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第一章 異世界だねぇ
突っ込んで良いのかまだなのか
しおりを挟む「………ぶ……か…………だい……ぶです……」
聞き覚えのない声に起こされる。
「大丈夫ですか?気が付きましたか?
ご自分が誰だかわかりますか?
……言葉が通じますか?」
目を開けて見ると、見知らぬ青年が覗き込んでいた。
そうだ、気を失ったんだった。
随分長い間意識が無かったのか、気を失う前と違い随分スッキリしている。
頭痛も吐き気も一切ない。
まだ横になったままだったので、身体を起こす。
「動かれて大丈夫ですか?
言葉が通じますか?」
また言葉が通じるかと聞いてきたけど、確かに僕に声をかけているのは二十代後半くらいの金髪碧眼の顔立ちの整った青年だ。
やっぱりどこかに入り込んでしまったパターンか?
「大丈夫です。ご迷惑をお掛けしました。
すみません、気がついたらこちらに居た様なのですが、ここは一体何処なのでしょう?」
はっきり受け答えする僕に安心したのか、青年はほっと息を吐き、その後に少し眉間にしわを寄せ、複雑そうな顔をした。
しかし何だろう?何か違和感が有る様な?
「その辺りについても王が説明いたします。
体調が無事なら謁見の間に案内させて頂きたいのですが、大丈夫ですか?」
「あ、今起きます」
試しにゆっくり動いてみたけど、体に不快感はない。
「大丈夫ですか?
何でしたら抱っこして行きましょうか?」
……何言ってんだこいつ…………。
平気です、と言いながら急いで立ち上がったけど……
何だこいつ、巨人か?
僕の身長は175センチ有るのに、立ち上がっても青年の腰のあたりしか届かない。
横になって居たからかと思ったけど、立ち上がってみても、部屋は途轍もなく広く、家具も大きい。
何だ?もしかして死んで巨人の世界にでも迷い込んだか?
「あの!…………」
声を出してみて先程の違和感に気づいた。
……いや、気付きたくないから気づかなかった事にしよう。
兎に角説明が先だ。
王とか謁見の間とか、すぐにでも突っ込みたいけど、今は現状把握の為、説明してもらう方が先だ。
歩き出した青年に付いて行く……これってやっぱり…………いや、気のせい、気のせい………………気のせいであってくれ……。
*****
前を歩く青年の姿を観察して見る。
全身白づくめの服の形は短ランの様で、後ろは長くなっていて、燕尾服の様に割れて?いる。
こんな形の服を何と呼ぶのか、僕は知らない。
腰に携えている剣も、見なかった事にして、辺りの様子を見てみる。
随分広い廊下は右側が大きな窓、何て言えば良いのか、座薬の様な形…絶対そんな言い方しないよな。
まぁいい、兎に角窓、左側は柱と柱の間に絵画が飾って有る。
天井にも絵が描かれているんだけど……赤富士?
いや、まさか。
すれ違う人は様々な髪の色をしている。
緑や青も居るから染めて居るのだろう。
そのすれ違う人の一部に………いや、これも気のせい、目の錯覚、絶対そう。
きっとコスプレ会場に紛れ込んだんだ。
ああ、もう早く説明してくれ、夢なら覚めてくれ。
*****
廊下を幾度も曲がってたどり着いた、一際大きな扉の前には、屈強と言う言葉が合う兵士が、槍を持ち扉の両側に立っている。
「失礼します、エル・スウ・リイです。
お連れいたしました」
扉に向かい青年が声をかけると、暫しの間を置き、重たい音を響かせ扉が開いた。
扉が開くと青年が頭を下げたので、自分も一応下げておく。
「王がお待ちだ。前へ」
扉の内側に居たのは、迎えに来た青年と同じ服装で、僕と同じ年くらいの黒髪の青年だ。
迎えに来た青年が中へ進むので、その後を付いて入る。
前を向くと…ああ、王座だねって言う雰囲気の、一段高くなった場所に据えられて居る豪奢な椅子に座った、僕より少し年下、三十そこそこのの男性が正面に。
王様と言う言葉のイメージからすると若いな。
その右側には少しツリ目のとても美しい女性、きっと王妃なんだろうけど、ここでもあの見ぬふりをしなければならない物が……。
その玉座まで複雑な模様の絨毯が敷かれて居て、その左右にズラリと人が並んで居る……人?
その中には最初に気づいた時に居た二人の子供も居る。
玉座から三メートルほど離れた場所で青年が跪くので、自分もそれに倣う。
「王、英雄様をお連れしました」
「ご苦労である」
鷹揚に答える王様。
そろそろ突っ込んで良いよね?
とりあえず英雄って何じゃい!
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