なくなっても、すぐ新しい妖精生まれるの』

『ボク達は常に一定の数存在するから、一度に百人居なくなったとしても、すぐに百人生まれるから大丈夫だよ』

え?そんなに一気にすぐ生まれるもんなの?

『人みたいに生まれるんじゃないの。
発生するの』

…自然発生って事?
そうそうと頷く二人。
妖精の事は分からない事だらけだな。
そのうち詳しく聞こう……覚えていたら。

とりあえず今は一旦頭を休ませたい。
スイが淹れなおしてくれた紅茶を飲みながら、柔らかなソファーに深く埋もれた。


後日集まった王様や重臣達の前で妖精達に聞いた話を披露した。

これって通訳の初仕事かな。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妖精族を統べる者

暇野無学
ファンタジー
目覚めた時は死の寸前であり、二人の意識が混ざり合う。母親の死後村を捨てて森に入るが、そこで出会ったのが小さな友人達。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

嫌われ者の皇族姫

shishamo346
ファンタジー
両親に似ていないから、と母親からも、兄たち姉たちから嫌われたシーアは、歳の近い皇族の子どもたちにいじめられ、使用人からも蔑まれ、と酷い扱いをうけていました。それも、叔父である皇帝シオンによって、環境は整えられ、最低限の皇族並の扱いをされるようになったが、まだ、皇族の儀式を通過していないシーアは、使用人の子どもと取り換えられたのでは、と影で悪く言われていた。 家族からも、同じ皇族からも蔑まされたシーアは、皇族の儀式を受けた時、その運命は動き出すこととなります。 なろう、では、皇族姫という話の一つとして更新しています。設定が、なろうで出たものが多いので、初読みではわかりにくいところがあります。

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

処理中です...