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第一章 異世界だねぇ
お昼を食べてちょっと休憩
しおりを挟む会議室乱入後、なんだかんだで僕は妖精との交渉人?みたいな仕事を請け負う事となった。
仕事と言っても難しい事ではなく、何かあった時の通訳みたいなものだそうだ。
まあこの世界で生活していくためには、何かしらの仕事をして、収入を得なければならないので助かる。
特に幼児の姿になっているから、力仕事など体を使う仕事は無理だろうし、事務仕事も、知らない世界の事務なんて無理だろ。
所詮僕の特技は、動物に好かれる事だけなんだし……ふっ………。
*****
「おおおお」
目の前に広がるのは、テーブルの上に所狭しと並べられた沢山の皿。
皿の上には煮物、焼き物、スープにパンにご飯、和洋折衷だ。
肉じゃがの横にローストビーフ、焼き魚の横には、ホワイトシチューと並んで多分ほうれん草のおひたし?
他にもまだまだ山盛りだ。
会議室で王様に仕事を頼まれている途中、騒ついている室内に響き渡る程の音がしたんだよ、僕のお腹から……。
仕方ないよね、昨日の晩御飯も食べずに呑んだだけで、今日もまだ何も口にしてないんだがら。
そこでまだ昼前なのだが、休憩に突入する事となった。
簡易歓迎会として、その場に居た皆を引き連れてホールに。
大量の食事を用意してくれたのだけど、あり合わせのものを集めました感が満載のバイキング方式だ。
見知った食べ物も多いのは過去の英雄さん達が伝えたんだろう。
でも見慣れた物の中に見知らぬ物もチラホラ。
まぁ、急の出来事で、準備なんてする暇なかったよね。
ごめんね、厨房のスタッフ達。
昼食までお腹がもたなかったんだ。
夜には歓迎会を開いてくれるそうだ。
取り敢えず、お腹が空いてるから、まずは見知った物からいただきまーす。
しかし屈辱的なのは、この幼児体形。
テーブルの上が見えないどころか、テーブルより低い……。
椅子を引きずって来てよじ登り、テーブルの上を見ていたら、
「危ないですよ」
とマキに抱っこされてしまった。
降ろせよとジタバタしていると、他の人も寄って来て
「あっちのテーブルも見てみるかい?」
「ほら、こっちのテーブルのお肉も美味しそうだよ」
と、次から次へたらい回しに抱っこされてしまった。
リレーのバトンかよ!
途中で諦めて『コイツらは食事補助アンドロイドだ』と思うようにして、抱っこ状態でテーブルを渡り歩いた。
先ずはお腹を満たす事を優先しよう。
「いやー、可愛いですね」
「彼は34歳らしいですけど、実年齢なんて、この国では関係無いですからね」
「そうだな、見た目が第一だ」
謁見の間に案内してくれた金髪と、扉の中に居た黒髪、そしてマキが話しているのが聞こえて来た。
因みに金髪にはケモミミ、尻尾と合わせてみると犬系?
案内してる時尻尾あったっけ?
服に隠れてたのかな?
今はブンブン左右に揺れている。
そして黒髪の方は英雄家系で、多分さっきマキが言ってた仕舞える羽を持つハーフかな?
因みに今僕を抱っこしてデザートのテーブルに居るのは、何とも迫力の有る青年。
笑った顔は子供みたいだけど、醸し出す雰囲気が大物だ。
尻尾は見えないけど、黒髪で頭にくるっと巻いた羊みたいな角が付いている。
魔王って感じの人だ。
近くで見るからわかるけど、この人も瞳の中の金が多い。
しかし何となく気になるのが、抱っこしたがる人達とは別に、全く近寄って来ない人達も居る。
抱っこされた僕が右へ行くと左へ、中央へ行くと左右へと逃げて?いく。
何だろう、あの一団は?
そんなこんなを考えていたんだけど、お腹がいっぱいになった僕は、幼児の身体の影響か、耐えきらぬ睡魔が襲って来てしまお、巻き角の人の腕の中で眠ってしまった……不覚!
*****
人の気配でふと目が覚める。
どうやらゲストルームみたいな所で寝かされていた。
天蓋付きのデッカいベットで……。
起こしに来たのは執事らしき年配の男性と、三人のいかにもなメイドさんだった。
執事さんは白髪混じりの黒髪だった。
黒髪って英雄家系なのに執事なんだ、など寝起きの頭で考えていたら、ベットから抱え降ろされ、いきなり服を剥ぎ取られた。
「え?な、何?」
びっくりしてる間に、ポールハンガーにかけられた燕尾服を次から次へと着せては脱がされまた着せられ。
訳がわからん。
「一体何なんですか?」
着せ替え人形となりつつも黒髪の執事に聞いてみる。
「今夜の晩餐会の衣装ですが、作るのには間に合いませんので、応急処置と致しまして、殿下の衣装をお借りする事となりました」
「晩餐……あ、夜のパーティーですね。
服を借りるのは分かりましたけど、これ全部同じなんじゃないですか?」
さっき着たのも今着せられてるのも同じサイズだよな?
「いえ、先程のは殿下の四歳半の時の物、その前のが四歳四ヵ月の物、こちらは四歳九ヵ月の物です」
「いやそれ変わらんだろ!!」
いくら子供の成長が早いと言っても二、三ヶ月でそうそう変わらんだろ。
「何を仰いますか。衣装は身体に合ってこそ。
サイズの合わない衣装などみっともなく、そんな姿で殿下に恥をかかせるわけにはまいりませんでしょう。
今回も少しでもお身体に合ったものをとの殿下のご厚意です。
なれば、一番サイズの合うものを選ぶのが私達の仕事です」
何だろう、何だか逆らえないオーラみたいな物を感じて、その後は黙って為すがまま着せ替え人形になった。
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