14 / 161
第一章 異世界だねぇ
召喚の理由
しおりを挟む「失礼します、お邪魔してもよろしいでしょうか?」
ドアを開けて入って来たのは、姫様のルルだ。
「ルル様、今はお勉強の時間ではないのですか?」
スイが入り口へ歩み寄りながら問いかけると、
「先生が急用で、今日の勉強は中止となりました。
お兄様は乗馬の練習に行かれましたわ」
スイがコチラに視線を寄越す。
「ウチ様、ルル様をお入れしてもよろしいでしょうか?」
え?わざわざ聞かなくても…あ、一応この部屋の主人は僕になるから聞いたのか。
「どうぞお入りください」
僕が言うと、失礼しますとドレスのスカートを摘み、いかにもお姫様な挨拶をした姫さまは、スイに手を引かれ、の向かいのソファーに腰掛けた。
「何か僕に御用ですか?」
スイがお茶を淹れてくれてる間に、来室目的を聞いてみた。
「あの……お願いがございますの。
…妖精さんを一人分けてください」
「ふへ?」
言われた事の意味が分からず、思わず変な声が漏れてしまった。
「分けてと言われても……」
「それはどう言った意味なのでしょう?か?
どう答えていいのか分からずにいると、お茶のカップを置いたスイが助け舟を出してくれる。
あの……と、言いにくそうにモジモジしていた姫様…ルルは、下を向いたまま話し出した。
ルルの話によると、王様は祝福を受けていないそうだ。
王族だからと言って必ず祝福を受けるという事はなく、実際王弟のレンも祝福無しらしい。
祝福が無いと言う事は寿命も平均的な80歳前後となる。
しかし、王妃は魔物、王子と姫はハーフ、しかも王子は祝福も持っているので、いくら親の方が先に亡くなると言えども、自分達を残して、それこそあっという間に父親が居なくなるの事が、今から恐怖心を揺り起こす。
「だからお兄様と相談して、妖精に好かれる英雄様なら、妖精にお願いして、お父様にも祝福をくれるように頼んでくれるのではないかと思って……」
「それで召喚をされたのですか?」
成る程、父親の寿命を延ばす為に、今使う必要のない英雄召喚をしたのか。
だから悪戯じゃ無いって王子も言ってたんだな。
「そうですか。
召喚する時に妖精に好かれる方を思い浮かべたのですね。
そう考えると、ウチ様に沢山の祝福や妖精王達の祝福も有るのは、姫様達が妖精に好かれる方を望まれたからこそなのでしょうね」
成る程、動物に好かれる体質がこの召喚に引っかかったのか。
「それでウチ様、妖精にお願いして頂けないでしょうか?」
ルルが僕を真っ直ぐに見ながら言うんだけど、まずお願いするにしても今周りに居ないんだけど。
「妖精って呼べば来るの?」
スイも祝福持ちだそうだけど、スイの周りにも今居ないよね。
「はい、そうですね。
声に出さなくても繋がっていますから、願えば来ますよ」
そう言うものなのか。
言われるままに頭の中で女王を呼んでみる。
『妖精の女王様~、気づいたら来て下さい~』
これで良いの?と思ってると
『なになに~、呼んだよね?今ワタシの事呼んだよね?』
窓をすり抜け飛んで来た女王が、顔に張り付く……痛くは無いけど何だかなぁ。
「ちょっとお願いって言うか、聞きたい事が有るんだけど」
女王に、今の王様に祝福が無い事、祝福が無いから寿命が短く、姫達が悲しがってる事を伝えて、祝福を与えられないか聞いてみる。
『う~ん、とうちゃんのお願いなら聞いてあげたいけど、ムリ』
キッパリ断られた。
「無理なの?」
『ムリなの。
祝福って人と繋がる事なの。
好きな人としか繋がりたく無いの。
生まれた時に祝福受けてないのは、繋がりたいって妖精が居ないって事なの。
だから途中からってお願いされてもムリなの』
「でも王様って、まだちょっとしか話してないけど、穏やかで良い人だと思うよ」
『良い人だから好きになるんじゃ無いの。
好きに理由は要らないの。
今の王様、皆んなキライじゃ無いけど、繋がっても良いって思うほどは好きじゃ無いの』
ああ、まぁそうだよな。
良い人だから好きになるって訳じゃ無いし、繋がるって事は深い関係になる?わけなんだから、好きな人じゃ無いと繋がりたく無いよなぁ。
好きは理屈じゃ無いんだから。
しかしこれを僕が伝えるのか?
ルルを見てみると、凄く真剣な表情で、祈るように両手を顔の前で組んでこちらを見ている。
言い辛いよなぁ……。
「………………ごめん、ダメみたい……」
このまま黙ってる訳にもいかないので正直に伝える。
いくら言葉を飾ってもダメな物はダメなんだから。
「…………………………」
見る見るうちにルルの瞳に涙が溜まって行く。
ヤバイ、子供を泣かせてしてしまった、どうしょうとオロオロしていると、ルルはハンカチで涙を拭きこちらを見て言葉を発する。
「そうですか、仕方ありませんわ。
ダメで元々とお兄様も仰ってましたし。
少しでも可能性が有れば、と思いましたけど、やるだけやってダメなのなら仕方ありませんわ……」
あー、僕のせいでは無いけど、罪悪感が半端無い。
「後でお兄様にも伝えておきますわ」
「……ごめんね」
『ごめんなさいね』
僕と同時に女王も謝る。
聞こえないと分かっていても、その気持ちが良いなと思う。
どうしょうも無い事で、誰が悪いって事でも無いんだもんな。
ただ縁が無かっただけの事…だけっていい方悪いかな?
『そんな事無いの。
言い辛い事言わせてごめんね』
あ、筒抜けだったの忘れてた。
やっぱりそう考えると、好きじゃ無いと繋がれないよね。
「ウチ様、暫く席を外してもよろしいでしょうか、
ルル様をお部屋まで送って来ますので」
「勿論です。
よろしくお願いします」
赤い目をしたルルとスイが部屋を出て行く。
あー、本当に後味悪いなぁ。
子供は泣かせたく無いよね。
『とうちゃんごめんね』
「いや、責めてないから」
何となく二人で落ち込んでいると部屋の隅からシクシクと泣き声が……心霊現象?
のわけはなく、カーテンの後ろから、泣きながらこちらを見てるのは妖精王。
『女王だけ呼ぶなんてずるい~、ボクの事も呼んでよ~』
子供に引き続き、ちっちゃい生き物まで泣かせてしまった。
でもこちらは罪悪感無いな。
1
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説


【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

嫌われ者の皇族姫
shishamo346
ファンタジー
両親に似ていないから、と母親からも、兄たち姉たちから嫌われたシーアは、歳の近い皇族の子どもたちにいじめられ、使用人からも蔑まれ、と酷い扱いをうけていました。それも、叔父である皇帝シオンによって、環境は整えられ、最低限の皇族並の扱いをされるようになったが、まだ、皇族の儀式を通過していないシーアは、使用人の子どもと取り換えられたのでは、と影で悪く言われていた。
家族からも、同じ皇族からも蔑まされたシーアは、皇族の儀式を受けた時、その運命は動き出すこととなります。
なろう、では、皇族姫という話の一つとして更新しています。設定が、なろうで出たものが多いので、初読みではわかりにくいところがあります。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
3/25発売!書籍化【完結】私だけが知らない
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
一二三書房/ブレイド文庫様より、2025/03/25発売!
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2025/03/25……書籍1巻発売日
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる