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第一章 異世界だねぇ

歴史の時間です

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昼食後、スイにこの国の歴史を教えてもらった。


*****


この国の歴史は、およそ千年程だ。

元々中央大陸と呼ばれているこの大陸は、中央に山脈があり、山脈の北側は、人族しか住んでいない。
南側は人族は少なく、獣人や魔物が多く住んでいた。

北は土壌が豊かで気候も安定しているけれど、南に行けば行く程気温が高く、乾燥した荒地が多くなり、実りも少ない。
豊かな人間は満ちて広がり、新たな土地を求め南下する。

そして約千年前、新天地を求めた人々が山脈を越え、この地に国を作ったのが始まりだ。

国は繁栄し、人が溢れ、溢れた人は新たな地を求め、国を興しながら南下する。

しかし南は元々魔物の領域。
勿論元々住んで居た魔物は反発する。

初めは小競り合いだった。
組織だった戦い方をする人間に対し、魔物は個々で防戦し、追いやられて行く。

やがて人間は、沢山の国を作り、大陸全てを手中にした。

しかし、散り散りになって居た魔物は、魔王が誕生した事により、統率が取れ組織だった反撃を始めた。
それが約六百年前の事。

南下した人達は、魔物との戦いで追われ、戦いの前線は徐々に北上する。

元々人間より力も強く、人には無い不思議な力、魔法を使う魔物に対抗するすべはない。

そんな時、一人の男が妖精王の祝福を受けた。
それをきっかけに、数多の人々が、妖精からの祝福を受ける事となる。

それでも…妖精の祝福で繋がることにより、術を使えても、長く平和で暮らしていた人間は、まともに対抗出来なかった。

戦いは激しくなる一方で、周囲の沢山の国が滅び、この国も滅亡の危機に陥った。
当時の王族は、我先にと、国を見捨てて逃げ去って行く。

その時立ち上がったのが、妖精王の祝福を受けた男、のちにこの国の【初代王】と呼ばれるその男だ。
その男に当時の妖精王から一つの秘術がもたらされた。


【英雄召喚】


その秘術を、どうして妖精王が知ってたかは分からない。
ただその秘術は妖精王が、自分と繋がっていたその男を死なさない為、好きな人間を守る為に伝えられた。
『その時』に『必要な』人間を『別の世界から喚び出す』術だ。

そして……この地に初めて、異世界からの英雄が姿を現した。

それが今から五百年前の事だ………


*****


「と言う風に伝えられて居ます」
「へぇ、本当にお伽話の様な話ですね。
元々は一つの国で、領地を広げるのに幾つかの国に分かれたけど、滅亡して、結局残ったのが元々のこの国で、当時の王族は逃げちゃって、その尻拭いをしたのが、今の国の初代の王様、って事で合ってます?」
「言い方はちょっとですが、合っています。それに当時の国は、まだいくつかは残っていますよ」

魔物の領地だった南方は、ほぼ滅ぼされたけど、ここより北方の国はほぼ影響は無かったそうだ。
この国が前線になってたんだって。

でも、500年の間にクーデターで滅んだり、自然災害で滅んだり、なんだかんだで合併吸収したりで、【国】として残っているのは少ないんだって。


「召喚されたその英雄の子孫で、後継者が黒髪で、それ以外は色々な髪の色をしている、って事ですね」
金や茶以外にも、緑とか紫とか、漫画の中に出て来そうな色の髪が、この世界では【普通】なんだそうで。
目がチカチカしそうだね。

「そうですね。
それぞれの家系の詳細は、それぞれの家に系譜と一緒に保管されて居ますが、この歴史書を作成したのはマキ家です」

「マキって書庫番のニトさんの家ですか?」
昨日色々説明してくれた青年を思い浮かべる。

「そうです。
元々が文章作成が得意な英雄だった様で、ニトの親のマキ・ユト・ミルは晩餐会でもお会いしたと思う文部大臣ですよ」

……居たっけ?

正直、混乱と抱っこの屈辱と、一度に複数の人を紹介されたから覚えていない、ってのは黙ってた方が良いな。
無難にそうなんですか、と濁しておき話も変えよう。

「でも妖精は凄い術を持ってたんですね」
「そうですね。
昔はいざ知らず、今は妖精の祝福の術が無ければ生活も覚束ないと思いますよ」

『そうなの、ワタシ達凄いの』

『ボク達いっぱい助けるよ?
だから仲良くしてね?』

定位置なのか左右の肩に乗った女王と王が顔にへばりついてくる。
「でも思ったより国の歴史は浅いんですね」
「祝福を受ける前は寿命も短かったと聞きますが、今となっては長ければ二百年以上生きますから、そう感じますね」

『あのね、好きな人には長生きして欲しいの。
だから祝福して一緒に生きるの』

『そして一緒に眠りにつくんだよ』

え?何だか聞き捨てならない事言ったか?






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