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第一章 異世界だねぇ
現実逃避しても逃げられないみたいだ
しおりを挟む『センパーイ!今異世界がアツイっす!』
『山田さん、休み前までは刀がヤバイ、とか言ってなかったかい?』
『もー、山田言わないで下さいって!
エミリって呼んで下さいって何度も言ってるっしょ』
二年前に入った新人は、隠す事ないオープンオタとか言って、よくわからない話をいつも暑く語っていた。
『いやー、ケモは主食として、メガネ、白衣、下克上、年の差、色々渡り歩いたけど、今は異世界激アツっす!
ケモなら尚ご馳走っすー!』
*****
「それでこちらの方は言葉は通じるのか?」
「……はい」
「…そうか………」
あ、現実逃避して居る場合じゃ無かった。
何だろう、さっきから言葉が通じるのがまるで悪い事の様な響きに聞こえるんだけど。
王様は暫く渋い顔をしていたけど、諦めた様に小さく息を吐きこちらに視線を向けて来た。
「初めまして異世界の方」
あー、やっぱり異世界とかなんだ。
「私はこの国を取りまとめて居る、タシ・リア・ジンと言う。
急な事で驚かれただろうが、貴方は封印されし古の術『英雄召喚』でこの国、ラグノルに招かれたのです」
雲行きが怪しいなぁ、封印とか英雄とか…。
オタクな後輩が居るからと言ってそう言うワードに詳しいかと言えば、全くちんぷんかんぷんだ。
「ここは地球では無いんですね」
「ああそうだな。ここは中央大陸の南に有る国で、そなたの居たチキユウでもニッポンでもない」
何で日本人って分かるんだ?と言うか何故日本を知っているんだ?
聞きたい事は山ほどあるが、先ずは話を進めてもらおう。
「……それで英雄とか言って召喚されたと言うのなら、僕は何かと戦ったりしなければならないのですか?
こう言うパターンだとドラゴンとか……」
後輩が仕事中暑く語っていた、(無駄)話の断片を思い出しながら尋ねてみる。
「いや、ドラゴン族とは友好関係を結んで久しい」
「魔物を倒すとか?」
「魔物は今や良き隣人だ」
……他に何かパターンが有るのだろうか?…………わからん。
「それでは何故、私はここに居るのでしょう」
ズバリと聞いてみると王座は「カイ、ルル、来なさい」とあの二人の子供を呼んだ。
ビクーッと跳ねた二人はオロオロと顔を見合わせて、手を取り合い恐る恐る王座に近づいて行く。
「二人は我が子なのだが………実はこの二人が悪戯をしてな……」
「…悪戯……?」
「父上、悪戯では有りません、文献の真実性を確かめてみたのです!」
男の子、王子が声を上げるけど、王様はチラリと向けた視線で黙らせた。
「今現在、英雄にお出ましいただく必要が無いのだ」
「必要無い?」
「すまん、子供の悪戯に巻き込んでしまい、本当に申し訳ない事をした」
必要が無い?
子供の悪戯?
何だそれ。
「……まあ過ぎてしまった事は仕方ないですが、勿論元に戻して貰えるのですよね」
「……………………」
「…………………………………………」
しばしの沈黙の後、王様が訪ねてきたのが、
「……………….……言葉がわかるのだな?」
だった。
「さっきからなんですか。
わかるから会話してるんじゃあないですか」
「…………わかるのはマズイのだ」
何なんだよ一体?
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