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第一章 異世界だねぇ

召喚の理由

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「失礼します、お邪魔してもよろしいでしょうか?」
ドアを開けて入って来たのは、姫様のルルだ。

「ルル様、今はお勉強の時間ではないのですか?」
スイが入り口へ歩み寄りながら問いかけると、
「先生が急用で、今日の勉強は中止となりました。
お兄様は乗馬の練習に行かれましたわ」

スイがコチラに視線を寄越す。
「ウチ様、ルル様をお入れしてもよろしいでしょうか?」
え?わざわざ聞かなくても…あ、一応この部屋の主人は僕になるから聞いたのか。

「どうぞお入りください」

僕が言うと、失礼しますとドレスのスカートを摘み、いかにもお姫様な挨拶をした姫さまは、スイに手を引かれ、の向かいのソファーに腰掛けた。

「何か僕に御用ですか?」
スイがお茶を淹れてくれてる間に、来室目的を聞いてみた。

「あの……お願いがございますの。
…妖精さんを一人分けてください」

「ふへ?」

言われた事の意味が分からず、思わず変な声が漏れてしまった。

「分けてと言われても……」
「それはどう言った意味なのでしょう?か?

どう答えていいのか分からずにいると、お茶のカップを置いたスイが助け舟を出してくれる。

あの……と、言いにくそうにモジモジしていた姫様…ルルは、下を向いたまま話し出した。

ルルの話によると、王様は祝福を受けていないそうだ。
王族だからと言って必ず祝福を受けるという事はなく、実際王弟のレンも祝福無しらしい。

祝福が無いと言う事は寿命も平均的な80歳前後となる。

しかし、王妃は魔物、王子と姫はハーフ、しかも王子は祝福も持っているので、いくら親の方が先に亡くなると言えども、自分達を残して、それこそあっという間に父親が居なくなるの事が、今から恐怖心を揺り起こす。

「だからお兄様と相談して、妖精に好かれる英雄様なら、妖精にお願いして、お父様にも祝福をくれるように頼んでくれるのではないかと思って……」
「それで召喚をされたのですか?」

成る程、父親の寿命を延ばす為に、今使う必要のない英雄召喚をしたのか。
だから悪戯じゃ無いって王子も言ってたんだな。

「そうですか。
召喚する時に妖精に好かれる方を思い浮かべたのですね。
そう考えると、ウチ様に沢山の祝福や妖精王達の祝福も有るのは、姫様達が妖精に好かれる方を望まれたからこそなのでしょうね」

成る程、動物に好かれる体質がこの召喚に引っかかったのか。

「それでウチ様、妖精にお願いして頂けないでしょうか?」

ルルが僕を真っ直ぐに見ながら言うんだけど、まずお願いするにしても今周りに居ないんだけど。

「妖精って呼べば来るの?」
スイも祝福持ちだそうだけど、スイの周りにも今居ないよね。

「はい、そうですね。
声に出さなくても繋がっていますから、願えば来ますよ」
そう言うものなのか。
言われるままに頭の中で女王を呼んでみる。

『妖精の女王様~、気づいたら来て下さい~』

これで良いの?と思ってると

『なになに~、呼んだよね?今ワタシの事呼んだよね?』

窓をすり抜け飛んで来た女王が、顔に張り付く……痛くは無いけど何だかなぁ。

「ちょっとお願いって言うか、聞きたい事が有るんだけど」
女王に、今の王様に祝福が無い事、祝福が無いから寿命が短く、姫達が悲しがってる事を伝えて、祝福を与えられないか聞いてみる。

『う~ん、とうちゃんのお願いなら聞いてあげたいけど、ムリ』

キッパリ断られた。

「無理なの?」

『ムリなの。
祝福って人と繋がる事なの。
好きな人としか繋がりたく無いの。
生まれた時に祝福受けてないのは、繋がりたいって妖精が居ないって事なの。
だから途中からってお願いされてもムリなの』

「でも王様って、まだちょっとしか話してないけど、穏やかで良い人だと思うよ」

『良い人だから好きになるんじゃ無いの。
好きに理由は要らないの。
今の王様、皆んなキライじゃ無いけど、繋がっても良いって思うほどは好きじゃ無いの』

ああ、まぁそうだよな。
良い人だから好きになるって訳じゃ無いし、繋がるって事は深い関係になる?わけなんだから、好きな人じゃ無いと繋がりたく無いよなぁ。
好きは理屈じゃ無いんだから。

しかしこれを僕が伝えるのか?
ルルを見てみると、凄く真剣な表情で、祈るように両手を顔の前で組んでこちらを見ている。
言い辛いよなぁ……。

「………………ごめん、ダメみたい……」

このまま黙ってる訳にもいかないので正直に伝える。
いくら言葉を飾ってもダメな物はダメなんだから。

「…………………………」

見る見るうちにルルの瞳に涙が溜まって行く。
ヤバイ、子供を泣かせてしてしまった、どうしょうとオロオロしていると、ルルはハンカチで涙を拭きこちらを見て言葉を発する。

「そうですか、仕方ありませんわ。
ダメで元々とお兄様も仰ってましたし。
少しでも可能性が有れば、と思いましたけど、やるだけやってダメなのなら仕方ありませんわ……」

あー、僕のせいでは無いけど、罪悪感が半端無い。

「後でお兄様にも伝えておきますわ」
「……ごめんね」

『ごめんなさいね』

僕と同時に女王も謝る。
聞こえないと分かっていても、その気持ちが良いなと思う。
どうしょうも無い事で、誰が悪いって事でも無いんだもんな。
ただ縁が無かっただけの事…だけっていい方悪いかな?

『そんな事無いの。
言い辛い事言わせてごめんね』

あ、筒抜けだったの忘れてた。
やっぱりそう考えると、好きじゃ無いと繋がれないよね。

「ウチ様、暫く席を外してもよろしいでしょうか、
ルル様をお部屋まで送って来ますので」
「勿論です。
よろしくお願いします」
赤い目をしたルルとスイが部屋を出て行く。

あー、本当に後味悪いなぁ。
子供は泣かせたく無いよね。

『とうちゃんごめんね』

「いや、責めてないから」
何となく二人で落ち込んでいると部屋の隅からシクシクと泣き声が……心霊現象?

のわけはなく、カーテンの後ろから、泣きながらこちらを見てるのは妖精王。

『女王だけ呼ぶなんてずるい~、ボクの事も呼んでよ~』

子供に引き続き、ちっちゃい生き物まで泣かせてしまった。

でもこちらは罪悪感無いな。




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